日本史研究会3月例会。
No.4577
昨日は日本史研究会3月例会に行きました。川合康『鎌倉幕府成立史の研究』を踏まえての「鎌倉幕府論の課題と展望」がテーマ。報告者は川合先生(「鎌倉幕府研究の現状と課題」)と東大史料編纂所の近藤成一先生(川合康氏の鎌倉幕府成立試論について)。
川合先生の御報告はいつもながら、実に説得力のある明快な論旨。鎌倉幕府に軍事権門を超える性格を見出された点、鎌倉幕府の歴史的個性を解明するために示された方向性、鎌倉幕府成立期において検討すべき武士社会を京都と鎌倉に求めた点、軍事力の動員という観点から都市としての鎌倉と京都の相違を示された点(旧稿で示した武蔵国御家人の特殊性の事情などについて、説得力のある回答を与えていただく事が出来ました)などに大きな示唆を受けました。
近藤先生の御報告では、奥州合戦に関する史料に基づく幕府の公権力・私権力両面に対する分析などに興味深いものがありました。
歴史学研究の根幹に触れる力量がなく、枝葉の問題ばかりに関心を向けている私には、高度な理論レベルの議論に参加する能力はありませんが、このような御報告に接すると自らの研究の位置づけと方向が示されて大変ありがたいわけです。
討論の時間に、川合先生に対して、鎌倉幕府成立の前提としての平泉政権の評価と坂東に幕府が樹立された必然性についての質問をさせていただきましたが、私は、鎌倉幕府成立論に、政権中枢の人的構成や坂東の地域的特性を加えると、幕府成立の歴史的意味がより鮮明に浮かび上がるのではないかと考えています。
それにしても、この時代を解明するための史料として、『吾妻鏡』をはじめ13世紀半ば以降に成立した編纂史料に依拠しなければならないことが大きなネックとなっていることをつよく再認識させられました。川合先生は『平家物語』史観の克服という点でも大きな役割を担われ、私など、たいへん大きな研究上のインパクトを与えていただいたわけですが、『吾妻鏡』や『承久記』などについても国文学や思想史のジャンルの研究成果を参照しながら、さらに検討を進めていく必要を感じました。この仕事は、この例会で川合先生に対して「京武者」について要を得た質問をされた長村君に期待するところ多大です。
ちなみに、近藤先生とお目にかかったのは、故・安田元久先生が主宰されていた「『吾妻鏡』の総合的研究」の研究会以来のことで、例のごとく時間の経過について思うこと多大でした。
なお、懇親会では博士号を授与されたばかりの吉田賢司さん(おめでとうございます)、今回の例会を取り仕切って下さった木村英一さん、また日本史研究会の委員会の後に駆けつけてくれた髙橋昌明・山田邦和両先生らと楽しい一時を過ごすことが出来ました。これまた感謝申し上げる次第です。
例会や部会は、大会などよりも、ゆっくりと濃密な議論が交わせる機会だと思います。テーマ・報告者に即して、関東をはじめ各地から若い研究者が参加されるようになればよいのに、という感想を持ったことも付け加えておきたいと思います。
☆ 帰宅すると、早稲田大学文学学術院教授の日下力先生の御高著『平家物語転読』(笠間書院)が届いていました。『平家物語』全12巻のエッセンスが詰め込まれている一冊。ゆっくり拝読させていただきたいと思います。日下先生にあつく御礼を申し上げます
川合先生の御報告はいつもながら、実に説得力のある明快な論旨。鎌倉幕府に軍事権門を超える性格を見出された点、鎌倉幕府の歴史的個性を解明するために示された方向性、鎌倉幕府成立期において検討すべき武士社会を京都と鎌倉に求めた点、軍事力の動員という観点から都市としての鎌倉と京都の相違を示された点(旧稿で示した武蔵国御家人の特殊性の事情などについて、説得力のある回答を与えていただく事が出来ました)などに大きな示唆を受けました。
近藤先生の御報告では、奥州合戦に関する史料に基づく幕府の公権力・私権力両面に対する分析などに興味深いものがありました。
歴史学研究の根幹に触れる力量がなく、枝葉の問題ばかりに関心を向けている私には、高度な理論レベルの議論に参加する能力はありませんが、このような御報告に接すると自らの研究の位置づけと方向が示されて大変ありがたいわけです。
討論の時間に、川合先生に対して、鎌倉幕府成立の前提としての平泉政権の評価と坂東に幕府が樹立された必然性についての質問をさせていただきましたが、私は、鎌倉幕府成立論に、政権中枢の人的構成や坂東の地域的特性を加えると、幕府成立の歴史的意味がより鮮明に浮かび上がるのではないかと考えています。
それにしても、この時代を解明するための史料として、『吾妻鏡』をはじめ13世紀半ば以降に成立した編纂史料に依拠しなければならないことが大きなネックとなっていることをつよく再認識させられました。川合先生は『平家物語』史観の克服という点でも大きな役割を担われ、私など、たいへん大きな研究上のインパクトを与えていただいたわけですが、『吾妻鏡』や『承久記』などについても国文学や思想史のジャンルの研究成果を参照しながら、さらに検討を進めていく必要を感じました。この仕事は、この例会で川合先生に対して「京武者」について要を得た質問をされた長村君に期待するところ多大です。
ちなみに、近藤先生とお目にかかったのは、故・安田元久先生が主宰されていた「『吾妻鏡』の総合的研究」の研究会以来のことで、例のごとく時間の経過について思うこと多大でした。
なお、懇親会では博士号を授与されたばかりの吉田賢司さん(おめでとうございます)、今回の例会を取り仕切って下さった木村英一さん、また日本史研究会の委員会の後に駆けつけてくれた髙橋昌明・山田邦和両先生らと楽しい一時を過ごすことが出来ました。これまた感謝申し上げる次第です。
例会や部会は、大会などよりも、ゆっくりと濃密な議論が交わせる機会だと思います。テーマ・報告者に即して、関東をはじめ各地から若い研究者が参加されるようになればよいのに、という感想を持ったことも付け加えておきたいと思います。
☆ 帰宅すると、早稲田大学文学学術院教授の日下力先生の御高著『平家物語転読』(笠間書院)が届いていました。『平家物語』全12巻のエッセンスが詰め込まれている一冊。ゆっくり拝読させていただきたいと思います。日下先生にあつく御礼を申し上げます