『古代文化』第58巻第Ⅱ号落手

No.5386

 本日(22日)は、御所の辰巳に位置する美味しい和食のお店で忘年会。まさに現在の日本中世政治史研究を牽引する先生方と同席させていただきました。

 さて、卒論ですが、4回生のゼミメンバー全員の提出が確認されました。来年のことが、ちょっと未定の人もいますけれども、みんなしっかりと実力は備えていますから、拙速は避けて、まぁ余裕で行くことにいたしましょう。

 ところで、私のもとにもようやく『古代文化』第58巻第Ⅱ号「特輯:弥生社会のの群像-高地性集落の実態-」が届き、編集委員就任を依頼する書面が同封されていました。
 再刊第Ⅰ号は変則的にⅡ号の後に刊行されることになってしまいましたが、その巻頭を飾る記念すべき論文は、
      佐伯智広「一条能保と鎌倉初期公武関係」
であります。刊行が待たれます。
 
 ☆ いよいよ冬休み直前、すでに本日からオーストラリア長期遠征というメンバーもおられますが、時節柄、くれぐれも御自愛の上、御活躍下さい。

同志社大学の受講生のみなさんへ

No.5382

 「文化史特論(2)」の前回講義終了時に、次回(22日)の講義では、第6回目に予定していてとばしてしまった「慈光寺本『承久記』に描かれた承久の乱」にかえて、北条氏の話をすると申し上げましたが、再度変更して「中世前期における武士と神社」というテーマでお話しすることにします。ご了承下さい。
 なお、来年授業再開後の講義(第12回)は、予定通り「東国武士団の西遷・北遷と日本文化」のテーマで行うつもりです。

 ☆ 当ゼミメンバーの4回生は、全員あと1~3日で卒論提出です。すでに余裕か、はたまた修羅場か?やはり、心配です。

卒論お疲れ様&御高著・御高論拝受

No.5384

 上の告知をまだ御覧になっていない受講生がおられるといけないので、ここに書き込ませていただきました。

 本日は京都女子大学4回生のゼミメンバーにとっては卒論の提出日。さすがに、提出を済ませて研究室に報告に来てくれたメンバーは疲労と睡眠不足がありありとしていました。一様に、提出論文が満足のいくものでなかったことを悔やんでおられましたが、それで良し。この経験を次に活かしてください。ひとまず、ゆっくり御休息を。
 ちなみに、後輩たちのことが心配で(?)、わざわざ吉田山の麓から駆けつけてくれた先輩一名あり。
 なお、明後日が提出日という方もおられます。もう一息!!

 本日、2冊の御高著と御高論一編を拝受いたしました。

 ☆ 神奈川県立金沢文庫の永井晋先生より、御高著『金沢北条氏の研究』(八木書店)を御恵送いただきました。鎌倉時代後期の政治と文化を論じた大著。内容に見合った豪華で素晴らしい装丁に驚かされました。
 研究室にも配架の予定。『吾妻鏡』講読会出席者は、この御本で大いに勉強していただきたいと思います。

 ☆ すでに御紹介したことのある「ミュージアム知覧」の開館に獅子奮迅の活躍をされ、現在は各地の博物館・美術館の計画・設計・製作のお仕事をされている、オフィス・フィールドノート代表の砂田光紀先生から、御高著『九州遺産 近現代遺産編101』(監修:国土交通省九州運輸局 九州産業・生活遺産調査委員会、発行:弦書房)を御恵送いただきました。
 知られざる、しかしとても興味深い九州近代の歴史遺産のカラー写真が満載。その紹介文は、さすがに素晴らしい博物館展示を企画されている砂田さんならではのものがあります。博物館学芸員志望の学生さんにお薦めします。

 ☆ 室町期を中心に内裏空間や路頭の秩序に関する優れた研究を発表されている慶應大学大学院生の桃崎有一郎さんから、史料紹介「『経嗣公記抄』(荒暦)永徳三年春記-翻刻と解題-」(『年報三田中世史研究』13)を御恵送いただきました。歴博所蔵の広橋家旧蔵本の紹介。学界に裨益するところ多大なことと思います。

