業鏡高懸 三十七年 一槌打砕 大道坦然

No.8150

 昨日の『吾妻鏡』講読会。事務の方から最中など、美味しい和菓子の差し入れを頂いたのですが(欠席された鈴木夫人は惜しいことを致しましたね)、私はペットボトルのお茶を飲みながら山本さんのお土産の蛸せんべいをバリバリと食べてばかりおりました。一向に疲れはとれませんが、こういった種類の食欲はあるのです。寅さん風に言えば「ろくなもんじゃねえ」。

 ところで、その『吾妻鏡』ですが、「北条時頼卒」のあたりを読みました。それこそ、「天人相関説」に基づく文言が多く、昨日拝受した下村論文評にも話が及びました(こちらの若手は、東京の方々とは、捉え方がだいぶ異なるのではないかと思います)。
 この辺りの記事には二階堂氏も頻出。質問を発すると、「二階堂氏に関する生き字引」のような山本さんがスラスラと答えてくれるので爽快でした。

 帰宅は車でしたので、疲れないで済みました。しかし、そのためには、朝、駐車場がいっぱいにならないうちに大学に到着する必要があり、早起きを要します。しかし、7時台に大学に着くと、さすがに事務仕事や授業の準備が捗ります。
 恩師の貫先生も、学部長をされていた頃、早朝出勤していたことを思い出します。先生は横須賀線のグリーン車を利用しておられ、帰りは地下鉄で表参道から東京駅に出られたので、よく御一緒させていただきました。考えてみると、そんなときの会話の遣り取りが、結構、私にとって、先生の御研究の血肉化に役立っているように思えます。

 本日は会議の前に、東北地方のある自治体史のコラム欄の原稿を送信。目下、元木先生の御研究に学びながら、源満仲の周辺に関する小文を執筆中です。体調が回復すれば、すぐに片付くと思うのですが。
 イタリア旅行についても、記憶がのこっている間に一筆したためておきたいのでありますが、なかなか・・・。
 
 なお、明日は土曜日ですが、『小右記』講読会はありません。

 ☆ 千田稔先生より、新刊の御高著『こまやかな文明・日本』(NTT出版)を御恵送頂きました。
 千田先生に、あつく御礼を申し上げます。

期待の新人はあらわれるか?

No.8148

 元木先生、お知らせ(>>No.8147)をどうもありがとうございました。
 >>No.8139の公募情報も、具体的にはこのことだったようです。応募をお考えの方は確認して下さい。

 さて、昨日の授業ですが、Ⅲ講時の豊田さんの報告では、京都の知られざる観光寺院が紹介され、普段とは異なる観点から、もう一度足下を見直すきっかけになりそうです。レポートでは「分析」と「考察」の成果を期待してます。
 次回は遠田さんが、人間行動学をテーマに報告されるとのこと。視点は心理学のようです。

 Ⅴ講時の講義は、相変わらず脱線気味でしたが、前回の総括も含めて、話すべきことは時間内に完了することが出来たと思います。このクラスは例年になく講義後に質問に来る受講生が多く、講義のし甲斐を感じます。さすがに、史学科の学生さんが多いのですが、また、ゼミで活躍してくれるような「人材」があらわれることを期待しています。

 土曜日の研究発表の際、藪本君などに教えて頂いた関係文献を調べてみたところ、面白い情報が得られました。当面いろいろ書かなければならないものがあるのですが、論文化はこれを優先しようかと考えています。

 しかし、今困っているのは月曜日の講話です。一応テーマは提出したのですが、中味は煮詰まらない。なんとしても「よい話をしなければならない」というのが前提ですから。

 体調の方、季節の変わり目であるためか、一寸(ちょっと)したことで疲れます。しばらく安静にしてでもいればよいのでしょうが、現実は、そうはさせてはくれません。とはいえ、運動が不足するとたちどころにウェストの周りに脂肪が増えて参りますから、これで「体力がない」などとは何方も思ってはくれますまい。

【追記】 ☆ 早稲田大学の下村周太郎先生より、御高論「鎌倉幕府と天人相関説-中世国家論の観点から-」(『史観』第164冊)を御恵送頂きました。
 下村先生に、あつく御礼を申し上げます。

