岩田慎平著『平清盛』を推薦します。
No.9395
昨年末、『京都民報』という地方紙の読書欄に、岩田君の著書『乱世に挑戦した男 平清盛』(新人物往来社)について書かせて頂く機会がありました。その原稿をベースに、ここでもう一度、この本を紹介させて頂きたいと思います。
来年度、本学やキャンパスプラザで、私の講義を受講しようとされる方には、ぜひ読んでおいてほしい一冊です。
+ + + + + + + + + + +
日本史教育の衰退した今日、毎年NHKで放送される大河ドラマはその市民向け教科書のような役割をになっている。高視聴率をあてこんで、前年の秋頃から、ドラマのテーマに即した内容の書籍が続々と出版される。しかし、その多くは歴史作家と呼ばれるような人たちによって書かれたものなので、歴史の骨格そのものは分かりやすいステレオタイプの旧説が再生産されることになる。
歴史への関心や理解ということについて、一般市民と研究者との間に深い断絶が生じていることは長く指摘されている。そんな状況に一石を投じるかのように本書は出版された。
著者の岩田慎平氏は、京都教育大学で教育の本質を考える中で、日本中世史の研究に自らの方向を見定めた。大学院では平氏政権の研究者として令名高い田中文英氏に師事し、現在は院政期政治史研究の第一人者である元木泰雄氏の主宰される研究会で、その謦咳に触れている。
したがって、本書は最新・最高の研究成果を反芻した上に、彼自身の視点を織り込み、しかも、一般の読者に対する心配りが籠められた内容であり、源平内乱期の政治史に関する入門書としても最適な本といえる。大河ドラマとの関わりで刊行されたにせよ、モチベーションの高い若い研究者によってこそ世に出すことの出来た出色の本である。
「歴史学の世界で、今、平清盛と彼を取り巻く時代がどう評価されているのだろうか?」そんな疑問を持っている方たちに今、私が一番お勧めしたい本なのである。
営業上の要請なのであろう。装幀やタイトル・字体などが通俗的なために、書店では「歴史読み物」のコーナーに置かれざるを得ないが、わかりやすい筆致ながら、現在の研究水準を一般に還元するに足るハイレベルな内容である。
これからこの時代の歴史を勉強していこうと考えている、とくに若い方たちに是非とも一読をお勧めしたいと思う。
来年度、本学やキャンパスプラザで、私の講義を受講しようとされる方には、ぜひ読んでおいてほしい一冊です。
+ + + + + + + + + + +
日本史教育の衰退した今日、毎年NHKで放送される大河ドラマはその市民向け教科書のような役割をになっている。高視聴率をあてこんで、前年の秋頃から、ドラマのテーマに即した内容の書籍が続々と出版される。しかし、その多くは歴史作家と呼ばれるような人たちによって書かれたものなので、歴史の骨格そのものは分かりやすいステレオタイプの旧説が再生産されることになる。
歴史への関心や理解ということについて、一般市民と研究者との間に深い断絶が生じていることは長く指摘されている。そんな状況に一石を投じるかのように本書は出版された。
著者の岩田慎平氏は、京都教育大学で教育の本質を考える中で、日本中世史の研究に自らの方向を見定めた。大学院では平氏政権の研究者として令名高い田中文英氏に師事し、現在は院政期政治史研究の第一人者である元木泰雄氏の主宰される研究会で、その謦咳に触れている。
したがって、本書は最新・最高の研究成果を反芻した上に、彼自身の視点を織り込み、しかも、一般の読者に対する心配りが籠められた内容であり、源平内乱期の政治史に関する入門書としても最適な本といえる。大河ドラマとの関わりで刊行されたにせよ、モチベーションの高い若い研究者によってこそ世に出すことの出来た出色の本である。
「歴史学の世界で、今、平清盛と彼を取り巻く時代がどう評価されているのだろうか?」そんな疑問を持っている方たちに今、私が一番お勧めしたい本なのである。
営業上の要請なのであろう。装幀やタイトル・字体などが通俗的なために、書店では「歴史読み物」のコーナーに置かれざるを得ないが、わかりやすい筆致ながら、現在の研究水準を一般に還元するに足るハイレベルな内容である。
これからこの時代の歴史を勉強していこうと考えている、とくに若い方たちに是非とも一読をお勧めしたいと思う。