松本紘京大総長インタビューについて

美川圭
No.9817

 いま京大で大問題になっている「教育院」問題の当事者のインタビューです。今日(1月5日)の毎日新聞朝刊の京都地方欄。

 どうしてこういうピントのずれた人が選挙で総長に選ばれるのでしょうか。高校時代に音楽をした人、恋愛をした人の入学時のハードルを下げるなんていうのは、つまりAO入試のことで、私立大学や国立の多くですでにやっていて、しかもあまりうまく行っていない(それにしても恋愛うんぬんはさらにずれている)。こういう人相の悪いおじいさんに、恋愛が足りないなどと説教された高校生。思わず笑ってしまいます。

 それに、「自由」が権力からの「自由」だったのは、過去のことだったような言い方ですが、とんでもないことで、きわめて今日的な危機でしょう。まったくこの人は世の中がわかっていないので、この人こそ教養欠如の象徴、この人にこそ教養教育が必要でしょう。とくに理系に顕著な専門バカです。既存の概念や知識からの逸脱、とか科学と非科学の間に科学をひろげていく、なんてのは、今さらあなたに言われずとも研究者ならだれでも意識してやっていることで(うまくいくかどうかは別問題)、いまさらそれこそが新しい「自由」だなんて、言われてもちゃんちゃらおかしい。

 この辺のおかしさをインタビュアー(京都支局長)もきちんとつかないといけない。この毎日のインタビュアーは、京大国史の2年下の卒業生だけに、それもたいへん残念。学生時代はまともな女子学生と思ったのだが、組織のなかで歴史学で学んだはずの批判精神がにぶったのか。あるいは京大の教育がまずかったのか。

http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20130105ddlk26040216000c.html

 『紫苑』の原稿を心配しています

No.9816

 昨日、1988年にTBSで放送された吹き替え版「グーニーズ」(岩田君が日本語版の最高傑作としてご推奨)がKBS京都で放送されました。ゼミ古参メンバーの御期待にお応えして、しっかりと録画を撮りましたので、視聴を望まれる方はお知らせ下さい。

 年末年始、運動不足のゆえか、どうしても体調不良になりますね。
 自分の仕事が進まないのを棚に上げて、『紫苑』の原稿を心配しています。とくに初めて論文や研究ノートを書くという方は、提出後に大幅な改稿というよう事態に至らないようにお願いします。くれぐれも。

 目下、新年度のシラバスを作成しているのですが、やりたい内容と実態の乖離を考えると、なかなか難しい。現代社会学部であらたに演習を担当する予定なのですが、これには「問題意識」という点で期待するところがあります。教養科目は法学部の学生さんを意識した内容に。宮崎の大学の法学部で担当した「日本法制史」の経験を活かして、「穢」の問題とか「境界論」も盛り込みたいと考えています。

 ☆ 大阪大学の平雅行先生より、御高論「建永の法難と九条兼実-法然伝の検討を通して-」(今井雅晴先生古稀記念論文集編集委員会編『中世文化と浄土真宗』思文閣出版)・「中世宗教の成立と社会」(高野利彦・安田次郎編『新 大系日本史15 宗教社会史』山川出版社)・「中世成立期の王権と宗教-上島享『日本中世社会の形成と王権』の書評にかえて-」(『日本史研究』601)・「法然と顕密体制」(仏教美術研究上野記念財団助成研究会報告書第38冊『研究発表と座談会 浄土宗の文化と美術』)などを御恵送頂きました。
 平先生にあつく御礼を申し上げます。

 ※ 清文堂の『中世の人物』ですが、第一巻の初校ゲラが届きました。第二・三巻の原稿もすでに印刷所に渡されており、今月下旬にはゲラが出るとのことです。
 御執筆の先生方、恐れ入りますが、もう少しお待ち下さい。 