初夏の『吾妻鏡』

No.8149

 7年ほど前に読み始めた頃は、まだ影も形もなかった(?)北条時頼の死亡記事を読むようなところまで進んで参りました。
 そんな木曜日の『吾妻鏡』、次回のご案内です。

 日時:2011年5月26日(木)午後3時~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:弘長三年(1263年)十一月二十三日・二十四日、十二月九日・十日・十一日・十六日・二十四日・二十八日・二十九日の各条
    文永二年(1265年)正月一日・五日・六日、二月九日、三月四日・五日・七日、四月二十五日、閏四月二十日、五月二日・三日・二十三日、六月三日・十日・十一日・十三日・二十三日、七月四日・十日・十六日・十八日、八月十三日・十六日、九月二十一日、十月二日・十八日・二十五日、十一月十三日・十六日・十七日・十九日・二十日、十二月五日・十八日の各条
    文永三年(1266年)正月二日・十三日・二十五日、二月一日・十日・二十日、三月五日・六日・十一日・十三日・二十七日・二十八日・二十九日、四月七日・十五日・二十一日、六月五日・十九日・二十日・二十三日・二十四日・二十六日、七月一日・三日・四日・二十日の各条

 今年度から木曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。

京都府立丹後郷土資料館の公募

元木泰雄
No.8147

 宮津市にあります京都府立丹後郷土資料館で、専門職員の公募が行われています。
 歴史学、または美術史専攻で、学芸員資格を持ち、1970年4月以降のお生まれの方、ということが条件になっています。
 資料館は丹後国分寺の後にあり、丹後地域の歴史研究、古文書管理の中心機関です。
 関心のある方は京都府教育委員会のホームページをご覧ください。
http://www.pref.kyoto.jp/news/recruitment/2011/5/1304665392922.html

 14日は久しぶりの関東。

No.8145

 山手線に乗ると節電のために冷房を入れないとのアナウンスがあり、各駅とも動いていないエスカレーターが多い。震災が市民生活に影響を与え続けていることを実感(とはいえ、仙台からお出でになった佐倉先生によれば、東京駅に降り立ったとき、別の国に来たような印象をうけられたとのこと)。そのうえ、放射性物質の問題もある。とくに、乳幼児や妊娠した女性のいる家庭はとても心配なことだと思う。少子化に拍車のかかることは必定。今回の震災と原発の事件は100年単位で日本社会に深刻な影響を与えることになるだろう。
 目に見えるところでは、万年スーツ姿だったビジネスマンが、夏場はアロハシャツにジーンズの短パンなどということになるのかも知れない。着るものが変われば精神構造にも変化をきたす。

 目白駅に着くと、ホームに長村君の姿あり。会場には伊藤明日香さん、藪本君も。さすがに、今回は丸山(田中)さんは来られなかったか。それにしても、兵藤さんの「檄文」の威力は以仁王令旨なみに強いものがあったようで、たくさんの研究者がお見えになり、私の用意したレジュメは不足し、学習院関係者の皆様に御迷惑をお掛けしてしまいました。

 兵藤さんの発表は『太平記』の諸本についてほとんど無知であった私にとっては蒙を啓くものでした。私の報告は、テレビの2時間ドラマの歴史考古学板みたいな話だが、幸いにも「説得力のある話」などという望外の評価を頂くなど、(表面的には)好評だったようで安堵。本当のところは、司会を担当してくれた長村君にうかがって下さい。
 なお、藤本正行先生からは大鎧や考古学的な知見について補足説明をして頂きました。説得力云々は、そのおかげかも知れません。

 特筆すべきは久方ぶりに石浜さんにお目にかかれたこと。急に思いついた企画案について御検討頂いています。出版関係といえば、先日、せっかく研究室を訪ねて頂いたのにお目にかかれなかった雨野さんにもお会いできました。休憩時間や懇親会で、久方ぶりの神大市澤先生、6月の公開講座にお出で頂く坂井先生や尊敬する樋口州男先生、新年度から校長になられた錦先生、大学の後輩にあたる清水先生、四国からお見えの会田先生らと歓談できたのは幸いでした。また、若い方々から、日頃の研究成果をたくさん頂きました。ありがとうございました。

 それにしても、このような研究会に出ていつも思うことは、私は歴史学の一体何をやっているのだろうか(今の歴史学の得体がつかめない)ということ。分からないし、分かってもらえないし、のような感覚が常にのこります。学界四面楚歌のような気分は、私の性格の悪さに起因するものか。

