「腹ふくるる心地する」日々

No.9671

 まず、明日の「基礎演習Ⅰ」ですが、発表者は筒居さんで、テーマは「日本のオタク文化」。はやいもので、今年度の「基礎演習Ⅰ」も、これでおしまいになります。
 レポートは来週まで。

 ゼミ史料講読会はいつも通り。『玉葉』は、以仁王・源頼政追討の勲功賞の話です。

 おそれていた健康診断の結果が届きました。メタボではないが腹位とLDLコレステロールの数値が多すぎ。食を減らし、運動量を増やすのみ。「言うは易く行うは難し」。

 ☆ 滋賀県立安土城考古博物館の山下立先生より、同博物館『紀要』第20号と同博物館・長浜市長浜城歴史博物館編『琵琶湖の船が結ぶ絆-丸木船・丸子船から「うみのこ」まで-』を御恵送頂きました。いずれも、山下先生が一部御執筆されています。
 山下先生に、あつく御礼を申し上げます。

 なお、安土城考古博物館では9月2日(日)までの予定で、企画展「湖の船が結ぶ絆-天智天皇・信長の大船 そして うみのこ-」を開催中です。

 今日は建春門院について。

No.9670

 まず、絶版になっていた元木泰雄先生の『保元・平治の乱を読みなおす』(NHKブックス)が、『保元・平治の乱 平清盛勝利への道』と改題して角川ソフィア文庫から刊行されることをお知らせ致します。正式な出版期日は25日のようですが、そろそろ店頭に現れ始める頃ではないでしょうか。

 さて、建春門院(平滋子)ですが、藤原定家の姉をして「あなうつくし。世には、さは、かかる人のおはしましけるか」(『たまきはる』)と言わしめたほどの美女。
 几帳面な性格で、思いやり深く、よく女房達の面倒を見、つねに威儀を正して端然とし、その横顔は「この世にまたさるたぐひをこそ見ね」という程であったと言います。
 そして、「女はただ心からともかくもなるべきものなり。親の思ひおきて、人のもてなすにもよらじ。わが心を慎みて身を思い腐たさねば、おのづから身に過ぐる幸もあるものぞ」というのが、彼女の持論だったそうです(下記、角田論文による)。

 建春門院についての専論としては、⇒
  a.角田文衞「建春門院」(古代学協会編『後白河院』吉川弘文館,1993)
 後白河院との関係、家政の運営、政治的位置については、すでに>>No.9664で紹介した⇒
  b.栗山圭子「二人の国母」(『文学』3巻4号,2002)
がありますが、興味深く、謎に満ちているのが、彼女の陵墓が何処に営まれたかという問題。⇒
  c.野口実・山田邦和「法住寺殿の城郭機能と域内の陵墓について」(京都女子大学宗教・文化研究所『研究紀要』第16号,2003)
  d.野口実・山田邦和「六波羅の軍事的評価と法住寺殿を含めた空間復元」(京都女子大学宗教・文化研究所『研究紀要』第17号,2004)
   e.山田邦和「消えた建春門院陵を探る」(同)
  f.山田邦和「後白河天皇陵と法住寺殿(髙橋昌明編『院政期の内裏・大内裏と院御所』文理閣,2006)」
 山田先生の所説によれば、建春門院陵は現在の養源院(「血天井」で有名な)の参道を上がった辺りに比定されますが、この山田先生の説に対して一石を投じたのが、⇒
  g.佐伯智広「建春門院陵はもと後白河院陵か?」(『紫苑』第10号、2012)

 それにしても、『男衾三郎絵詞』に描かれた女性のような頭髪をした建春門院というのは、あまりにも奇を衒いすぎているように思えます。

 「飲冷水病」の親不孝者

No.9669

 何やかにやと慌ただしいのですが、小中高は、もう一学期の終業式なのですね。本学はまだ授業期間が続きます。

 今日はある会議のために地下鉄で烏丸御池に出掛けたのですが、地上に出てみると、大雷雨が待ち受けていました。そういえば、会議の行われる施設の新館ではデジタル技術によって複製された「北野天神縁起絵巻」が公開中。