 永井先生・砂田先生・桃崎さんに、あつく御礼を申し上げます。

大学教員の研修、義務化

No.5377

一瞬、目を疑った。4月1日にはまだ早いし。

今朝の新聞(朝日)の2面に、

「大学教員の研修 義務化 授業に不満の学生多く」という記事が出ている。

「文部科学省は、すべての大学や短大に対し、教員の教育能力を向上させるための研修を義務づける。授業に不満を持つ学生が多いためで、中央教育審議会(中教審)の部会でこの方針が了承された。」などとある。

 いやいや、研究のための研修義務化のことか、と思いかえした。サバテイカルなどの期間を確保して、研究の質を高め、それを教育に反映させるというのならば、わかる。しかし、記事を読む限り「教育力」に限定された「研修」のようなのである。つまり、授業テクニックのことらしい。そんなこと、だれが「指導」できるんだろうか。大学生の質が大きく変化し、しかも文科省が「黙認」していた高校での「未履修」が発覚し、その対応に各教員は、いろいろと頭をしぼり、話をしているのである。対策を考えているのである。そういうときに、どこか「研修所」にでもいけば、教員の教育能力が高まる、とか、何か特効薬でもあるかのような話は、信じがたい。この記事の内容が不十分、あるいは誤解しているのかもしれない。

 とにかく、それほど大きな記事ではないのだが、今後の日本の大学のありかたに、大問題が出現した、という危機感をいま持っています。どなたか、正確な情報を知らないでしょうか。とにかく、びっくりしています。

Re: 大学教員の研修、義務化

No.5378

 あまり、びっくりしたので、なにも調べずに書き込んだのですが、
すでに、10月の頃には、その情報が流れていたのですね。全く知りませんでした。
毎日新聞には10月に出ていたようです。

http://kaz055.noblog.net/blog/10256781.html

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20061021dde001040007000c.html

「即戦力」求める経済界の要請だそうですが、そこまで大学を知らないとは。
以下の意見に賛成です。

http://blog.tatsuru.com/archives/001962.php

Re: 大学教員の研修、義務化

No.5379

気になることなので、ゆっくり毎日新聞の10月の記事も読みかえしているのですが、
「FD活動の義務化」ということではないでしょうか。
ほとんどの大学ですでに「FD活動」をやっていますし、やっていない大学はむしろ少数でしょう。やっていない大学に、必ずやれよ、ということかもしれない。「FD」というと特別なことのようだが、ようは学生に何をどう教えるのかを、教員間で話し合う場、である。それをやるのは、教育機関である以上、あたりまえなのである。それを新聞記事を書いている記者が、よくわかっていない、勉強不足なのではないか。実は、今回の朝日の記事よりも、10月の毎日の方が、少しましな記事なのです。

「しかし、各大学で現在行われているFDの内容は講演会の開催や研修会、授業内容の検討会など座学中心で、実効性や効果を疑問視する声もある。また07年度に大学・短大の志願者数と定員数が同じになる大学全入時代を控え、経済界には「企業で戦力として使える人材となるように教育してほしい」と、大学教育の充実を求める声も強い。今後、具体的な研修内容は中教審で審議されるが、各大学ごとに建学の精神や求められる教員像が異なっており、「統一のガイドライン作成は慎重にすべきだ」という声もある。一方、大学院は既にFDが努力義務規定から義務規定に改正され、来年4月から義務化される。」という部分が毎日にはあるのですが、朝日の記事にはこの部分に相当するところが存在しない。

ほんとうの「大学」を目指す方たちへ

No.5380

 美川先生の書き込みに関連して、以前、京都女子大学の刊行物に掲載した拙文(新入生を主たる対象にして書いたものです)の一部を転載させていただきます。
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    『大学を楽しもう』

 私がここでお話ししたいことは、「大学を楽しもう」ということです。 なお、はじめにお断りしておきますが、「楽しむ」と「楽をする」とは別次元の問題で、「楽しむ」には主体的な意志と行動が必要です。

