古文書学会
元木泰雄
No.5150
野口先生、無事に帰宅致ました。
熊本の様子をお尋ね頂きまして、恐縮に存じます。
学会のあった3日間(当方が旅行した5日間)、秋晴れに恵まれた暑いほどの好天の下、充実した講演・報告に接するとともに、圧巻の阿蘇神社文書を工藤・阿蘇品両先生の懇切なご解説を受けながら見学し、工藤、川添両先生を始め、多くの方々と旧交を温め、さらに阿蘇品先生はじめ多くの方々と新たに出会うことができました。本当に、素晴らしい学会でした。
何より、長年にわたる阿蘇文書の修理を完成に導かれるとともに、今回の大会を熊本に誘致され、多大なご高配を賜った工藤敬一先生に心からの御礼を申し上げたいと存じます。また先生には、美川先生の書き込みにもあるとおり、大会の合間に五高記念館をご案内いただきました。先生の熊本大学、第五高等学校、そして熊本に対する思いをうかがうことができて、心に残るひと時でした。
14日の公開講演も、今回は阿蘇品先生の阿蘇文書の伝来、歴史に関する精細なお話、熊大近世史の吉村先生による永青文庫所蔵文書から見た近世の支配システムのお話と、肥後を代表する二大文書に関する内容でした。
その晩の懇親会では、まず工藤先生が開会のご挨拶、そして最後には九大名誉教授の川添昭二先生が古文書学会と九州の関係をお話になり、学会と九州の浅からぬご縁、換言すれば九州の中世史研究がいかに活発であるかが髣髴とされたことでした。中尾尭会長いわく、「古文書学会は傾いたら九州で学会を開き、退勢を立て直した。足利尊氏みたいなもの」とは言いえて妙でした。
翌日の研究発表では、『古代文化』で「阿波民部大夫成良」を公表された野中寛文先生の「一一世紀明法勘文の作成経緯」、義経問題で売り出し中の菱沼一憲先生の「源頼朝の折り紙書状と申状」と、おなじみの方々の興味深いご報告がありました。当方、最初から司会担当、後述のように前の晩は酒を控え、節制?したことでした。
そして、三番目は野口ゼミでもおなじみの花田卓司君の「南北朝所領給付に関する一考察」。実に理路整然としたご報告で、題名となった課題について、幕府の方針の転換を明快に解明された内容でした。当日の多くの報告の中でも出色の内容であったと思います。当方、そのあたりで緊張の糸がプツン。節制の甲斐もなくウトウト。午後は時代が下ったこともあってもはや、居眠りから本格的な睡眠に移行の気配。
ちょうど花田君および、その応援団諸氏が熊本城に出かけるとのことで、同行してしまいました。ホントは当方、学会の理事なんですけど・・・
最終日は、前述の古文書見学会。やはり、北条時政の下文、歴代得宗の文書は一番の関心の対象。また、後醍醐、尊氏、懐良親王以下、南北朝オールスターズの文書群は圧巻でした。その後、小林基伸、美川圭、漆原徹、松本一夫の諸先生方、神野潔さんらと細川刑部亭を見学し、昼食後解散致ました。
今回は、14日の理事会に備え、13日金曜日から熊本に参りました。当日は一見快晴。ご一緒した杉橋隆夫先生のご希望で、先生の運転により阿蘇に参りました。が、さすがは13日の金曜でした。黄砂状のもやで景色は見えず、噴火口は爆発の危険で立ち入り禁止(16日、昼食を取ったホテルでは阿蘇山噴火避難対策協議会とかいう会議を開いておりましたから事態は深刻なようです)、阿蘇神社も工事中。踏んだり蹴ったりです。
その晩は、軍忠状研究の第一人者、漆原徹先生を交えて三人で懇親会。ホテル東急インのフロントお奨めの郷土料理店「五郎八」。最大の名物馬刺しは、名前を聞いただけで不快になられる杉橋先生に配慮してパス。天草の新鮮な刺身、天草大王という地鶏のつくねなど、味、ボリュームも十分な内容で、酒もしこたま飲んで、一人5000円程度。熊本のよさを満喫しました。杉橋先生お帰りのあと、漆原先生と近所の居酒屋で辛子レンコンを肴にビールと焼酎で一杯。宿に帰ろうと思った刹那、男性スタッフがきびきび働くショットバーを見てしまい、二人とも吸い込まれてしまいました。西銀座通のバーCALMEです。西銀座というと、往年のフランク永井の歌を思い出しますな(なんて言うのは我々以上でしょうか)。行き当たりばったりで入ったこの店が実は大当たり、この晩から3晩続けて通うのですから運命なんて分からない。