 ちなみに、奈良国立博物館で明日から開催される特別展「頼朝と重源-東大寺再興を支えた鎌倉と奈良の絆-」ですが、「国宝 源頼朝像(京都・神護寺)」の出展を盛んに宣伝しているように見えます。やはり、美術史の研究者の間では、これを頼朝の真像と見る意見が強いのでしょうか?
 この像に関する私見は、拙著『武門源氏の血脈 為義から義経まで』(中央公論新社)の第三章で述べたとおりです。

 藤原道長が飲水病であったことはよく知られていますが、その墓所(木幡浄妙寺)の近くに住んでいるから、それに肖ったというわけではないのですが、当方は「飲冷水病」で、また胃腸の具合を悪くしております。「けっせき」の心配との二重奏。
 あまりの暑さに耐えがたく・・・。つまらぬところで、また体調を崩してしまいました。
 みなさまも、くれぐれもお気をつけください。
 「身体髪膚これを父母に受くあえて毀傷せざるは孝の始めなり」。

市中は祇園祭の山鉾巡行。

No.9667

 昨日の基礎演習Ⅰのテーマは「IT社会の到来」。まず、そのデメリットについて切実な教訓が示されました。
 「PC」と「英語」優先の風潮に危機感を抱いている私としては、電子書籍よりも、紙の本が良いという意見が案外多くて、すこし安心。
 来週の発表者は筒居さんで、テーマは「日本のオタク文化」とのことです。

 Ⅳ講時の『玉葉』講読会は、興福寺対策会議の続き。兼実がまた指を弾いておりました。 
 Ⅴ講時~『吾妻鏡』講読会。岩田君が「和田平太胤長」の名前の通称「平太」について説明してから、「大河ドラマなら、胤長の長男は『胤太』ですね」と言ったのが面白かった。
 山本さんの差し入れ、美味しく頂きました。

 後期は火曜日以外にも、もう一つ、講読会なり研究発表会なりの時間を設けたいと思うのですが、如何でしょうか?

真夏の『吾妻鏡』

No.9668

 連日の暑さ、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 前期最後となる次回の『吾妻鏡』のご案内です。

 日時:2012年7月24日(火)午後4時すぎ~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:建仁四年(元久元年、1204)三月九日・十日・二十二日・二十九日、四月一日・十日・十六日・二十日・二十一日、五月六日・八日・十日・十六日・十九日、六月八日・十九日・二十四日・二十六日、八月三日・四日・十五日・二十一日、九月一日・二日・十三日・十五日、十月十四日・十七日・十八日、十一月四日・五日・七日・十三日・十七日・十八日・二十日・二十六日、十二月十日・十八日・二十二日の各条

 また、火曜日の『吾妻鏡』は7月は24日に開催予定です。
 夏休みを挟んで、後期は9月25日(火)に開催予定です。よろしくお願いします。

 火曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、新年度から何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。

9月3日(月)、学習院大学兵藤ゼミを御案内致します。

No.9666

 京郊の新興住宅地におけるバーベキュー災禍、先週(>>No.9655)に続いて昨夕・今夕も発生しているとのことです。市場原理主義横行の御時世ゆえ、こんな情報によってでも住宅地の地価の変動が生ずるようになるのかも知れませんね。この友人には重ね重ね気の毒な話です。
 それにしても、こうなると「隣組」やら「五人組」のあった社会の方が健全なようにも思えてしまいます。
 我々の時代における前進は、はたして前進であったのか。この辺で、シフトレバーを入れ替えるというのも、一考の余地ありかも知れません。
 
 ところで先般、当方のゼミの諸姉兄には、学習院大学の兵藤裕己先生のゼミのみなさんが、9月はじめにゼミ旅行で京都にお出でになるというお話をお伝え致しましたが、本日、詳しい情報が兵藤先生から届きました。
 旅行に参加されるゼミの学生さんは25名ほど(大河ドラマの影響によるものか、例年より多いとのこと)で、9月3日(月曜)の午後1時、三十三間堂のチケット売り場で集合ということになったとのことです。
 午後1時から一時間ほど、三十三間堂を拝観して、2時くらいから法住寺殿跡の巡検をされるとのことなので、私は2時に合流して御案内にあたりたいと考えています。本当は、先日の京都文化博物館歴史散歩の経験を活かして六波羅も歩きたいところですが、三十三間堂を見学した後、ということになると、法住寺殿跡のみに留めておいた方が良いかも知れません。

