『武門源氏の血脈』を、元木先生に御紹介いただきました。
No.9533
> 山田先生 ローマからの御返信、ありがとうございました。
それにしても、ローマで「くわばら、くわばら」などという呪文を唱えたのは、山田先生が初めてなのではないでしょうか?
角田先生は・・・?(長い滞在中に、そんなことも一度くらいは、あったかも知れませんね)
もう明後日は来年度ですから、山田先生もすでに帰国の機中でしょうか?
・・・などと、暢気に書き込んでいるこの私は、はたして原稿の締切を守れるのでありましょうか?
昨日は今年度最後の『吾妻鏡』講読会。私はこのところ、余計な話をし過ぎるので、なるべく口を挟まないようにしているのですが、やっぱりいけません。老耄極まれり。
『紫苑』第10号の仕事は終了。山本さんも仕事納め。お疲れ様でした。
ところで、元木先生が『京都民報』に御執筆下さった、拙著の紹介記事ですが、私が申し上げるよりも、この本の内容を的確に要約されており、その上、勿体ないほどの高い評価を下さっています。これはぜひ、京都の方以外にも読んで頂きたい。
これを自分で御紹介するのも、どうかと思いましたが、これでお一人でも拙著を手にとって下さる方が増えるのなら、厚顔無恥の謗りも甘受のし甲斐があるという次第で、ここに転載させて頂くことにいたしました。
*************************************************************************
『武門源氏の血脈 為義から義経まで』(中央公論新社)
著・野口 実
斬新な分析で武士の実像解明
東国武士団研究の第一人者である野口実氏が、源為義、義朝、頼朝、義経という河内源氏の武将四人を取上げた書物を刊行された。概ね既発表の原稿であるが、大きく改稿されたものもあり、最新の研究成果に基づいて河内源氏歴代の姿が描かれている。
第一章では、まず義家が神格化された背景が紹介され、ついでその後継者為義が多角的に分析される。河内源氏の衰退期とされ、失策ばかりが目立つ為義であるが、彼が河内源氏復興のために様々な方策を講じたことが指摘される。とくに権門の家政機関を媒介としながら、水上・陸上交通の掌握を目指したとする点は注目に値する。薩摩国の持躰松遺跡の発掘成果等を援用しながら、河内源氏と貿易をはじめとする流通との関係を綿密に分析した点は本書の大きな特色である。
第二章では、坂東の調停者として活躍した義朝が描かれる。河内源氏が調停者として期待された背景、頼朝の前提となった義朝の地位の分析などは、東国と中央との関係を丹念に分析してきた著者ならではのすぐれた研究成果である。また義朝が拠点とした鎌倉についても、頼義以来の伝統とともに、地理的な側面からも詳細な分析が加えられている。
第三章では、鎌倉幕府を樹立した頼朝が取上げられる。ここで最も注目されるのは、明確な根拠もなく頼朝を「王」とする近年の研究に対し、頼朝自身は王朝権威に依存する面が強く、頼朝を王とするのは後世の歴史認識によるものであると厳しく批判した点である。また、鎌倉時代における京の構造と六波羅の位置に関する分析も興味深い。
第四章では、悲劇の英雄義経の人脈が分析される。系図・伝承を駆使しながら、義経に関係する人々を浮き彫りにした点は、他の追随を許さない、著者の独壇場といえる。
以上のように本書は河内源氏歴代について、斬新な視点から分析を加え、河内源氏の、そして武士そのものの実像を鮮やかに解明した、まさに「目から鱗」の書物である。
(元木泰雄・京都大学大学院教授)
(『京都民報』2012年3月25日付より、一部の改行を変更して転載)
それにしても、ローマで「くわばら、くわばら」などという呪文を唱えたのは、山田先生が初めてなのではないでしょうか?
角田先生は・・・?(長い滞在中に、そんなことも一度くらいは、あったかも知れませんね)
もう明後日は来年度ですから、山田先生もすでに帰国の機中でしょうか?
・・・などと、暢気に書き込んでいるこの私は、はたして原稿の締切を守れるのでありましょうか?
昨日は今年度最後の『吾妻鏡』講読会。私はこのところ、余計な話をし過ぎるので、なるべく口を挟まないようにしているのですが、やっぱりいけません。老耄極まれり。
『紫苑』第10号の仕事は終了。山本さんも仕事納め。お疲れ様でした。
ところで、元木先生が『京都民報』に御執筆下さった、拙著の紹介記事ですが、私が申し上げるよりも、この本の内容を的確に要約されており、その上、勿体ないほどの高い評価を下さっています。これはぜひ、京都の方以外にも読んで頂きたい。
これを自分で御紹介するのも、どうかと思いましたが、これでお一人でも拙著を手にとって下さる方が増えるのなら、厚顔無恥の謗りも甘受のし甲斐があるという次第で、ここに転載させて頂くことにいたしました。
*************************************************************************
『武門源氏の血脈 為義から義経まで』(中央公論新社)
著・野口 実
斬新な分析で武士の実像解明
東国武士団研究の第一人者である野口実氏が、源為義、義朝、頼朝、義経という河内源氏の武将四人を取上げた書物を刊行された。概ね既発表の原稿であるが、大きく改稿されたものもあり、最新の研究成果に基づいて河内源氏歴代の姿が描かれている。
第一章では、まず義家が神格化された背景が紹介され、ついでその後継者為義が多角的に分析される。河内源氏の衰退期とされ、失策ばかりが目立つ為義であるが、彼が河内源氏復興のために様々な方策を講じたことが指摘される。とくに権門の家政機関を媒介としながら、水上・陸上交通の掌握を目指したとする点は注目に値する。薩摩国の持躰松遺跡の発掘成果等を援用しながら、河内源氏と貿易をはじめとする流通との関係を綿密に分析した点は本書の大きな特色である。
第二章では、坂東の調停者として活躍した義朝が描かれる。河内源氏が調停者として期待された背景、頼朝の前提となった義朝の地位の分析などは、東国と中央との関係を丹念に分析してきた著者ならではのすぐれた研究成果である。また義朝が拠点とした鎌倉についても、頼義以来の伝統とともに、地理的な側面からも詳細な分析が加えられている。
第三章では、鎌倉幕府を樹立した頼朝が取上げられる。ここで最も注目されるのは、明確な根拠もなく頼朝を「王」とする近年の研究に対し、頼朝自身は王朝権威に依存する面が強く、頼朝を王とするのは後世の歴史認識によるものであると厳しく批判した点である。また、鎌倉時代における京の構造と六波羅の位置に関する分析も興味深い。
第四章では、悲劇の英雄義経の人脈が分析される。系図・伝承を駆使しながら、義経に関係する人々を浮き彫りにした点は、他の追随を許さない、著者の独壇場といえる。
以上のように本書は河内源氏歴代について、斬新な視点から分析を加え、河内源氏の、そして武士そのものの実像を鮮やかに解明した、まさに「目から鱗」の書物である。
(元木泰雄・京都大学大学院教授)
(『京都民報』2012年3月25日付より、一部の改行を変更して転載)