かくして、最初の一晩で中ジョッキ6杯、焼酎1杯、水割り3杯。さすがに二日酔でしたが、二日酔には柑橘系が良いとの噂通り、翌朝オレンジジュースを飲むや、たちまち回復。まだ苦しそうになさっている漆原先生を横目に、朝食完食。わしもまだ捨てたもんやないわい。
14日の晩の懇親会では、九大の佐伯弘次先生、福岡大の森茂暁先生らと久しぶりの旧交を温めることができました。また、鹿児島大学で乕尾達哉先生に学んだ熊大の院生廣島君にご挨拶を受けました。有村さんの1年先輩ですね。有村さんによろしくとのことでした。こんな思いがけない出会いも嬉しいものです。院生諸君は折角の機会ですから、思い切って第一線の先生方にご挨拶されたら良いでしょう。長村君は廣島君とも親しく会話をしていたようですね。大学の垣根を取り払い、多く方々が交流できるところに、学会のよさがあると思います。
その後、懇親会でしこたま食べたにもかかわらず、ラーメン店はしごに出かけるという小口雅史先生に拉致されかかった漆原先生を救出、またまた前日のバーCALMEに。翌日一番の司会に備え節制いたしました(当方としては節制ですが・・・)。ちなみに小口先生のラーメンはしごは冗談と思いきや、本当に二軒で完食とのこと。どんな胃袋なんでしょうか。羨ましい(聞くだけで気分が悪い)?
翌15日の研究発表のあとは、阿蘇社領の調査を兼ねてお見えになった大山喬平先生を囲み、総勢17名の大宴会となりました。関西では小林、美川両先生、当方、関東その他では漆原先生、岡野友彦先生、それに京大、立命以下の院生諸氏。これまた楽しい懇親のひと時でした。場所は、大概のガイドブックが郷土料理店の最初に掲載している下通の「青柳」。人数が急に増えてもいやな顔もせず部屋もかえてくれるし、刺身はまだ動いているという活きのよさ、話題の馬刺しもとろけるよう。こんなうまいものが何で全国化しないのか、と思わざるを得ません。やはり「馬」を食べることに抵抗感が強いのでしょうか。辛子レンコン以下の郷土料理、天ぷら、すしといったオーソドックスな料理も美味で、しかもこれまたかなり飲んで、一人5000円程度。有名店の驕りはなく、非常に良心的な感を受けました。前日の「五郎八」とともに、熊本のうまさ、良さを感じました。当方が責任を持ってお奨めできる店です。
その後、二次会にふとラーメンを食いたいという気になり、「ゴダイゴ」と称する店があると聞いて、「腹を壊しそうな名前だが、話のネタに」と思い出かけました。が、実は「コダイコ」。それを知ると急に胃が重くなり、結局三連続でーCALMEに参りました。小口先生の足元にも及びません・・・バーCALMEはお奨めです。熊本に行かれる方には所在地をお教えいたします。
16日は熊本から鹿児島に移り、鹿大の乕尾先生と黒牛、黒豚のシャブシャブで旧交を温め、翌17日には久しぶりに黎明館を見学して、黒豚トンカツを賞味して帰宅致ました。
なお、大山先生は二泊のご予定で阿蘇付近を調査しておられます。誠に精力的な御活躍ぶりで、敬服するばかりです。常に、学問に対する情熱を抱き続けられることが、若々しさを保たれる秘訣なのかもしれません。最後まで同道するご予定の花田君、ご様子などお教えください。
なお、大会の最中、かつて学会の理事として活躍され、研究会では辛口コメントを発せられた桑山浩然先生の訃報に接しました。まだ69歳でいらっしゃいました。室町幕府の政治、制度、そして蹴鞠の御研究と諸方面に活躍されたことはご存知の通りです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
・古文書学会見学会のご案内
最後にもう一件、古文書学会の見学会についてのご案内です。
既に御連絡した11月12日の和歌山県立博物館に続き、直後の18日土曜日午前10時から、醍醐寺霊宝館でも見学会が行われます。展示内容は、醍醐寺のHPで確認してください。
こちらは日本女子大の永村真先生が企画されたものです。
参加希望者は、東京の立正大学の北村行遠先生の研究室まで葉書で申し込んでください。