 さて、そんなつもりでおりますので、もしこの見学会のお手伝いをいただけるメンバーがおられましたら、お申し出下さい。数年ぶりの兵藤ゼミとの交流の機会になると思います。
 もちろん古参メンバー・関係者、とりわけ国文学科の学生さんの参加も歓迎致します。
 ちなみに、当ゼミメンバーからは、これまでに学習院大学の大学院に2名が進学し、兵藤先生の御指導を頂いております。

 ※ 兵藤先生のプロフィール↓
   http://www.gakushuin.ac.jp/univ/let/jpn/staff/staff08.html
 兵藤先生と私は同じ小学校と中学校を同じ学年で過ごしました。

 ☆ 神奈川県愛川町郷土資料館の山口研一先生より、御高論「来て・見て・楽しんで-神奈川県愛川町郷土資料館の開館に至るまで-」掲載の『民具マンスリー』(第45巻4号)を御恵送頂きました。
 御高論は、地域の博物館作りの貴重な経験を凝縮された内容で、博物館学芸員資格の取得を目指している学生さんには、ぜひ読んで頂きたいと思います。
 山口先生に、あつく御礼を申し上げます。
 ちなみに、山口先生は、私にとって大学・大学院の後輩にあたり、ともに貫達人先生の薫陶を受けた間柄ということになります。

 御一読をお勧めしたい論文

No.9664

 今週17日(火曜日)Ⅲ講時の「基礎演習Ⅰ」ですが、津称鹿さんの発表で、テーマは「IT社会の到来」とのことです。
 
 さて、朝刊のテレビ欄を見たところ、またショッキングな内容の番組紹介記事がありましたので、今日は先手を打つことにいたします。
 公立の図書館は日曜日も開館しているはずですから。

 1.信西と源義朝について
   元木泰雄「信西の出現-院の専制と近臣-」(『立命館文学』521,1991)
   元木泰雄「源義朝論」(『古代文化』54-6,2002)

 2.公家の処刑について
   上横手雅敬「天皇と京都」(『ミネルヴァ日本評伝選通信』36・37,2007)

  3.池家と源頼朝の関係について
   杉橋隆夫「牧の方の出身と政治的位置-池禅尼と頼朝と-」(上横手雅敬監修『古代・中世の政治と文化』思文閣出版1994)

 4.後白河院の御所法住寺殿について
   菅野扶美「今熊野神社考 後白河院御所・法住寺殿論 その一」(『東横国文学』25,1993)

 5.河内源氏嫡流のレガリヤ「鬚切」について
   鈴木彰「源家重代の太刀「鬚切」」について-その多様性と軍記物語再生の様相-」(『日本文学』2003年7月号)

 6.平家一門の女性の歴史的評価について
   栗山圭子「二人の国母」(『文学』3巻4号,2002)
   金永「平時子論」(同)
   鈴木啓子「『平家物語』と〈家〉のあり方」(同)

  ※ お近くの図書館でどうぞ。その図書館になくても複写したものを取り寄せてくれます。

Happy Wedding

No.9663

 六波羅と法住寺殿跡の歴史散歩から、はや一週間が経過しましたが、実はその翌日、東京の麻布で、私の前任大学における優秀なゼミ生であった山田さんが、華燭の典を挙げられました。
 森鴎外ゆかりの上野のホテル(今も語り種になっている、長村君・山本君によるタクシー事件のあった)に宿泊した、東京・千葉ゼミ旅行(2005,2,26~28)に付き合ってくれた、あの山田さんです。
 末長くお幸せに!
 しかし、あれからもう7年半ですか?あの時のゼミメンバーはもう古参。博士になった人。もうお母さんになった人。もうすぐお母さんになる人。学芸員やら中・高・大学の先生になった人。そして、すっかり腹の出たオジイサンになった私も。
 「少年老いやすく学成り難し」ですか。
 そういえば、「華燭」というほどのものではありませんでしたが、1975年の7月にも、青山でそんなことをやったカップルがありましたね。
編集:2012/07/15(Sun) 01:29

