甲斐源氏・木曾義仲と鎌倉幕府の成立
No.7954
昨秋、山梨県立博物館で開催された甲斐源氏をテーマにしたシンポジウムに参加させて頂いたことを契機にして、鎌倉幕府成立過程における甲斐源氏をどのように評価すべきか考えています。
安田義定については、以前、「稲荷社を造営した二人の東国武士」(『朱』第43号、伏見稲荷大社、2000年)で触れたことがあるのですが、そこでは義定の武士社会におけるステイタスの高さや頼朝に対する独立性を主張しました。
彦由一太氏の研究でも、甲斐源氏の独立性と軍事的役割の大きさが評価されているのですが、最近、私は、頼朝の作り上げた政権について、その画期性を従来のようには評価できなくなり、その一方で、『玉葉』などをよく読んでみると、東国叛乱勢力の中で頼朝の存在がきわめて高く評価されていることに気がついて、いささか混乱するところがありました。彦由氏の研究からは学ぶべき所が多いのですが、甲斐源氏と頼朝を同等の政治勢力としてに捉えるような見方には違和感を感じてしまうのです。
今日は、関連する先行研究を読んでいたのですが、松井茂氏の「源頼朝と甲斐源氏」(『文化』第42巻第1・2号、1978年)を読んで大いに腑に落ちるところがありました。当然、以前読んでいるはずなのですが、その時には納得できなかったのだと思います。
最近、私は各地に挙兵した勢力の中で頼朝が一頭地を抜いた存在であったことを「「東国武士」の実像」(高橋修編『実像の中世武士団』 高志書院)の中で述べたのですが、それを補強してくれるような内容でした。松井先生に感謝です。
結局、彦由氏の説も踏まえつつ、最近の政治史研究の成果に基づいて、それを相対化するという形で、私の甲斐源氏にたいする認識は落ち着きそうですが、それは木曾義仲や源行家の評価、ひいては鎌倉幕府論にも関わる問題だと思います。目下、「木曾義仲論」の最前線にいる長村君などの御意見をうかがいたいものです。
昨日頂いた髙橋昌明先生からのお手紙によると、最近の武士論研究は在地武士団の見直し、再構築に議論が向けられているようですが、そうした研究が進行する中で、上記のような問題についても、新しい見解が示されるようになるものと期待したいところです。
いろいろ御教示いただければ幸いです。
【追記】 本日、朝日放送の18時台のニュースで、先日奈良女子大の前川佳代先生が紹介して下さった(>>No.7925)イベントの様子が放映されました。
http://www.nara-wu.ac.jp/news/H22news/110112.pdf
実験は大成功だったようで、甘葛煎はとても美味しそうでした。
安田義定については、以前、「稲荷社を造営した二人の東国武士」(『朱』第43号、伏見稲荷大社、2000年)で触れたことがあるのですが、そこでは義定の武士社会におけるステイタスの高さや頼朝に対する独立性を主張しました。
彦由一太氏の研究でも、甲斐源氏の独立性と軍事的役割の大きさが評価されているのですが、最近、私は、頼朝の作り上げた政権について、その画期性を従来のようには評価できなくなり、その一方で、『玉葉』などをよく読んでみると、東国叛乱勢力の中で頼朝の存在がきわめて高く評価されていることに気がついて、いささか混乱するところがありました。彦由氏の研究からは学ぶべき所が多いのですが、甲斐源氏と頼朝を同等の政治勢力としてに捉えるような見方には違和感を感じてしまうのです。
今日は、関連する先行研究を読んでいたのですが、松井茂氏の「源頼朝と甲斐源氏」(『文化』第42巻第1・2号、1978年)を読んで大いに腑に落ちるところがありました。当然、以前読んでいるはずなのですが、その時には納得できなかったのだと思います。
最近、私は各地に挙兵した勢力の中で頼朝が一頭地を抜いた存在であったことを「「東国武士」の実像」(高橋修編『実像の中世武士団』 高志書院)の中で述べたのですが、それを補強してくれるような内容でした。松井先生に感謝です。
結局、彦由氏の説も踏まえつつ、最近の政治史研究の成果に基づいて、それを相対化するという形で、私の甲斐源氏にたいする認識は落ち着きそうですが、それは木曾義仲や源行家の評価、ひいては鎌倉幕府論にも関わる問題だと思います。目下、「木曾義仲論」の最前線にいる長村君などの御意見をうかがいたいものです。
昨日頂いた髙橋昌明先生からのお手紙によると、最近の武士論研究は在地武士団の見直し、再構築に議論が向けられているようですが、そうした研究が進行する中で、上記のような問題についても、新しい見解が示されるようになるものと期待したいところです。
いろいろ御教示いただければ幸いです。
【追記】 本日、朝日放送の18時台のニュースで、先日奈良女子大の前川佳代先生が紹介して下さった(>>No.7925)イベントの様子が放映されました。
http://www.nara-wu.ac.jp/news/H22news/110112.pdf
実験は大成功だったようで、甘葛煎はとても美味しそうでした。