熊本の様子をお尋ね頂きまして、恐縮に存じます。
学会のあった3日間(当方が旅行した5日間)、秋晴れに恵まれた暑いほどの好天の下、充実した講演・報告に接するとともに、圧巻の阿蘇神社文書を工藤・阿蘇品両先生の懇切なご解説を受けながら見学し、工藤、川添両先生を始め、多くの方々と旧交を温め、さらに阿蘇品先生はじめ多くの方々と新たに出会うことができました。本当に、素晴らしい学会でした。
何より、長年にわたる阿蘇文書の修理を完成に導かれるとともに、今回の大会を熊本に誘致され、多大なご高配を賜った工藤敬一先生に心からの御礼を申し上げたいと存じます。また先生には、美川先生の書き込みにもあるとおり、大会の合間に五高記念館をご案内いただきました。先生の熊本大学、第五高等学校、そして熊本に対する思いをうかがうことができて、心に残るひと時でした。
14日の公開講演も、今回は阿蘇品先生の阿蘇文書の伝来、歴史に関する精細なお話、熊大近世史の吉村先生による永青文庫所蔵文書から見た近世の支配システムのお話と、肥後を代表する二大文書に関する内容でした。
その晩の懇親会では、まず工藤先生が開会のご挨拶、そして最後には九大名誉教授の川添昭二先生が古文書学会と九州の関係をお話になり、学会と九州の浅からぬご縁、換言すれば九州の中世史研究がいかに活発であるかが髣髴とされたことでした。中尾尭会長いわく、「古文書学会は傾いたら九州で学会を開き、退勢を立て直した。足利尊氏みたいなもの」とは言いえて妙でした。
翌日の研究発表では、『古代文化』で「阿波民部大夫成良」を公表された野中寛文先生の「一一世紀明法勘文の作成経緯」、義経問題で売り出し中の菱沼一憲先生の「源頼朝の折り紙書状と申状」と、おなじみの方々の興味深いご報告がありました。当方、最初から司会担当、後述のように前の晩は酒を控え、節制?したことでした。
そして、三番目は野口ゼミでもおなじみの花田卓司君の「南北朝所領給付に関する一考察」。実に理路整然としたご報告で、題名となった課題について、幕府の方針の転換を明快に解明された内容でした。当日の多くの報告の中でも出色の内容であったと思います。当方、そのあたりで緊張の糸がプツン。節制の甲斐もなくウトウト。午後は時代が下ったこともあってもはや、居眠りから本格的な睡眠に移行の気配。
ちょうど花田君および、その応援団諸氏が熊本城に出かけるとのことで、同行してしまいました。ホントは当方、学会の理事なんですけど・・・
最終日は、前述の古文書見学会。やはり、北条時政の下文、歴代得宗の文書は一番の関心の対象。また、後醍醐、尊氏、懐良親王以下、南北朝オールスターズの文書群は圧巻でした。その後、小林基伸、美川圭、漆原徹、松本一夫の諸先生方、神野潔さんらと細川刑部亭を見学し、昼食後解散致ました。
今回は、14日の理事会に備え、13日金曜日から熊本に参りました。当日は一見快晴。ご一緒した杉橋隆夫先生のご希望で、先生の運転により阿蘇に参りました。が、さすがは13日の金曜でした。黄砂状のもやで景色は見えず、噴火口は爆発の危険で立ち入り禁止(16日、昼食を取ったホテルでは阿蘇山噴火避難対策協議会とかいう会議を開いておりましたから事態は深刻なようです)、阿蘇神社も工事中。踏んだり蹴ったりです。
その晩は、軍忠状研究の第一人者、漆原徹先生を交えて三人で懇親会。ホテル東急インのフロントお奨めの郷土料理店「五郎八」。最大の名物馬刺しは、名前を聞いただけで不快になられる杉橋先生に配慮してパス。天草の新鮮な刺身、天草大王という地鶏のつくねなど、味、ボリュームも十分な内容で、酒もしこたま飲んで、一人5000円程度。熊本のよさを満喫しました。杉橋先生お帰りのあと、漆原先生と近所の居酒屋で辛子レンコンを肴にビールと焼酎で一杯。宿に帰ろうと思った刹那、男性スタッフがきびきび働くショットバーを見てしまい、二人とも吸い込まれてしまいました。西銀座通のバーCALMEです。西銀座というと、往年のフランク永井の歌を思い出しますな(なんて言うのは我々以上でしょうか)。行き当たりばったりで入ったこの店が実は大当たり、この晩から3晩続けて通うのですから運命なんて分からない。