 聞くところによると、巷で人気のある歴史ドラマに関連するテーマを研究対象にしている研究者に対して、一部のマスコミ関係者が実に非礼な対応をとるケースが見られるとのこと。それに近い経験は私もございますが、「インテリゲンチャなどという言葉は死語になってしまったが、大学生が増加し、そのすべてがインテリ化したのでは決してない。かえって知識人が絶滅してしまった」という御時世ですから、まぁ仕方のないことかも知れません。
 ちなみに、この一節は、上横手雅敬先生の『日本史の快楽』(講談社)からの引用。この本は、往復の新幹線の中で、時を忘れて拝読(再々読)させて頂きました。私の武士論など一刀両断。痛快無類の好著です。

 さて、明日の授業。Ⅲ講時の基礎演習Ⅰは、豊田さんの担当で、テーマは「京都のお寺とパワースポット」。山田知佐子さんや愛知の野口洋平君に来て頂きたいようなお話になりそうです。コメンテーター歓迎。
 Ⅴ講時の基礎・教養科目は日本中世の女性の2回目。離婚や遊女などをテーマにお話ししたいと思います。前回配付のプリントも持参のこと。

【追記】☆ 横須賀市史の専門委員である山田邦明先生・近藤好和先生・高橋秀樹先生・真鍋淳哉先生の御高配により、『新横須賀市史 資料編 古代・中世補遺』を御恵送頂きました。
 先生方に、あつく御礼を申し上げます。

「出る釘になろう」&『お江カンタービレ』

No.8143

 出ない釘は打ってもらえないからである。
 今日は、私の書いた論文の中に引いた史料に登場する人名については書状で、また、この掲示板に紹介した、ある研究者の所説に対してはE・メールで、誤りの可能性を御教示頂くことがありました。こういうとき、外に発表することの大切さを思い知るわけです。そこから進歩が始まる。
 というわけで、何ごとも、引っ込んでいるのは良くありません。
 お若い皆さん方、耄碌ジイサンがお節介を申すようですが、PCを捨てて街に出よう。それでも引き籠もるのなら、ゲームはやめて、紙の本で古典を読もう。
 大学に「白熱教室」ばかりを求めてはいけません。

 >岩田君 昨日は給油の御指南、ありがとうございました。あれも、私にとっては「街に出よう」の一環だったと思います。しかし、このところガソリンは高いですね。

 【今日の言葉】
 ①「のろまの三寸」→襖などをきちんと閉めないで入ってきたり、出て行ってしまう緊張感の足りない私のような人間を諭すときに使う言葉:私の祖父(1901~1968)が常々口にしていたこの言葉を急に思い出しました。

 ②「お江カンタービレ」→あるテレビ番組のタイトルに対して、私の敬愛する、優れた歴史学者による改名案である。

☆ 駒澤大学の高橋秀栄先生より、御高論「平安・鎌倉時代の天台僧-金沢文庫の聖教から拾い集めた要文記事-」(『駒澤大学佛教學部論集』40)を御恵送頂きました。
 高橋先生に、あつく御礼を申し上げます。

本年度、公開講座の御案内

No.8141

    2011年度
 ◇京都女子大学宗教・文化研究所公開講座◇
 「東山から発信する京都の歴史と文化⑬ 『鎌倉時代の公武権力と文化・宗教』」

 開催日時:6月25日(土)午後1時~5時
 会場:京都女子大学J校舎525教室
      市バス 馬町下車徒歩5分
      プリンセスラインバス 京都女子大学前下車徒歩5分

 講師: 平 雅行 (日本中世史、古代中世仏教史)
 演題: 「鎌倉の顕密仏教と幕府」

 講師: 坂井孝一 (日本中世史、中世政治史・文化史)
 演題: 「源実朝と京都―和歌を通して考える朝幕関係―」

 司会: 野口 実 本学宗教・文化研究所教授
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  無料、申し込み不要 
  変更などがありましたら、この掲示板にて告知致します。

『吾妻鏡』もやってます-次回の『吾妻鏡』-

No.8142

 次回の木曜日の『吾妻鏡』のご案内です。

 日時:2011年5月19日(木)午後3時~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:弘長三年(1263年)九月十二日・十三日・二十六日、十月八日・十日・十四日・十七日・二十五日・二十八日、十一月二日・八日・九日・十三日・十六日・十九日・二十二日・二十三日・二十四日、十二月九日・十日・十一日・十六日・二十四日・二十八日・二十九日の各条