<大学で鬼を捜す>
 さて、もう半世紀近くも前のこと。私は父親から一冊の本をもらいました。『日本の歴史 ジュニア版』というシリーズの第一巻「国のはじまり」。本の箱の背中には○○大学教授◇△□×というように執筆者・編集委員の名前が列挙されており、子供心に、大昔のことを何でも知っている、こういう肩書きをもつ学者たちが、ある種の超能力者のように思えたものでした。
 数年前、朝日新聞の文化欄に日本中世史の研究者である黒田日出男さんが、こんなことを書かれていました。
 「学者の学者たるゆえんは鬼と見紛うような創造的な業を営むことに求められる。中世において、社会に対峙して人知を越える秘術を駆使した学者たちは「鬼」そのものであった。」
 少年時代の私の感想は、どうやら中世人の心性に通ずるものがあったようです。
 さて、黒田さんは、右のように述べた後に、
 「それは現代にも通じることで、大学とはまさに鬼の住処なのである。だから、大学に入る楽しみは、そうした鬼捜しに始まる。」
と続けておられたように記憶します。
 自分の興味のあるジャンルで、人知を越える秘術を操る鬼神のごとき先生(第一線の研究者)に巡り会えることが出来たなら、これは最高に楽しいに違いありません。皆さんも、鬼捜しに出かけませんか?

<生徒と学生>
 しかし、その前に鬼の住処である大学とはどんなところなのか、そこで行われる教育は高校などとどう違うのかということを、今一度考えて欲しいと思います。
 高校までの教育というのは、同じ情報を教師が一斉に生徒・児童に教え込むことが目的とされるものです。それに対して、大学における教育とは、研究者である教員がその個々の研究の成果を様々な方法で還元するものです。学生はそれを自らの意志で選択・享受するわけで、大学教育の本質とは自己教育というところにあるのだと思います。
 「生徒」(未成年)である高校生と「学生」(社会的に成人と認知された市民)である大学生の教育に対するスタンスは全く異なるのです。最近、自分のことを「生徒」と勘違いしている学生や、「学生」を生徒扱いしている(せざるをえない)教員が増えているのは、大学にとって憂慮すべき事態といえましょう。
 だから大学では、学生を高校のようには朝から晩まで拘束するようなことはせずに、自らの主体的な学習の自由が確保されるようにカリキュラムが組まれているのです。
 自由な時間に劇場や博物館・史跡に出掛けてみるのも良い(この点で、京都女子大学の立地は、日本一だと思います)。あるいは自分の関心のあるジャンルを専攻されている先生の研究室(他大学も含めて)を訪れてみるような(まさに鬼捜しですね)、ちょっと勇気のいる行動も試みるべきでしょう。会社訪問のようにリクルートスーツを用意する必要もないのですから。意志のある学生の訪問を、先生方はきっと笑顔で迎えてくれるはずです。

<大学院も選択肢に>
  とはいえ、大学が大衆化された今日、資格の取得や就職活動などで、なかなか主体的な学習の時間が確保しづらくなっていることも事実です。
 そうした現実が、好きなことに思い切りチャレンジしようと張り切って入学してきた学生たちの意欲を萎ませてしまっているのはとても残念なことです。
 皆さんの親の世代が大学生であった頃の専門教育は、今日ではその多くが大学院に移行していますから、大学院への進学を視野に入れることを考えてみてもよいのではないでしょうか。最近、大学院に入ってから、めきめきと実力を発揮し始めた人をよく目にします。入学の際に渡された二葉憲香『親鸞 仏教無我伝承の実現』を開いてみて下さい。そこには、二葉先生の人間と学問との関係についての深い理解が、簡潔に示されていると思います。
 学問とは、わかっていないことを理性によっていろいろ勉強をしていくこと。そして、人間にはわからないことを少しでも分からせていただく、そういう能力が与えられおり、それを進めて行けば行くほど人間の知識の限界が明らかにされるというのです。
 人には、生まれながらにして自ずから学問を志さしめる働きが与えられている。だから、学問は尽きることのない楽しみを与えてくれるものなのでしょう。