ご挨拶

元木泰雄
No.9814

 先ほどからご挨拶を書いているのですが、一回目は戻るを押して消滅。二回目はエラー表示が出てまたまた消滅。書き込みに費やした一時間半が消えてしまいました。

 さりとて、ここで屈するわけにはまいりません。
 三度目の書き込みです。

 野口先生、野口ゼミの皆さん、あけましておめでとうございます。
 本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 昨年の公開講座では、初の再登壇という栄誉に浴し、まことにうれしく存じました。ところが、家族の重病に加え、自身の腰痛という思いもかけない事態に直面、果たして当日伺えるかどうかという危機的状況に陥ってしまいました。しかし、奇跡的に病人も、当方の腰も小康を得たので、ご迷惑をおかけしないで済みました。話のほうは、自分で言うのも何ですが、まさに快心の講演であったと思います。野口先生から頂いた課題も、何とか盛り込めたも自負しております。
 事前学習をしておられない方には理解は難しかったかもしれません。私は野口先生をお相手に話をいたしました。その意味は後で申し上げます。
 
 野口先生とは、平先生とともに『中世の人物』の編纂もご一緒致しました。いろいろありましたが、何とか第一巻は近日刊行というところに漕ぎ付けました。野心作揃いだけに、大きな話題になることは疑いないと思います。
 残念ながら大河ドラマ放送中の2012年内刊行という目論見は失敗でしたが、あのドラマでは販売促進にはつながらなかったでしょうね(笑)。
 
 その大河ドラマ、多くの書き込みがありますが、本当にひどいドラマでした。日本の劣化を象徴する内容と言えると思います。歴史がどうのという以前に、あまりにお粗末な脚本で、見るに堪えないドラマでした。よくまあ視聴率が9パーセントもあったものです。出演者の親類縁者がご覧になったのでしょうか?民放の知人曰く「民放のドラマはスポンサーのお金で作るから、失敗しても許される面もあるが、受信料であんなドラマを作られたらたまらんね」。
 結局、清盛のどこに魅力があるのか、何をした人物なのかさっぱりわからないままでした。「武士の世を作る」というセリフが多用されましたが、具体的には福原遷都や日宋貿易の話ばかり。何が武士の世なのか、視聴者には理解できません。脚本家が清盛の歴史的役割を理解しないまま、通説的な貴族対武士という構図に当てはめようとするので、こんなおかしなことになるのではないでしょうか。
 以前出演した、「歴史秘話何とか・・」という番組で、平氏が取り上げられた際、篤学で最新研究を良くご存じのディレクターさんから充実したインタビューを受けたことがありました。ところが、出来上がってみると通説通りのつまらない内容で、当方のインタビューなど殆ど消えておりました。プロデューサーが「視聴者のレベルに合わせた」とのこと。視聴者はアホだからこんなものでよいという発想でした。これでは、最新の成果を伝えることなど絶対にできないことになります。
 今回の大河でも、貴族と戦う武士という古めかしい構図が導入された結果、地方武士を組織する頼朝と、対照的に結局は貴族化して滅びる平氏というつまらない描き方になり、清盛の斬新な位置づけができなくなった様に思われます。

 相手があほだからこんなものでよい、というのは大河だけの問題ではありません。高名な歴史家の著作にも、実証、論理、先行研究の理解がでたらめなものをお見受けします。一般読者相手だからと言ってこんなことが許されるはずがありません。
 さらに某大学の総長に至っては、最近の学生はアホであるから、全学共通科目(一般教養)の担当者は、研究していない教員で構わない」などと言い出す始末。
 今水準が低いなら、それに迎合するのではなく、水準を上げることこそが大事ではないでしょうか。それなくして先人が築いた業績を継承することなど、できるはずがありません。
 現状に迎合、妥協する傾向が今の日本を覆っているように思います。これが「劣化」の原因であることはいうまでもないでしょう。
 一般向きの講演ではありますが、公開講座に際し、あえて最新の成果を盛り込んだ難しいお話をした背景にはそういう意図がありました。

 それにしましても、政治、大学、大河ドラマと、日本の劣化を痛感させられた一年でした。
 自身の成長と日本の発展が重なった幸福な時代が過ぎ、自身の衰えと日本の衰退が重なることになりました。八方ふさがりの世情を眺めておりますと、鎌倉時代の末期もこんな状況だったのではないかと絶望的な気分になります。
 ただ、正しい学問、大学の在り方を次世代に伝えることは我々の使命だと思います。そのために全力を尽くしたいと存じます。
 