おめでとうございます

No.9665

 山田さんおめでとうございます。このたびは心よりお祝い申し上げます。

 あとにもさきにも、東京・千葉ゼミ旅行(2005,2,26~28)のように印象深かった旅はありません。もう七年以上も前になるんですね。あの旅行に参加された方は、みんな山田さんのことをよく覚えておられると思います。
 ご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

 昔の職場で、こっそりと『清盛展』を見てきました。

No.9662

 今日(13日)は、ある「推薦」の理由を記した書類を作成してから、京都文化博物館へ。
 折良く(相手方にとっては「運悪く」かも?)私と同時に入館した2回生の岩瀬さんと一緒に見学(岩瀬さんには御迷惑だったかもしれない「解説」付き)。
 性格の悪い私は(というより、かつての職場での使命感のトラウマにとらわれた私は)展示解説の「間違い探し」に精を出しました。
 人気を博していたのは、法住寺殿武将墓から検出された鍬形。あの武将墓をメインにして、京都文博独自の企画展が組めそうだと思うのですが、如何?

 家に戻ると、京都市内の某カルチャーセンターからの葉書が一通届いており、それを見てモチベーションがかなり低下。
 岩田君は恵まれているぞ!

 一方、長野県飯山市出身の義理の叔父(戦時中は予科練生だったとのこと)の納骨が済んだという知らせに安堵し、拙宅に大量発生した羽アリがシロアリではないのが判明したことでホッと致しました。

 それにつけても、博物館の見学は、後になってから足腰に疲れが出ます。以前はこんな酷くはなかったのに。老耄は例の如し。

 ☆ 和歌山大学の海津一朗先生より、『和歌山大学教育学部教育実習テキスト 地域文化編-「田舎」「僻地」と思ってないか-』と『和歌山大学教育実習・博物館実施優テキスト2 戦国根来の歩き方』を御恵送頂きました。
 海津先生に、あつく御礼を申し上げます。

智に働けど、情に棹させども伝わらず

No.9660

 「ある集団に対して、良かれと思うことを頑張って進めてみるのは結構なことだが、それを分かってもらおうなどとは考えてはいけない」とは、昔教えを受けた師の言であるが、まさに然り。
 とは言っても、やはり分かってもらえないのは辛い。
 <厳しい現実>に直面して、めずらしく憂鬱になっています。

 自らの身体もさることながら、築10数年を経た拙宅も老朽化が進んでいるようで、水洗トイレの水が止まらなくなったり、天井裏に羽アリが大量発生したりするようになりました。
 嗚呼、「内憂外患」の種は尽きまじ。

 そういえば、京都文博の『平清盛展』をまだ見に行っていませんでした。
編集:2012/07/12(Thu) 19:36

 捨てるカミあれば、拾うカミあり

No.9661

 ゼミの方たちのツイッターの情報で、拙著『源氏と坂東武士』(吉川弘文館)が重版されることになったことを知りました。3刷は中公新書の『武家の棟梁の条件』(現在までに6刷)以来の快挙です。
 多くの方が復刊をリクエストして下さったようで、とても嬉しく思っています。
 いささか精神的に救われた気持ちです。

 ちなみに、この本の書名は『源氏と坂東武者』でも『源氏と板東武士』でもありません。
 お間違えなきようにお願い致します。

 新刊の『新横須賀市史 通史編 自然・古代・中世』拝受

No.9659

 山田邦明先生・近藤好和先生・高橋秀樹先生・真鍋淳哉先生の御高配により、横須賀市より『新横須賀市史 通史編 自然・古代・中世』を御恵送頂きました。

 大冊でほとんどがカラー印刷という豪華版です。そして、古代・中世の部分の多くは三浦氏に関係する内容。大変なお仕事であったことと思います。

 資料編も含めて、市町村レベルにおける自治体史編纂のお手本を示されたものと思います。
 もちろん、ほんの僅かですが、異論を差し挟みたいところもございました(笑)。

 山田先生・近藤先生・高橋先生・真鍋先生にあつく御礼を申し上げます。
 この本の内容を前提にして、中世を三つの時代くらいに分けてシンポジウムでも開催されたら素晴らしいのではないでしょうか。