変だなあ 雛人形
美川圭
No.1457
今年も、我が家では、ひな祭り当日になって、
あわてて雛人形を出した。といっても、ぼくは箱を物置からとりだしただけで、並べたのは妻である。添付の並べ方パンフレットには、「標準段飾り」と「京風段飾り」の2種が載っているので、うちでは「京風」で並べることにしている。「標準」と「京風」では、男雛と女雛の左右が逆、ということは比較的よく知られている。
ところが、けさになって気がついたのだが、うちの雛は男が向かって左、女が右になっているではないか。「京風」は男は向かって右、女は左のはずである。しかし、確かに「大阪府人形問屋協同組合」の名で作られているパンフレットは、「京風」でも男がむかって左となっているのである。
ちなみに、京都の並べ方が、古くからの形であるが、どうも大正天皇の即位式の際の、西洋風がとりいれられて、全国的に男がむかって左となったらしい。しかし、京都では、古態を比較的つたえようと、男をむかって右にしているらしい。律令制では、左が右より上位にあるからである。
聞くところでは、「全国ひな人形協会」という人形屋の組織があって、そこでは、男雛を左と決めているらしい。おおげさにいえば、近代天皇制の浸透に雛人形がはたしている役割である。もちろん、雛人形自体が、天皇制と関わっているのだが。
ところで、もう一つあまりいわれない疑問がある。段飾りの中段ぐらいに、左大臣、右大臣といわれる人形がいる。その下の段あたりに、左近の桜、右近の橘を並べることになっている。「近」というのは「近衛」のことであろう。左大臣、右大臣といわれる人形は、いずれも儀仗のすがた、つまり弓矢を帯している。これが左大臣、右大臣というのは、どうもひっかかるのである。これは左大将、右大将の誤りではないのか。それなら、天皇、皇后を警固する、という意味からもわかりやすい。左大臣と右大臣とすると、どうして、ここにいるのか、よくわからない。どっかに関白がいてもいいではないか。蔵人頭がいないのか、ということになってしまう。
装束からすると、どうなのか。このへんは近藤先生にご出馬していただきたいところである。それと最上段の男雛、女雛ををなんで「親王」とよぶのだろうか。あれは天皇、皇后(中宮)じゃないのか。
まったく、歴史家のはしくれ、とくに王朝のことをやってるぼくが、こんなことをすっきりと説明できないのは、なさけない限りである。ぼくがよくわからないのだから、よくわかっている人も多いのではと思う。お助けを。でもみんな知っていることなのかな。そうなると、恥ずかしいなあ。
あわてて雛人形を出した。といっても、ぼくは箱を物置からとりだしただけで、並べたのは妻である。添付の並べ方パンフレットには、「標準段飾り」と「京風段飾り」の2種が載っているので、うちでは「京風」で並べることにしている。「標準」と「京風」では、男雛と女雛の左右が逆、ということは比較的よく知られている。
ところが、けさになって気がついたのだが、うちの雛は男が向かって左、女が右になっているではないか。「京風」は男は向かって右、女は左のはずである。しかし、確かに「大阪府人形問屋協同組合」の名で作られているパンフレットは、「京風」でも男がむかって左となっているのである。
ちなみに、京都の並べ方が、古くからの形であるが、どうも大正天皇の即位式の際の、西洋風がとりいれられて、全国的に男がむかって左となったらしい。しかし、京都では、古態を比較的つたえようと、男をむかって右にしているらしい。律令制では、左が右より上位にあるからである。
聞くところでは、「全国ひな人形協会」という人形屋の組織があって、そこでは、男雛を左と決めているらしい。おおげさにいえば、近代天皇制の浸透に雛人形がはたしている役割である。もちろん、雛人形自体が、天皇制と関わっているのだが。
ところで、もう一つあまりいわれない疑問がある。段飾りの中段ぐらいに、左大臣、右大臣といわれる人形がいる。その下の段あたりに、左近の桜、右近の橘を並べることになっている。「近」というのは「近衛」のことであろう。左大臣、右大臣といわれる人形は、いずれも儀仗のすがた、つまり弓矢を帯している。これが左大臣、右大臣というのは、どうもひっかかるのである。これは左大将、右大将の誤りではないのか。それなら、天皇、皇后を警固する、という意味からもわかりやすい。左大臣と右大臣とすると、どうして、ここにいるのか、よくわからない。どっかに関白がいてもいいではないか。蔵人頭がいないのか、ということになってしまう。
装束からすると、どうなのか。このへんは近藤先生にご出馬していただきたいところである。それと最上段の男雛、女雛ををなんで「親王」とよぶのだろうか。あれは天皇、皇后(中宮)じゃないのか。
まったく、歴史家のはしくれ、とくに王朝のことをやってるぼくが、こんなことをすっきりと説明できないのは、なさけない限りである。ぼくがよくわからないのだから、よくわかっている人も多いのではと思う。お助けを。でもみんな知っていることなのかな。そうなると、恥ずかしいなあ。