 大学は学問を「楽しむ」ための総合施設です。ディズニーランドやUSJばかりが、「楽しい」ところだと思ってはいけません。お金を払えば誰にでも与えられる楽しさよりも自分の意志で得た楽しさの方がずっと素晴らしいに決まっています。

Re: 大学教員の研修、義務化

No.5381

美川です。
何人かの方の話を聞いて、だんだん事情がわかってきました。

来春改正の大学院設置基準に、
第十四条の三 大学院は、当該大学院の授業及び研究指導の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする。
という条項があるのですが(この改正の話も今まで迂闊にも知らなかった)、

現在の大学設置基準である、
(教育内容等の改善のための組織的な研修等)
第二十五条の二 大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実施に努めなければならない。

という文末を、大学院と同様に「実施するものとする。」とするのではないかという説が有力です。つまり「大学の教育内容等の改善のための組織的な研修等」=FD活動が努力目標から義務に変わる可能性が高いということです。

 そして、そこからが重要ですが、
文科省は、新聞記者に、つまりそれが何を意味するか、ということをレクチャーし、その結果が10月の毎日や今回の朝日に掲載された可能性が高い。ですから、私の新聞記者の誤解・暴走説は成立しそうもありません。つまり、設置基準の改正の意図は、新聞記事の内容であるということです。
 
 まだ中教審の結果が公表されていないので、これから注意深く見守ろうと思います。

http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w0020949001.html
http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w0020950001.html

武蔵武士と寺院

No.5374

 畠山重忠の居館「菅谷館」跡に建つ埼玉県立嵐山史跡の博物館(〒355-0221 埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷757 TEL 0493-62-5652  FAX 0493-61-1060)で、『武蔵武士と寺院』という企画展が開催されているとのことです。以下、同館HPより。
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期 間 平成18年12月9日(土)~平成19年3月4日(日)

内  容 比企氏、吉見氏、大串氏……鎌倉幕府を支え、活躍した武蔵武士の
      本拠地はどこか? 現在に残る中世寺院跡やそれらにまつわる伝承、
      発掘された中世遺跡、板碑等のさまざまな文化財を通して探ります。  

関連イベント
         1.記念講演会と説経節上演
            平成19年1月13日(土)13時~16時
            国立女性教育会館講堂(定員400名・申込順)
             講演「大蔵合戦と武蔵武士」都立大学名誉教授 峰岸純夫氏
             説経節「親子対面矢取りの場~小栗判官実道記より」横瀬人形芝居保存会
         2.シンポジウム「武蔵武士と寺院」
             平成19年1月14日(日)9時30分~16時
             国立女性教育会館講堂(定員400名・申込順)
         3.埼玉県郷土文化会講演会
             平成19年2月18日(日)10時~15時
             嵐山史跡の博物館講座室(定員100名・申込順)

     申込方法:1.2.は12月12日(火)午前9時から電話又はFAXで受付
            3.は1月23日(火)午前9時から電話又はFAXで受付
            電話 0493-62-5652 FAX 0493-61-1060
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    詳細ならびに行かれる方は、あらためてhttp://www.ksky.ne.jp/~ranzansi/で御確認下さい。

 ☆ 東海大学の落合義明先生より、御高論「中世武蔵国の「都市的な場」と禅宗寺院-河越荘を中心として-」(『年報都市史研究』14)・「都市鎌倉の寺社修造事業」(速水侑『日本社会における仏と神』吉川弘文館)を御恵送いただきました。
 上記、企画展の開催についてお知らせいただいたこともあわせて、落合先生にあつく御礼を申し上げます。

日本史研中世史部会で佐伯師範の報告

No.5373

 あっという間に、当掲示板のアクセス数は30万を突破しました。時にはアクシデントもありましたが、それらを乗り越えることが出来たのは、管理人の鈴木君・永富さんの優秀な技術と調停能力によるものと感謝しています。
 残念なのは、読者(とくに研究者の)が増えたことによって、メンバーが書き込みに二の足を踏むようになってしまったことです。気持ちは重々お察ししますが(というより<痛み?痒み?>は共有しているつもりです)、「過去ログ」を開いて創設当時のことを思い起こしてみてください。