かくして、最初の一晩で中ジョッキ6杯、焼酎1杯、水割り3杯。さすがに二日酔でしたが、二日酔には柑橘系が良いとの噂通り、翌朝オレンジジュースを飲むや、たちまち回復。まだ苦しそうになさっている漆原先生を横目に、朝食完食。わしもまだ捨てたもんやないわい。
14日の晩の懇親会では、九大の佐伯弘次先生、福岡大の森茂暁先生らと久しぶりの旧交を温めることができました。また、鹿児島大学で乕尾達哉先生に学んだ熊大の院生廣島君にご挨拶を受けました。有村さんの1年先輩ですね。有村さんによろしくとのことでした。こんな思いがけない出会いも嬉しいものです。院生諸君は折角の機会ですから、思い切って第一線の先生方にご挨拶されたら良いでしょう。長村君は廣島君とも親しく会話をしていたようですね。大学の垣根を取り払い、多く方々が交流できるところに、学会のよさがあると思います。
その後、懇親会でしこたま食べたにもかかわらず、ラーメン店はしごに出かけるという小口雅史先生に拉致されかかった漆原先生を救出、またまた前日のバーCALMEに。翌日一番の司会に備え節制いたしました(当方としては節制ですが・・・)。ちなみに小口先生のラーメンはしごは冗談と思いきや、本当に二軒で完食とのこと。どんな胃袋なんでしょうか。羨ましい(聞くだけで気分が悪い)?
翌15日の研究発表のあとは、阿蘇社領の調査を兼ねてお見えになった大山喬平先生を囲み、総勢17名の大宴会となりました。関西では小林、美川両先生、当方、関東その他では漆原先生、岡野友彦先生、それに京大、立命以下の院生諸氏。これまた楽しい懇親のひと時でした。場所は、大概のガイドブックが郷土料理店の最初に掲載している下通の「青柳」。人数が急に増えてもいやな顔もせず部屋もかえてくれるし、刺身はまだ動いているという活きのよさ、話題の馬刺しもとろけるよう。こんなうまいものが何で全国化しないのか、と思わざるを得ません。やはり「馬」を食べることに抵抗感が強いのでしょうか。辛子レンコン以下の郷土料理、天ぷら、すしといったオーソドックスな料理も美味で、しかもこれまたかなり飲んで、一人5000円程度。有名店の驕りはなく、非常に良心的な感を受けました。前日の「五郎八」とともに、熊本のうまさ、良さを感じました。当方が責任を持ってお奨めできる店です。
その後、二次会にふとラーメンを食いたいという気になり、「ゴダイゴ」と称する店があると聞いて、「腹を壊しそうな名前だが、話のネタに」と思い出かけました。が、実は「コダイコ」。それを知ると急に胃が重くなり、結局三連続でーCALMEに参りました。小口先生の足元にも及びません・・・バーCALMEはお奨めです。熊本に行かれる方には所在地をお教えいたします。
16日は熊本から鹿児島に移り、鹿大の乕尾先生と黒牛、黒豚のシャブシャブで旧交を温め、翌17日には久しぶりに黎明館を見学して、黒豚トンカツを賞味して帰宅致ました。
なお、大山先生は二泊のご予定で阿蘇付近を調査しておられます。誠に精力的な御活躍ぶりで、敬服するばかりです。常に、学問に対する情熱を抱き続けられることが、若々しさを保たれる秘訣なのかもしれません。最後まで同道するご予定の花田君、ご様子などお教えください。
なお、大会の最中、かつて学会の理事として活躍され、研究会では辛口コメントを発せられた桑山浩然先生の訃報に接しました。まだ69歳でいらっしゃいました。室町幕府の政治、制度、そして蹴鞠の御研究と諸方面に活躍されたことはご存知の通りです。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
・古文書学会見学会のご案内
最後にもう一件、古文書学会の見学会についてのご案内です。
既に御連絡した11月12日の和歌山県立博物館に続き、直後の18日土曜日午前10時から、醍醐寺霊宝館でも見学会が行われます。展示内容は、醍醐寺のHPで確認してください。
こちらは日本女子大の永村真先生が企画されたものです。
参加希望者は、東京の立正大学の北村行遠先生の研究室まで葉書で申し込んでください。