ひどいぞNスペ「崩れ落ちる兵士」

美川圭
No.9856

2月はじめに放送されたNHKスペシャル「沢木耕太郎 推理ドキュメント 運命の一枚~戦場写真 最大の謎に挑む~」を録画しておいた。時間ができたので、やっと一昨日見ることができた。

 スペイン内戦において撮影されたとされるロバートキャパの有名な写真「崩れ落ちる兵士」が実はヤラセ写真であったことを、克明な現地取材であきらかにする。さらに、この写真にはもう一人の撮影者がいたことをCGを駆使して実証し、それがキャパの恋人で数ヶ月後に戦車に轢かれて早世するゲルダタローであることを推定する。つまり、この負い目がキャパをしてノルマンデーをはじめとする危険な前線に身をさらさせ、インドシナでの最期につながる。「愛の物語」である。その謎解きの鮮やかさに、すっかり感心してしまった。

 ところが、この番組がでたらめであるというブログを偶然みつけた。その論は大きく言って2つからなる。

 1つは、この写真がヤラセであることは、欧米のカメラマンのあいだでは、常識であること。それをカメラマン沢木がしらないはずがないという。つまり、パクリだという。そんなこと謎でも何でもないというのだ。

 もう1つは、1936年9月にフランスの雑誌に掲載されたもう1つの写真が存在するという。それは、ほぼ同じ場面を撮っている。有名な写真は、写真としてできがよかったので、採用されたというのである。番組では演出写真でありながら、たまたま兵士が倒れたというのは「偶然」という前提だが、実は倒れたのも「演技」だったということになる。撮影者が2人いたとしても、2人はその場面を協力して撮影したことになる。そして、反ファシズムの立場で世界に発信しようとした。こちらの方が重大で、番組であえて反証となる資料を隠蔽して、「愛の物語」にねじまげ、でっち上げたというのだ。

 このブログの意見、たいへん説得力がある。そして、歴史をやるものにとって、大きな教訓ともなる。あまり知らない分野については、その無知ゆえに、「常識」を知らないで、「新説」に騙されてしまう。また、有力な反証資料にきがつかない。そして、CGのような技術に幻惑されてしまうのである。「愛の物語」にも弱い。気をつけよう。


http://blog.goo.ne.jp/zaurus13/e/5b8cdef408ac2df624c6f23d567527aa
編集:2013/02/20(Wed) 13:18

すごいぞ、研究室PCの復活

No.9857

 この番組、私も録画して見ました。私は素直ではないので、見た段階から訝しさを感じておりました。この件については、石浜さんが早々にRTしておられましたね。
 
 研究室では、昨日、鈴木君御夫妻がPCの更新作業を行ってくださいました。人間もあんな風に蘇れたら・・・。鈴木君はまさに「神」でした。

 ラボール学園の日本史講座<古代・中世編>の募集が始まったようです。今年のテーマは「職をめぐる日本史」。開講日は 毎週月曜日、全14回で、開講時間は 午後6時30分~午後8時30分 。受講料 11,500円(資料代含む)とのことです。
 各回のテーマと講師は下記の通り
 ① 4月 1日 職業人としての渡来人
 井上 満郎(京都産業大学名誉教授・京都市歴史資料館館長)
 ② 4月 8日 遊女と女房
 辻 浩和(日本学術振興会特別研究員)
 ③ 4月15日 古代・中世の医師と宗教者
 上野 勝之(京都大学講師)
 ④ 4月22日 平安時代の流通業
 佐藤 泰弘(甲南大学教授)
 ⑤ 5月13日 検非違使と武士-平安時代の警察-
 野口 実(京都女子大学教授)
 ⑥ 5月20日 冷泉家の歌人たち
 美川 圭(立命館大学教授)
 ⑦ 5月27日 借上-鎌倉時代の金融業-
 伊藤 啓介(立命館大学講師)
 ⑧ 6月 3日 僧侶の「家」
 横内 裕人(文化庁文化財調査官)
 ⑨ 6月10日 室町期京都の職人と「町人」
 三枝 暁子(立命館大学准教授)
 ⑩ 6月17日 茶をめぐる人々
 橋本 素子(京都光華女子大学講師)
 ⑪ 6月24日 同朋衆―室町文化のプロデューサー―
 橋本 素子(同上)
 ⑫ 7月 1日 さまざまな芸能者
 野田 泰三(京都光華女子大学教授)
 ⑬ 7月 8日 出頭人―天下人の側近たち―
 尾下 成敏(京都橘大学准教授)
 ⑭ 7月22日 海商と倭寇―東シナ海交流を担う人々―
 中村 翼(日本学術振興会特別研究員)
 ※ 詳しくは⇒http://www.labor.or.jp/gakuen/kouza_school/school_2013haru.html#no6

 ☆ 神戸大学名誉教授髙橋昌明先生より、新刊の御高著『平家と六波羅幕府』(東京大学出版会)を御恵送頂きました。
 高橋先生に、あつく御礼を申し上げます。
 平家の「六波羅政権」を「幕府」と評価すべきかどうかは、さらに議論の余地があるように思います。

 ☆ 大阪大学大学院の芳澤元さんから、御高論「室町期禅宗の習俗化と武家社会」(『ヒストリア』235)を御恵送頂きました。
 芳澤さんに、あつく御礼を申し上げます。
 下総東北部に本拠を置いた東氏や国分氏といった千葉氏一族から、京都で活躍する禅宗僧が排出しているのは興味深いところです。そういえば、旧稿『鎌倉時代における下総千葉寺由縁の学僧たちの活動」(京都女子大学宗教・文化研究所『研究紀要』24)で紹介した、兼好法師と親しい関係にあった渡元僧道源も東氏一族の木内氏の出身でした。

 ☆ 神奈川県立金沢文庫の永井晋先生より、DVD『武家の都・鎌倉と金沢文庫』を御恵送頂きました。
 ゼミで視聴させて頂こうと思います。
 永井先生に、あつく御礼を申し上げます。