 ところで、新春早々の日本史研究会中世史部会・例会はゼミメンバーで埋め尽くされそうですね。
 佐伯師範が先発の大役を担われるようです。
 以下、部会案内より。

【部会】
1月16日(火)18:30~ 日本史研究会事務所(機関紙会館3階)
佐伯智広氏「鳥羽院政期政治史と王家」

【日本史研究会1月例会】 テーマ 「14世紀史の可能性」
日時:1月13日(土)11:00~17:00

場所:京大会館(京都市左京区吉田河原町15-9  TEL075-751-8311)

報告:市澤 哲氏「14世紀政治史研究をふりかえって」
   伊藤俊一氏「「自力の村」の起源」
    原田正俊氏「中世仏教再編期としての14世紀」
    大村拓生氏「都市史における14世紀の位置」
   藤田明良氏「東アジア海域交流と日本列島」
   大山喬平氏「多様性としての列島14世紀」

※入場無料、一般来聴歓迎

※交通 京阪線「丸太町駅」下車 徒歩約7分
    京都駅より市バスD2のりば(206)「京大正門前」下車

 ☆ 12世紀や13世紀での企画もぜひお願いしたいものであります。

今年度の吾妻鏡について

岩田慎平
No.5375

 早いもので今年も残すところあと僅かとなりました。今年の吾妻鏡は、先週(12/11)をもちまして一旦休会となります。次回は、年が改まった2007年1月15日を予定しておりますが、詳しくはまた後日お知らせいたします。

 ところで、過去ログを振り返りますに、本年度の『吾妻鏡』の初回は2006年4月10日、範囲は建保元(建暦三)年・八月十四日・廿日・廿二日とありました。和田合戦が収束した頃で、八月十四日は清水寺と清閑寺が争論したとの記事が見えます。
 その後、
  実朝の新御所への移徙(貴族社会の儀礼に則ったもの)
  大倉新御堂供養(京都から高僧を呼ぶか否かで揉めた)
  実朝と陳和卿の会見(陳和卿、実朝の前世に医王山長老を見る)
  広元の大江姓への改姓(文士のようにみせつつ強硬派)
  政子の熊野参詣(偉い人の誘いを断るときは気をつけましょう、という例)
  泰時の侍所別当就任(武州(ブシュウ)と合衆国大統領(ブッシュ)は違います)
  山門と石清水の争論(筥﨑宮を巡る争い)
  実朝暗殺(鬢一筋を宮内公氏に託す実朝)
  頼経下向(それ以降、実朝側近を形成した人々の多くは姿を消す)
など(ほかにも見どころたくさん)を経て、承久の乱に至りました。
 年が明けてもしばらくは承久の乱に関わる部分を読んでいくことになると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

 また、年度のはじめからしつこく「参加希望者随時募集」と言い続けた甲斐があったのか、本年度も常時5~6人で読み進めていくことができました。依然「参加希望者随時募集中」ですので、まずは見学からでもどうぞお気軽にご参加ください。

雑誌「中央公論」最新号

No.5369

美川です。

 雑誌「中央公論」2007年1月号は、特集が「日本史を学び直すための130冊」です。いろいろな意味で?、おもしろい内容です。なお、今谷明先生によって拙著、本郷和人先生によって元木先生の『保元・平治の乱を読みなおす』(NHKブックス)が紹介されています。

http://www.chuko.co.jp/koron/

共同研究室に「ののちゃん」現る。

No.5370

 >美川先生  「いろいろな意味で?、おもしろい」という御紹介の「いろいろな意味」にひかれて、ぜひ読んでみたいと思います。

 >佐伯君  新聞記事のお知らせ、ありがとうございました。
  学芸員志望の学生さんは沢山いますが、その中で「指定管理者制度」について考えたことのある方がどれだけいることか?

 本日の『吾妻鏡』講読は長時間にわたりましたが、とても充実したものでした。
 参加者に「ののちゃん」を知らない「ののちゃん」の如き4回生のおられることが判明。もう、お腹はいっぱいになったでしょうか?

