やはりボロがでる大河「義経」

美川圭
No.3128

2月6日放映の義経を見ました。

いちばん、何だと思ったのは、徳子の入内問題で、たしか時子が、
摂関家しか入内できない、などという間抜けなことを言っているシーンです。
しかも、待賢門院がいかにも入内のために、白河院の養女になったかのようにも、
発言していました。これも明確に誤りでしょう。
白河、鳥羽と、ともに母が待賢門院と同じ閑院流藤原氏出身ということを知らないのか。
いったい、美福門院はどこの家の出身なんだ。
これでは、時子が貴族社会の先例をなにも知らない女性となってしまいます。
きっと、時子の出身の家なんかの性格なんて、まったく作り手は知らないのでしょうね。

もう少し、脚本家や制作者は勉強してほしいですね。
そうでないと、やはり大河ドラマは大人が見るに値しない「子供だまし」なのか、
と思います。

Re: やはりボロがでる大河「義経」

No.3131

 目下、後期科目のレポートを採点中ですが、そのなかに、小生の講義について「年代のギャップを感じさせる、貴重な講義テーマに関する大河ドラマの話なども非常に興味深かった」などと書かれたものがありました。やはり「年代のギャップ」は大きいですね。
 ところで、「義経」ですが、美川先生の仰せのとおりで、どうも制作者は、いつものことですが「貴族」というと、<文学作品によって造形された>摂関時代のイメージしか持っておられないように思えます。「遊女」に対する認識も近世的だし、中世の「民衆」の描かれ方も、大河ドラマの伝統的ワンパターンが継承されているように思います。
 ストーリー的にも、頼朝に源氏重代の太刀を偽られたことで、清盛が庭園の植栽を破壊するほどに激怒し、しかもそのことで義朝の遺児たちへの監視が厳しくなるなどという展開は理解しがたいものがあります。みなさんは、どう思われますか?
 いずれにせよ、せっかく同じNHKの名のつく出版社から美川圭『白河法皇』や元木泰雄『保元・平治の乱を読みなおす』というテキストとすべき名著が出ているのですから、大河ドラマの制作に関与されている方たちには、これを是非精読していただきたいものであります。
 それにしても、次回あたりから『北条時政』も登場するらしく、ミネルヴァ日本評伝選の執筆を催促されているようで落ち着かなくなって参りました。

 ところで、採点中のレポートですが、中にはじつに水準の高い作品があります。相当に勉強しているのでしょう。受講生恐るべしです。こういう人にNHKに入社してほしいところです。

 ☆ 山田先生がお書きになっているように、4月刊行予定の『古代文化』(特輯「平家と福原」)は、早くも校正の段階に入りました。乞う、ご期待!!

 ☆ ゼミ旅行には、府立大院の薗田さんや東京在住の山下さん(旧姓・八木さん)も参加されることになりました。幹事の山内さん、よろしく。
 なお、事前調査?のために鎌倉に乗り込まれた山岡さんからの御報告をお待ちしております。

 >中村先生  義経伝承の成立について、手頃なところで、先月、講談社学術文庫から再刊された、角川源義・高田実『源義経』をお勧め致します。 

Re: やはりボロがでる大河「義経」

No.3132

美川先生・野口先生、こんばんは。うちの家では、キャッキャいいながら、どうでもいいところばかりけなしていました。五条橋の真ん中には中島がなけりゃおかしい、とか、五条橋から見た五条大路末が行き止まりのT字路になっているのは変だ、とか、細かいことばかりです。ついでにいうと、徳子を「トクコ」と発音しているのはかなり耳障りです。やっぱり私には「ノリコ」のほうがしっくりときます(拠「平安時代史事典」)。
うれしかったのは、建春門院平滋子が登場したこと。ただ、時子の前に居並んだ平氏の女性たちが、「法皇さまの女御である建春門院滋子さま」と呼んでいたのはいただけません。滋子は皇子・憲仁親王立太子によって女御となりましたが、同親王が高倉天皇として即位した後は国母として皇太后の尊位に昇り、さらにその後は女院に列せられております。その方に対して、いまさら女御よばわりは不敬の極みでございますね。どうでもいいけれども、建春門院はもっとあでやかでかつ知的な女優さんにやってほしかった。まったく個人的な好みからいうと、たとえば黒木瞳さんなんか・・・
こんなひねた視聴者がいるとNHKも大変ですね。しかし、うちはきちんとNHKの受信料を払っているので、文句をつける権利は保持しております(知り合いの某先生は受信料支払い拒否なので、番組に文句をつける資格がないらしいです)。

建春門院を軽視するな

No.3134

山田先生、先日はぜひお誕生会にかけつけたかったのですが、
ほんとうに失礼いたしました。

私もNHKにはBS受信料まで払っているので、どんどん言わせてもらいます。

建春門院の件は、まったく同感です。
あのシーン、違和感がありましたね。
その前に、時子が冷泉局に仲介、と言っていたので、あれはてっきり冷泉局、
と思ったら、「建春門院」のテロップで、えっ、と思いました。
後白河院と建春門院の御陵が堂々と並んでいたとする山田説からしても、
いかにも、後白河院に仕える建春門院という構図はいただけませんね。
当時の女院の地位は高い。後白河院と同等に近い配役と、位置が必要です。
黒木瞳さん、それはいい。