 野口先生、ゼミの皆さん、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
 2013年が、すべての人々にとって良い年になりますように。
 
  

 
編集:2013/01/03(Thu) 23:49

 まさに「心中領状更無異議」(『吾妻鏡』治承4,9,9条)の気持ちです。

No.9815

 年頭から元木先生のメッセージをいただいて、「こいつは春から縁起がいいわい」であります。

 昨年は大変な時に当方の公開講座へ御出講下さり、ありがとうございました。目論見通りの大盛況でした。服藤早苗先生とのコラボレーションということもあり、あれだけ多くの聴講の方が集まった講座は数少ないだろうと思います。

 学問・研究、さらには文化環境全般にわたる劣化の進行は、まったく仰るとおりだと思います。日本の大学のあり方については、元木先生と私の共通する体験から、本当に切実なものを感じております。もはや、老耄となりましたので、身の回りで対処できる範囲でのことながら、全力で対応してまいりたいと思います。

 その点に於いて、清文堂から刊行される、元木プロジェクトこと、『中世の人物 京・鎌倉の時代』(全三巻)の第二巻に編者として参加させていただけたのは僥倖と言わざるを得ません。元木先生御担当の第一巻「保元・平治の乱と平氏の栄華」に続いて、第二巻「治承~文治の内乱と鎌倉幕府の成立」も早々の刊行に漕ぎ着けたいと思います。

 早々に素晴らしい原稿が集まっているのですが、一部の執筆者にそれぞれやむを得ない御事情が発生して、その対応で時間をとられております。担当の編集者の方にも御尽力をお願いして早期刊行を目指す所存です。すでにお原稿をお送り下さった先生方には、しばしお待たせすることになり、恐縮ですが、この場を借りて御猶予をお願い申し上げる次第です。
 平雅行先生御担当の第三巻「公武権力の変容と仏教界」、これも楽しみです。私も「宇都宮頼綱」を書かせて頂きました。

 出版に関しては、単著の執筆の御依頼を頂きながら長くお待たせしてしまっているものがございます。申し訳ありません。この数年、矜持をもって本を著すことが難しいような状況が急速に進行したことでモチベーションを減退させたという言い訳もあるのですが、やはり私自身の怠惰と耄碌が主因に違いありません。ただ、本のテーマに則した、執筆の前提になる研究は進めております。勝手な言いぐさで恐縮ですが、編集者の御矜持にお応えできるほどの内容を期したいと存じております。
 ちなみに、もう15年もお待たせしてしまい、その間に元木先生や美川先生の御著書が刊行された、某ブックスの原稿はすでに8割方の完成を見ております。

 ゼミも私自身の研究も多くの方々に支えられていることを痛切に実感いたしております。本年もまた、どうぞ宜しくお願い申し上げる次第です。

ゼミ、この一年

No.9810

 <1月> 大河ドラマ「平清盛」放送開始にともない、掲示板へのアクセス急増
 <3月> 4回生卒業。全員、希望通りの就職(都市銀行など)&進学
      『紫苑』第10号刊行(編集の仕事を終えた山本編集長は吉田山の麓へ! 後任に池嶋さん)
  <6月>  研究所公開講座。講師の服藤先生・元木先生らとの懇談会・懇親会
      六波羅・法住寺殿周辺の史跡散歩
 <7月> 京都文博主催の歴史散歩に参加
 <9月> 学習院大学兵藤ゼミと六波羅・法住寺殿周辺の史跡散歩 
      1・3回生、個人参加の形で宮島・岩国旅行(幹事滝沢さんの勲功!)
 <10月> 日野・醍醐方面史跡散歩
 <11月> 伏見区主催の歴史散歩(もちもちぃんウォーク)に参加

 以上、ざっと思い出した範囲で。
 ビッグニュースと言えば、このゼミで知り合いになった同士の初の御結婚。そして、古参メンバーでお母さんになった人が増えたことでしょうか。
 古参メンバーは、続々と研究・教育職に就任。私の古巣に就職した方もおられます。
 メンバーからは、すでに博士号取得者が一名出ていますが、来年も予定あり。