 掲示板のアクセスはいよいよ30万寸前となりました。いろいろありました。
 一抹の感慨。
 短い期間ながら「栄枯盛衰」「諸行無常」。

ミュージアム知覧

No.5346

 近年、国や地方公共団体の財政が深刻な事態に直面している。当然、緊縮策が打ち出されるが、その場合、あまり不満の出ない、そして形の見えない「文化」にたいする予算が削減の対象になりがちである。
 バブルの時期、各地に立派な博物館がたくさんオープンした。ただ、それは文化への投資というより、互いに競い合って博物館という名前のハコモノを建てたに過ぎないようなケースが多いようだ。そうであるかないかは、その博物館の展示や研究活動によって一目瞭然である。
 鹿児島県知覧町のミュージアム知覧も、このころの開館である。当時もっとも斬新な展示手法を誇っていた京都文化博物館から、鹿児島経済大学(現、鹿児島国際大学)に赴任したばかりだった私も、さっそく見学に出かけた。ローカルで地味な博物館をイメージしていたのだが、その予想は見事にくつがえされた。薩摩と海とのつながりをテーマにした素晴らしい展示形態に圧倒されたのである。
 この博物館の展示がすぐれているのは、何よりも学術的な裏付けが明確であるからである。展示物そのもののインパクトもさることながら、発信される情報量が大きいのである。したがって、子どもから研究者まで飽きさせない。
 町立という設置規模であるのに、この博物館では、企画展の図録のほか、充実した内容の研究紀要も刊行している。埋蔵文化財の調査にも携わる学芸員の方たちは、さぞ忙しいことだろう。にもかかわらず、彼らの活躍はめざましく、知覧城跡は国の史跡に指定されることになった。
 地域住民の文化的アイデンティティの形成に博物館が果たす役割は限りなく大きい。その地に住むことの幸せ、いわば「心の地域福祉」が実現されるからである。
 たまたまミュージアム知覧を例に挙げたが、各地方自治体は緊縮財政下の今こそ地域と結びついた文化事業の重要さを見なおすべきであろう。
 博物館を入館者の数や採算で評価するのは誤りである。

 ☆ とても久しぶりに、ミュージアム知覧の創立に携わった懐かしい友人からメールが届きました。そこで思い出した旧稿をリニューアルして書き込ませていただきました。

 卒論の皆さんは、いよいよ大車輪の段階だと思います。風邪に気をつけてもう一踏ん張りです。

 本日は京都検定の試験があったようです。御存知N君も受験されたとのこと。合格を祈ります。
 もちろん一級ですよ。

博物館と指定管理者制度に関する記事。

No.5367

佐伯です。
野口先生の書き込まれたことと関連する記事が先日ありましたので、ご紹介までに。

ご承知の通り、最近博物館では指定管理者制度の導入が進んでおります。
導入前から、「非営利事業である博物館の活動になじまない」、「指定管理者が短期間で変わることにより、継続的な活動が出来なくなる」といった
博物館側からの反対や危惧の声が非常に大きかったわけですが、
現実に導入が進む中での現状や問題点といったものをまとめた記事が、
12月9日(土)の日本経済新聞の40面(=裏面トップ)に掲載されています。
制度の問題点がモロに出ている伊丹・広島の事例、
制度の枠組みの中で博物館の活動を維持していこうとするための釧路・長崎の事例、
指定管理者制度の枠組みに乗らずに、構造改革特区として地方独立行政法人化を目指す大阪の事例などが紹介され、
参入に慎重な企業側の意見も掲載されています。
(長崎・大阪は歴史博物館の事例、あとは美術館の事例です。)
この問題に多少関わったことのある身としては、「何を今更」という感もありますが、
とはいえ、こうしてマスコミが問題点を認識し報じてくれるようになったことは意義があると思います。
(導入前は「指定管理者制度万歳!」的なお先棒担ぎの記事ばかりでしたから…)

