パンダはどこだ?、ならぬ八角九重塔はどこだ?

美川圭
No.9862


 昨日、必要があって、久しぶりに京都岡崎公園内の京都市動物園に行った。何かお目当ての動物があったのではなく、法勝寺八角九重塔に関する写真を撮るためである。   

 2010年6月26日に京都市埋蔵文化財研究所による発掘調査現地説明会があったのだが、私は残念ながら行けなかった。現状はどうなっているのだろうか、と期待して行ったのだが10年前に出したNHKブックスの『白河法皇』掲載のため撮影したときと同じ説明看板が立ち、あの世紀の基壇確認の情報はどこにもなかった。それどころか、近くにレッサーパンダ館ができていて、それが八角形で、しかも「パンダはどこだ?」という看板に八角形の図が書かれている。ここが基壇の場所かと、まぎらわしい(笑)ほどである。恥ずかしながら、家に帰って、埋文の現地説明会資料を見るまで、そう思い込んでしまった。そんなに小さいわけないだろ。

 まさに、パンダはどこか?、ではなく九重塔はどこか?、と叫びたい。初老の私はなぜ、よりにもよって平日の昼間に動物園に一人でいるのだ。

 京都市は重要な遺跡は、人々に知らせたくないのだろうか。塔の基壇の中心は、ちっぽけなレッサーパンダ館ではなく、もちろん古ぼけたちゃちな観覧車のところである。しかも、この法勝寺の説明盤を見るのだけにも入園料600円がかかる。東寺の五重塔よりもはるかに巨大な法勝寺九重塔は、平安後期から200年間も京都の象徴だったのに。何ともやり切れない。
 ちなみに、最勝寺跡のグランド地下にあった駐車場に通じる通路の六勝寺展示も撤去されていた。みやこめっせの法勝寺の模型もすでにない。岡﨑公園から六勝寺の痕跡は確実に消されてつつある。

お金で買えないものに価値を見いださない社会

No.9863

 そうですねぇ。経済優先の発展途上国ならいざ知らず。
 しかし、発展途上国でなくても、世はとてつもなく経済優先。歴史も文化遺産も観光産業に従属している観があります。
 一方では、地域振興という錦の御旗をかかげ、魂の入らない形で史跡(?)の整備に力を入れているところもあります。
 法勝寺跡は動物園ですが、西八条(梅小路公園)には水族館がオープンしましたね。最近、石垣の見つかった聚楽第(じゅらくてい)跡はどうなることでしょうか。 
 動物園も水族館も大好きなところですが、歴史的に重要な遺跡も大切にしてほしい。京都はあまりにも歴史遺産が多いので、市民の意識も行政も、いささか、その重要性に対する気配りに欠けるところがあるのではないかと思われる節があります。
 高校二年生の修学旅行の時、三十三間堂にびっしり並んだ仏様を見て、「我が故郷の千葉にこんな仏様が一体でも伝えられていたらなぁ」と感じ入ってしまったことが思い出されます。
 ほかにも、いろいろ書きたいのですが、自分でもウンザリしてしまいますので、もうやめましょう。

  北向きのわが研究室は、暖房が故障のままなので、外は春日和なのに極寒。「頭寒」はよいのですが「足寒」というか全身が寒く、これではやっぱり仕事になりません。耄碌したものです。