しかも、後白河院はひたすら「悪役」で行きそうな気配。
家内も、「悪そう」とつぶやいていました。
後白河院はきわめて多面的な人格ですし、平幹二郎さんなら、
それが演じられると期待しているのですが、
せっかくの名優を出しておいて、演出がそこまでわかっていないのかな。

宝の持ち腐れ。

やはり、早く本を書くべきだ、と自らの身に責任がふりかかってくる気もしますが、
私の『白河法皇』を読んでいる気配もないので、いくら本を出してもだめか。

Re: やはりボロがでる大河「義経」

No.3138

そうですか、黒木瞳がお好きですか。美川先生、山田先生と好みが一致し、うれしいかぎりです。美川先生、本を出すことは無駄ではないと思います。それが、いかに普及するかというのが、むしろ大きな問題のように思います。そうした本が何冊も出れば、やがてはそれが大きなうねりになり、人々の認識を大きく変えていくのではないかと思う次第です。
今回の「義経」で思ったのは、一条長成なんですが、清盛の家人の盛国に問い詰められ、ばかにされるぐらい、力のない存在だったのでしょうか。古い貴族観が巣くっているように思えてならないのですが。
まつけんこと弁慶がうつろな目でタッキーを探し回るシーンを見ていると、まるで…。いらぬ邪推ですが。

山田先生 原稿の束、いただきました。これから拝読させていただきます。ありがとうございました。

前川様 先日はご挨拶できず、失礼いたしました。年表とは、どこに載っているもののことでしょうか。ドラマストーリーを見ても、歴史・文化ガイドを見ても、お名前が載っていないようですが。このどちらかでお手伝いいただきながら、お名前を入れ忘れたのだとしたら、申し訳ございません。また、チェックというのは、番組サイドからの、ということしょうか。そういった検閲めいたことはないと思うのですが。

さすが辣腕編集者

No.3139

石浜さん、こんにちわ。
さすがに、辣腕編集者、おことば肝に銘じます。
本をどんどん書かねばなりませんね。

ところで、一条長成についても、同感です。
以前に、彼だけお歯黒をしている意図を指摘しました。→>>No.3060

作り手が「弱々しい伝統的な貴族観」を脱しきれないのですね。
武器を使わずに時代に挑む人々を、もう少し評価できないものでしょうか。
定家の「紅旗征戎、吾がことにあらず」という言葉が、心にしみるのですが。

すぐに人を殺傷する武士は、いやだいやだ。

Re: やはりボロがでる大河「義経」

No.3140

いえいえ、美川先生、そんなにおだてられても何も出ませんから! 
野口先生のご指摘で、「頼朝に源氏重代の太刀を偽られたことで、清盛が庭園の植栽を破壊するほどに激怒し、しかもそのことで義朝の遺児たちへの監視が厳しくなる」ことをどう思うか、というのがありましたが、なるほど、先日の書評会での元木先生のご指摘にもあったかと思うのですが、政治史の根幹のところが、やはり消化できていないので、こういった単純な見方に収斂してしまうのかと思った次第です。背後にある様々な動きを描けない・描こうとしないから、こうした描写の仕方になってしまうのですかね。

担当部署が異なるのかもしれません。

前川佳代
No.3143

石浜さま 
こんばんわ。私が依頼され、文章や年表を載せていただいたのは、教養・文化シリーズ『義経 史実と伝説をめぐる旅』(NHK出版 2004.11)です。常に下請け会社からの連絡だったので、直接年表担当の方とはお話していないのですが、どうもNHK側の年表と差違があったようで、何回か見直した経緯がありました。その時に、NHKには大河なんかの関係で、膨大な年表をしきっている人がいると聞いたのです。石浜さんがご存じでなかったということは、きっと部署が異なるのでしょうね。

年表担当者はいるのか

No.3150

前川さま
そうですか、『義経 史実と伝説をめぐる旅』でしたか。確かに、お名前が載っておりました。そういえば、見た記憶もありました。
 下請けの会社とやりとりなさっていたということは、NHK出版サイドの人間との連絡はなかったのでしょうが、このムックは番組関連ではありますが、NHK出版編なので、番組サイドからの検閲はなかったものと思います。何か変更を要求されたのだとしたら、おそらく、番組の都合で一部ぼかすなどのことが必要とされたのかもしれません。つまり番組で史実をねじ曲げた場合、年表にも多少手を加えることもあるそうです。ですが、特に番組制作サイドに、年表を仕切っているような人はいないとのことですが。
 

ありがとうございました。

前川佳代
No.3159

石浜さま
ありがとうございました。直接担当者とお話ができなかったものですから、年表のどこが悪いのか結局わからず仕舞いでして、それが大変気がかりだったものですから、お伺いいたしました。ご丁寧な対応をしていただき、大変感謝しております。