博物館関係者の方、学芸員志望の方には役に立つ記事かもしれないなあと思い、紹介させていただきました。
ご参考までに。

BSフォーラム拝見。

No.5322

 さすがに、「男はつらいよ」は見られませんでしたが、前川さん御出演のBSフォーラムは拝見。内容は世界遺産としての意味づけに主眼が置かれていましたが、前川さんは親子ほども歳の差のある二人の碩学に並んでも堂々たるもので、80年代の後半、二条にあった古代学協会の仮事務所の二階で初めてお目に掛かった頃とは隔世の感がありました。まだあの頃は学部生でした。
 前川さんは目下、子育てと研究を両立中。家計をあずかる主婦として、深夜・早朝の電気料金が安い時間帯を博士論文の執筆にあてているのだそうです。
 ゼミの諸姉兄に告ぐ。見習うべし。(私もだ。)

 美濃旅行について、岩田君が具体的な企画案を提示してくれました。日帰りなら行きやすいと思います。原稿が書けずに停滞しているくらいなら、どんどん出掛けようではありませんか。若狭の小浜。近江の佐々木氏関係の史跡。ついでに安土など。まだ浄瑠璃寺に行ったことがないという人もおられましたね。

 >>No.5295で御紹介した菱沼先生の御高論「統治機構としての鎌倉幕府-武力組織からの進化-」は、頼朝の政権の評価について、同感するところ大きいものがあります。
 「鎌倉幕府は東国の武力制圧によって誕生した軍事政府ではあるが、その支配機構は文官と旧頼朝側近系により構成されており、武力の大小を基準として権力編成がなされていた訳ではない」という御指摘は、私が「流人の周辺」(『中世東国武士団の研究』)や「「京武者」の東国進出とその本拠地について」(京都女子大学宗教・文化研究所『研究紀要』19)で述べたことと共通する認識を示されたものだと思います。
 さらに、「もし頼朝が武士層を主従関係のもとで編成し、彼等の私的所有権を保護するために地頭制度を設けて封建制を確立したという歴史認識に立つとすれば、受け入れ難い理解であろう。やはり頼朝政権の政策・方向性を、封建制の成立過程と評価すること自体にに無理があるのではないか」という先鋭的な御意見は大いに論議をよぶものと思います。
 国文学の雑誌に掲載されたので、歴史関係の研究者の目に触れる機会が少ないとしたら勿体ないことなので、あらためて御紹介する次第です。
 次回の『吾妻鏡』講読会の折にでも、ゼミメンバー諸兄の御意見をうかがおうと思います。

BSフォーラム拝見。付、美濃のこと

No.5366

 前川さん御出演のBSフォーラムは私も拝見致しました。見応えたっぷり充実の一時間番組でした。

 ところで、上で野口先生からご案内いただいた美濃旅行ですが、クルマで名神高速を一時間半ほど(順調に)走れば尾張一宮に到着できます。ということは、日帰りでもたっぷり半日は見学に宛てることができると思います。
 みどころとしては、
 ・尾張一宮社(真清田神社)
 ・犬山城(天守閣にのぼって見渡せる。犬山城・犬山市文化史料館・からくり展示館共通入館料500円)
 ・岐阜城(金華山にのぼって見渡せる。ロープウェー往復1050円)
 ・大垣城(天守閣にのぼって見渡せる。入場料100円)
などが考えられます。お城ばっかり挙げてしまいましたが。これらを結べば、『吾妻鏡』承久三年五月五日条~八日条にかけて見られる地名はかなりカバーできるかと思います。
 なお、金華山の麓の長良川沿いには温泉もあります(ex,岐阜観光ホテル十八楼:立ち寄り湯お一人様1,000円(税込み)タオル付き)。

 野口先生からもご提案をいただきましたように、安土や小浜などへも日帰りでどんどん出掛けたいですね。年明けの一~三月頃の週末に、みなさんで予定合わせしてみましょう。

次回の『承久記』(『吾妻鏡』)

No.5235

 前回の『吾妻鏡』の時間は置物のように座っているだけで、すみませんでした。年の瀬のため少人数催行かと思われたのですが、たくさんのご参加をいただきましてありがとうございます。
 さて、次回のご案内です。

 時間:12月11日(月)15:30~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 宗教・文化研究所共同研究室
 範囲:承久三年六月七日条~