 > これから論文を書く学部生諸姉 
 数ヶ月前、ようやく卒論を書き始めた学生さんから、こんなメッセージをいただきました。
 「論文を書くのを職業にしてる先生方を尊敬! 始めたけど、ぜんぜん書けませ~ん」
御参考までに。

 > 師範代の岩田君をはじめ、ゼミメンバー・関係者の皆さん
 この一年、ありがとうございました。なんとか乗り切れたようです。
 一年の思い出や反省など・・・、何かありましたらお願いいたします。  
編集:2012/12/30(Sun) 16:05

ゼミの一年

No.9811

 本年も多くの皆様に支えられながら、ゼミの活動を行うことができました。ゼミに関わっていただきました方々に御礼申し上げます。
 毎週開催中の『吾妻鏡』も、山本陽一郎さんたちが始められてから来年で十年となります。これからも、参加してくださる方がおられる限りは続けていければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 新年も皆様にとって実り多く幸溢れる年となりますよう、お祈り申し上げながら、新年の『吾妻鏡』のご案内です。

 日時:2013年1月8日(火)午後3時頃~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:元久二年(1205)十一月十五日・二十日、十二月二日・二十四日の各条
     元久三年(建永元年、1206)正月十二日・二十七日、二月四日・二十日・二十二日、三月十二日・十三日、五月六日、六月十六日・二十一日、七月一日・三日、十月二十日・二十四日、十一月十八日・二十日、十二月二十三日の各条

 2013年1月は、8日・15日・22日に開催予定です。

 火曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、新年から何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。

今年の大河ドラマに拘りをもつ方へ

No.9813

 平清盛と時代背景については、最新の研究成果に基づきながら、分かりやすく叙述してある、この本を責任を持ってお薦めします。 ↓
 岩田 慎平『平清盛』(新人物往来社、¥ 1,575 )

 別の場所でも、この本の著者は実にいいことを「呟いて」います。ぜひ、その場所を探してお読みになってみてください。

帰省中の皆さんへ、自宅に寄生中の私より

No.9809

 美川先生が大河ドラマについて書き込んで下さって以来、アクセスが急増しているようです。それだけに、大河ドラマの影響力は大きいということでしょう。

 それにしても、山田先生が年末に至って快活な書き込みをして下さり、本当にうれしく思っています。山田先生には、お身体に負担をかけない形で、これからも太く長い御活躍をお願いいたします。

 一部を視聴した限りでの感想ですが、私も山田先生の奥様の評は当を得ていると思います。昨日(27日)の朝日新聞朝刊のオピニオン欄に斎藤環氏が、日本がヤンキー社会化していることを述べておられましたが、何か今年の大河ドラマの製作姿勢と一脈通じるものがあるのではないかという感想を持ちました。大河ドラマのみならず、出版界における歴史ものの現状も然りだと思います。 

 すでに帰省されている方も多いと思います。長野や新潟は雪で大変でしょう。おばあちゃんからお小遣いを頂いたという人もおられますね。
 私は、後回しにしていた原稿の執筆や昨日受け取った『研究紀要』の再校中。年末年始はまとまった時間がとれるので、引き籠もり状態が続きます。また体重が増えてしまいそうですが、お正月を病院で迎えたこともありますから、それに比べれば・・・です。

清盛最終回

美川圭
No.9804

 何ヶ月ぶりに見ました。無理ですね。清盛の死から、壇の浦、義経の死、なんでもかんでもぶちこんで、45分、時間軸も何もまったくぐちゃぐちゃ。しかも、生き霊やら死霊やらで、空間的にもごたごた。この1年間の低空飛行を象徴する最後でした。建久元年の頼朝上洛で会った後白河法皇の貧相なこと。がっかりです。頼朝の死までやるのかな、どう死ぬのかな、とちょっと期待していたのですが(平家一門の怨霊に八つ裂きになるとか)。これも何もなく。はちゃめちゃもはじけず、あえなくしぼみました。低視聴率に、お金もなくなり、やる気もうせたのでしょうか。合掌。