 「木曜日の『吾妻鏡』」5月は19(木)、26(木)と開催予定です。

 今年度から木曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、春から何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。

公募情報

No.8139

 京都府教育委員会で文化財保護技師(歴史・美術工芸品等)を公募しています。
 採用選考など詳細は↓
  http://www.pref.kyoto.jp/news/recruitment/2011/5/1304665392922.html

大河ドラマ「清盛」

山田邦和(同志社女子大学)
No.8137

平清盛(松山ケンイチ)
平忠盛(中井貴一)
源為義(小日向文世)
源義朝(玉木宏)
後白河天皇(松田翔太)
西行(藤木直人)
鳥羽上皇(三上博史)
崇徳上皇(ARATA)
藤原忠実(國村隼)
藤原頼長(山本耕史)
信西(阿部サダヲ)
平家貞(中村梅雀)
平盛国(上川隆也)
伊藤忠清(藤本隆宏)
平家盛(大東俊介)

常磐御前???(武井咲???)

Re: 大河ドラマ「清盛」

山田邦和(同志社女子大学)
No.8138

(↑ すみません。本文がないままにキーを押してしまいました)

みなさまこんばんは。
来年度のNHK大河ドラマ「清盛」の男性配役が発表されましたね。
小日向文世、國村隼といった実力派が配されているのは結構ですね。
ただ、後白河、崇徳、信西などの俳優さんはどんな方なのでしょうか、あまりよく知りません。

女性陣は今月末ころに発表になるようです。私としては、あいかわらず建春門院滋子がどなたになるのか、気になります。

なぞの建春門院陵墓の存在を解明!

No.8140

 主要登場人物。高橋先生の御意見がかなり反映されたものになっているのではないかとお見受けします。
 藤原信頼・同邦綱、という、とても重要な人物2人が抜けていますね。なぜ、どうして?

 女性では藤原宗子と平時子の位置づけが重要だと思います。

 これをきっかけに、山田先生が推定された建春門院葬地(※)の探査が行われたら、ありがたいですね。
 NHKもスペシャル番組が制作できるのではないでしょうか。

 ※ 野口実・山田邦和「法住寺殿の城郭機能と域内の陵墓について」(京都女子大学宗教・文化研究所『研究紀要』第16号、2003年)

「ホスピタリティ」ねえ?

No.8136

 昨日のⅢ講時「基礎演習Ⅰ」の津田さんの報告は、事前に東京ディズニーランドで販売しているキャラクター商品を研究室に運び入れておく等、なかなか準備のしっかりしたものであったと思います。私自身もホスピタリティという観点からマネジメントの在り方について、いろいろ勉強させて貰いました。しかし、フランス人には不評なものが、どうして日本ではいとも易々と受け容れられてしまうものなのか。このあたり、アメリカの対日外交戦略にも活かされているのではないのかと考えてしまいました。それにしても、今、市場社会で活躍している方たちが、どんな発想で動いているのかが分かりました。

 Ⅴ講時の「基礎・教養科目」は、例によって脱線を重ねて、若干尻切れとんぼで終わりました。どうも、授業が漫談じみた選挙演説のようになってしまって、正直なところ講義を終えると自己嫌悪の感情に襲われます。若い頃、自分が不快に思っていた老人の姿にどんどん近づいていくようです。しかし、まぁ、「藤原宗子」さんのことなど、伝えたいことは伝えられたと思います。でも、情けないことに、身体はとても疲れました。

 ☆ 愛知学院大学の福島金治先生より、御高論「尾張国大須真福寺聖教類にみる四国・九州への聖教伝播」収録の科研費報告書『御影石製中世石造物の分布調査とその学際的研究』(研究代表者 市村高男)を御恵送頂きました。
 福島先生に、あつく御礼を申し上げます。

長村祥知「源行家の軌跡」

No.8135

 史学・国文を問わず、「これを読まずして治承・寿永内乱は語れない」と評判になっている表題の論文のコピー、研究室に用意致しました。
 必要な方は史料講読会の時に、お申し出下さい。

 なお、季刊『古代文化』第63巻第1号(2011年6月末 刊行予定)には、長村君の「木曽義仲の畿内近国支配と王朝権威」という論文が巻頭に掲載されます。
    http://kodaigaku.org/kodaibunka/new_vol.html

 ちなみに、「源範頼の軌跡」という論文のコピーもあるのですが、これは要りませんね?