 前回とは違い、再び開始時間を戻しましたのでご確認をお願いします。

承久の乱・21世紀の「佐賀の乱」の思い出

No.5295

 >岩田君  風邪をいとわず、ありがとうございました。
  ほかの皆様方も、くれぐれも御自愛下さい。

 『吾妻鏡』講読会ですが、承久の乱に関しては新日本古典文学大系43所収の『承久記』(慈光寺本と古活字本)を用意してくるとよいと思います。また、話しを進める上で、長村君の「『六代勝事記』の歴史思想-承久の乱と帝徳批判-」(『年報中世史研究』31)ならびに拙稿「慈光寺本『承久記』の史料的評価に関する一考察」(宗教・文化研究所『研究紀要』18)・「承久の乱における三浦義村」(『明月記研究』10)を読んでおいて下さると助かります。

 なお、4回生の卒論も大詰めの段階にさしかかり、注の書き方など、形式的なことで心配が発生する時期だと思います。そういう方は少し早めに来てくれれば、院生諸兄が対応してくれると思います。

 ところで、明日12月9日(土)は、NHKテレビのBS2で、必見・準必見番組があります。一つは>>No.5231で紹介した前川佳代さん出演の

 ☆ BSフォーラム 「“黄金都市” 平泉」 後5:05~6:00 

 もう一つは、

 ☆ 「 男はつらいよ ぼくの伯父さん 」 後9:03~10:52

です。一昨年夏の小城ゼミ旅行参加者には、なつかしい場面が数多登場します。村岡総本舗の社長さんにご馳走していただいた高級小城羊羹や田中さんの案内のもと佐賀でいただいた魚の美味しさを思い出しながらご鑑賞下さい。ほかにも、いろいろと思い出さざるを得ないことがございますが(笑)。

【追記】
 國學院大学の菱沼一憲先生より、御高論「統治機構としての鎌倉幕府-武力組織からの進化-」(『軍記と語り物』42)・「国家機構としての地頭制度と幕府裁判機能」(『鎌倉遺文研究』18)を御恵送いただきました。
 菱沼先生にあつく御礼を申し上げます。

新聞書評と紹介(読売と産経)

No.5232

野口先生、やっと拙著の新聞書評・紹介が掲載されました。
気に掛けていただいていたので、ご報告いたします。
御覧いただければ、幸いです。

読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20061204bk0d.htm

産経新聞
http://www.sankei.co.jp/books/shohyo/061203/sho061203007.htm

院政・院生。第一回「中世戦記研究会」

No.5233

 美川先生、ありがとうございました。
 なにしろ、多くの方に読んでいただきたいと思っています。
  
 ちなみに、院政もいろいろ問題がありましたが、昨今の学問・研究環境悪化の中、「院生」諸姉兄には、くれぐれも頑張っていただきたいところです。
 
 昨日の『吾妻鏡』講読会は関学・神大・京大から優秀な院生が集結。おかげで承久の乱の経過がとても具体的に理解できました。やはり、『吾妻鏡』や流布本『承久記』に描かれているのと実際の様相はかなり異なるように思います。
 美濃方面の見学旅行、どなたか具体的な計画を練ってみてください。

  ◎ 「中世戦記研究会」(旧称「平家物語研究会」)が下記のごとく開催されるとのことです(後日再掲します)。会員以外の方で参加希望の方は、事務局に連絡いたしますので、当方にお知らせ下さい。
 辻君の御報告があります。私は参加予定です。

  日時:2007年1月6日(土)13:30~17:30
 
  場所:都立九段高校 
 
 【輪読】(『真名本曾我物語』巻五):大橋直義氏
 
 【研究発表】
  和田琢磨氏「今川了俊のいう『太平記』の作者-『難太平記』「六波羅合戦記事」を中心に-」

  辻 浩和氏「後白河と都市民-<見せる王>としての後白河」

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● 訂正
 >>No.5223で有隣新書としてご紹介した本のうち、貫達人監修『実朝と波多野』・湯山学『波多野氏と波多野庄』は夢工房の刊行でした。おわびして訂正いたします。
  なお、有隣新書としては、さらに、貫達人『鶴岡八幡宮寺』をご紹介しておかなければいけませんでした。