 それにしても、その15分後からはじまったNHKスペシャル「日本国債」は怖かった。現実はこわい。
編集:2012/12/23(Sun) 22:17

「見るべき程のことは見つ」ですね。

No.9805

 えっ!、一回の放送で文治五年(1189)までやってしまったのですか?
 ほとんど『中世の人物』第2巻の範囲をカバーしていますね。すごい。
 「見るべき程のことは見つ」ではなく、結局、「見るべき程のものにあらず」でしたか。残念。

 ところで、先般、大阪歴史学会の『ヒストリア』第235号が出ましたが、これに佐伯智広君による樋口健太郎著『中世摂関家の家と権力』にたいする大部の書評が掲載されています。一読をお勧めします。
 ちなみに、広島の尻池さん、どうぞよろしくお願い致します。

 ☆ 奈良県立図書情報館の千田稔先生より、新刊の御高著『古事記の奈良大和路』(東方出版)を御恵送頂きました。
 千田先生にあつく御礼を申し上げます。
編集:2012/12/24(Mon) 14:48

専修無視できず仕舞

古谷みはる
No.9806

こんにちは、6月の公開講座の時にお邪魔しました一介の歴史好きです。その節はお世話になりました。
と、いいますか、いつもこちらの掲示板で論文やら出版物やらの情報をいつもこっそり頂いております。ありがとうございます。

大河ドラマ「平清盛」
好きな時代、好きな人物を良いように嬲られてポイされ、実にやるせない気持ちです。
序盤早々、激昂して視聴しなくなってはいたのですが
「放念、放念」
と思っていても「あんなものが大河ドラマとして!地上波で!!流されている!!!」という怒りは結局一年間頭にこびりついたままでした。
美川先生の「ぶった斬り」でこっそり溜飲を下げていたのですけれど、途中棄権されたのが残念でした…いや、見たくなくなるお気持ちはよくわかります…
時代考証の責任って何なんだろうと思いつつ、髙橋昌明氏の講演など聞いてみたりしましたが、専門と娯楽の乖離を思い知らされたといいますか…
もういっぽうのお方はネット上で「東大の試験問題にしても遜色ない出来」と発言されるなど、終始出来を褒め称えておいででした。
それは「関係者」としてせめて盛り上げようという努力なのか、それとも本気でそう思っているのか(嘆息)。

信憑性について「?」のある数値だとわかっていてもいい、せめて低視聴率であれと怨念めいた思いを抱いていましたが、最終回もめでたく(?)関東ヒトケタ達成、年間平均視聴率も歴代のなかでぶっちぎりのワースト達成となったようで、これで少しは楽になれるかな…と思っています。

「馴染みがない時代だから」という擁護がありますが、面白くない時代などないと思います。
それをエンタメとして上手いことつくれない制作側に、今年の責任はあるということを、NHKは思い知ってほしいです。切に、切に。

突然現れての長文、失礼しました。
清文堂の本の発売、楽しみにしております。

ドラマとしての出来の問題

美川圭
No.9807

古谷さん。途中棄権して申し訳ありませんでした。

とにかく、自分のプロ意識に欠けるというか、この大河を見ていると、あまりに機嫌が悪くなるので、家族に視聴を止められたというのが真相です。嫌なものを見なくてもいいでしょ。テレビぐらい楽しく見てよ。家を暗くしないで、ということです。娯楽作品のはずなのですから、もっともな意見です。

いちおう、ほとんどビデオに録ってありますので、ときどき家族の不在のときに見ようとしたのですが、意欲がわきませんでした。

新聞などでは、低視聴率の理由を、登場人物が多すぎてわかりにくい、画面が汚かった、などとされていますが、疑問符ですね。登場人物が多くても、ドラマなんですから、脚本の段階で人物を統合するとか、いろいろやりかたはあるのです。画面が汚いっていうけれど、黒澤の時代劇だって綺麗とはいえませんが、とくに白黒時代のものはとにかくおもしろい。黒澤映画と比較しても、そりゃ脚本家のレベルがどうしようもないとはわかっていますが、とにかく、おもしろいドラマにできなかったということにつきます。

平安末期、つまらない時代のはずがないでしょう。

『平家物語』 めちゃ、おもしろい。
編集:2012/12/25(Tue) 16:08

ウチの奥様の大河ドラマ評

山田邦和
No.9808

みなさまお久しぶりです。

大河ドラマ「平清盛」について、インターネットなどいろいろなところでさまざまな意見が飛び交っていますが、私が一番得心したのは、実はウチの奥様がポツリと漏らした一言です。
「なんか、少年チャンピオンかなんかに出てくる少年漫画(劇画)みたい・・・」

なるほど。その通りだと思います。主人公が何かというと走り出して、「武士の世を造るのじゃ!」「王家の犬から脱却するのだ!」「面白う生きるのだ!」などと空に向かって絶叫する。重要な登場人物はただひたすらに「遊びを〜 せんとや〜 生まれ〜 けむ〜」と呟くのと、双六遊びばかりをやっており、良く言えばそれがトレードマーク、悪く言えばなんたらの一つ覚え。登場人物といえば現実離れした人ばかりな上に、人物の性格がコロコロ変わって前後矛盾するのに、ストーリーはスラスラと流れる。
こうした点は、まさに(できの悪い)少年漫画によく見られる特徴です。もしかして今回の「平清盛」、これを原作にして少年向けの劇画にすれば、なかなか面白いものになったかもしれませんね。

それにしても、たった一言でこのドラマの本質を見抜くウチの奥様、なかなかの慧眼の持ち主です。感服しました。

 もっと早く書き込んでほしかった!

No.9812

 こんなメッセージが届きました。 

 「なんで皆さん、清盛が終わった後に書き込むのでしょうか。もっと早く書き込んでほしかった。嘘だろう、変だなと思いながら視聴しているほうも辛いのである。」

 企業などの経理関係のお仕事をされている方からです。

聚楽第か聚楽亭か?

No.9803

 明日、現地説明会があるようですが、↓
    http://www.kyotofu-maibun.or.jp/event/2012/gensetu/h24jyurakudai2.htm

 聚楽第なのか聚楽亭なのか、御質問を頂きました。第と亭の表記の問題については、下記の論文を御覧下さい。

 野口孝子「「殿」とよぶ心性-平安貴族社会の住宅表記-」(『日本歴史』762号,2011年11月)

 源義光と承久の乱に関する画期的な研究

No.9802

 第一線で活躍されている研究者の方たちとの会合の席で人名を混同して恥をかくなど、おのれの耄碌を実感する毎日を過ごしておりますが、なにしろ困るのは、休んでも、なかなか疲労が回復しないことです。これから人並みに活動するには、人並み以上に休む時間を確保せざるを得ないと思います。
 「休む」という形態は、人によって様々だと思いますが、私は何しろ家に戻って安静にしているのが一番のようです。いろいろ大変でしたが、一晩休めば翌日は全力で動けた、あの若い時分の体調がいとおしく思い出されます。
 若さと健康こそ最大の財産。元気な若者は落ち込むことなかれ。

 ☆ 当ゼミの古参メンバーで、草創期における活況の立役者のお一人である田中(丸山)裕紀さんから、御高論「『延慶本平家物語』における八条院」収録の関西軍記物語研究会編『軍記物語の窓 第四集』(和泉書院)を御恵送頂きました。
 だいぶ前に頂いたのですが、例によって???信じがたいような一騒動がありまして(ゼミにまつわるエピソードとして長く語り伝えられそうです)御紹介が遅れてしまいました。
 田中さんにあつく御礼を申し上げます。

 そこで、思い出しましたが、田中さんと出身大学が同じで、やはり草創期の活況に貢献してくれた長村祥知君から御高論「〈承久の乱〉像の変容-『承久記』の変容と討幕像の展開-」(『文化史学』68)を頂きました。本欄では、手渡しで頂いた研究成果の御紹介は原則としてしない方針なのですが、この論文は中世の政治史や政治思想史の研究者のみならず、国文学を研究されている方にも是非読んで頂きたいので、あえて書かせて頂きました。
 いずれにしても、承久の乱および『承久記』研究における画期的成果であることは疑いありません。

  画期的成果といえば、これも同様。
 ☆ 明治大学大学院(DC)生の小野真嗣さんから、御高論「後三年合戦と源義光-河内源氏の東国進出を中心として-」(『駿台史学』146)を御恵送頂きました。
 海道(常陸)平氏と清原氏との関係を前提に、源義光の北関東進出について極めて説得力のある論を展開された御研究です。私がかつて紹介した中条家文書「桓武平氏諸流系図」による知見が、ここまで発展してきたことには喜びを感じざるを得ません。
 東国における源氏系武士団の研究に大きな進展をもたらした成果だと思います。
 小野さんに、あつく御礼を申し上げます。

 最近の東国武士の研究は北関東が盛んなようですね。

『全訳読解古語辞典【第四版】』

No.9801

 今日は21日。高校教員の時代は給料日でした。当時は印鑑を持って事務室に行き、手渡しで受け取ったものです。

 岩田君が告知して下さったように、新年のゼミは授業再開の前日の8日から開始する予定です。『玉葉』の講読会ですが、一月中は21日しか出来ませんね。
 春休みの予定なども考えておいて下さい。

 ☆ かつて当ゼミで活躍された方や関係者で、出版界に進出された方はすでに何人もおられますが、その一人である雨野弥生さんから、出版社の編集者として初めて一冊を担当された『全訳読解古語辞典【第四版】』([編者代表]鈴木一雄・外山映次[編集幹事]伊藤博・小池清治 三省堂)を御恵送頂きました。
 ややもすると「語学」面に重きが置かれがちな古語辞典の中では「文学と歴史双方からの当時的理解」を最大の特色とした学習用辞書で、読み物としても楽しめる内容だと思います。高校で教鞭を執っておられる方は、書店などでぜひお手にとってみられるとよいでしょう。
 そういえば、出身地の大学院に進学された方の中に、教科書の出版で有名な会社に就職が決まった方もいらっしゃいましたね。これからの仕事のお手本になるのではないでしょうか。
 雨野さんに、あつく御礼を申し上げます。

 学問研究・教育の最後の砦

No.9799

 昨日で、今年のゼミの通常活動は全て終了しました。史料講読では、3回生はだいぶ読めるようになって来たと思います。
 昔、一語一語たどたどしく読んでいた人が、今や院生となって学部生を指導しているのを見ると、時の流れとか、文化の継承、さらには歴史そのもの、そんな途方もないことまで考えが及んでしまいます。
 
 『紫苑』11号の原稿も提出されました。特別な事情でしばし提出を猶予されている方は、是非、年内の完成を目指してください。なによりも、編集長さんに負担のかからないように、宜しくお願いいたします。

 昨日は研究発表会でしたが、やはりやってよかったと思います。どのくらいの理解で勉強を進めているのか、よく分かりました。普段の話だけでは分かりませんね。ちゃんと、報告してもらってよかったと思います。いろいろ問題点があぶり出されました。これにどう対応してくれるのか、そこが評価の分かれ目です。
 なお、藪本君には、お仕事の帰りにお立ちより下さって、貴重なコメント・アドバイスを頂き、ほんとうに感謝です。ありがとうございました。

 ところで、今朝の京都新聞に次のような記事がありました。
   http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20121219000016
  関連する情報も紹介させて頂きます。
       http://forliberty.s501.xrea.com/

 日本史の研究・教育にも極めて重い影響を及ぼす事態。注視すべき大問題だと考えます。
編集:2012/12/19(Wed) 14:17

行く『吾妻鏡』、来る『吾妻鏡』

No.9800

 研究発表会でご報告頂いた滝沢さん、池嶋さん、おつかれさまでした。
 年内の『吾妻鏡』の時間は終了しました。次回は2013年です。

 日時:2013年1月8日(火)午後3時頃~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:元久二年(1205)十一月十五日・二十日、十二月二日・二十四日の各条
     元久三年(建永元年、1206)正月十二日・二十七日、二月四日・二十日・二十二日、三月十二日・十三日、五月六日、六月十六日・二十一日、七月一日・三日、十月二十日・二十四日、十一月十八日・二十日、十二月二十三日の各条

 2013年1月は、8日・15日・22日に開催予定です。

 火曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、新年から何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。