「ならぬことはならぬものです」か?

No.9819

 今年は、大河ドラマをあまり神経をとがらさずに視聴できます。幸いなことですが、ちょっと思いだしたことがありますので一筆。
 皆さんよく御存知の野口実という人が、1994年に出した『武家の棟梁の条件』(中公新書)という本の中で、こんな事を書いています。

 「戊辰戦争で薩摩軍に手酷い仕打ちをうけた福島県の会津若松。実はここも男尊女卑の本場である。幕末に至るまで会津若松藩歴代の藩主に遵守された藩祖遺訓のなかには「婦女子の言、一切聞くべからず」という一条があった。
 面白いことに近世の会津藩と薩摩藩は藩士の子弟教育に共通した方法をとっていたらしい。それは地域ごとの少年(青少年)たちの自主的な学習組織が存在することで、薩摩では「郷中」、会津では「什」とよばれる。
      ・・・・・・・・(中略)・・・・・・・
 幼い会津藩士の子弟が「遊びの什」の集会で毎日復唱した「申合せ」の中には「戸外で女の人と言葉を交えてはなりませぬ」という条文があった。これは薩摩武士の「自然と婦人女子を忌み嫌うは蛇まむしを憎むに似て、道路に美人に逢えば、身不潔に及ばんとするがごとく避け遠ざかりつつ」(『倭文麻環』巻之二)という女性観と共通の土台にのった観念である。しかも什の「申合せ」の次の条文は「ならぬことはならぬものです」というもので、これは多様な価値観や生き方を否定する頑迷な人間をよしとする精神風土を育てた。
 こうみると薩摩武士と会津武士というのは似たもの同士といえそうである。そういえば戊辰戦争の白虎隊と西南戦争の私学校党のイメージには何かオーバーラップするものがある。」(p170~171)

 20年近く前の本ですから著者の「野口さん」の御意見も少しは変わっていることと思いますが。一つの見方ではあると思います。

 本日はシラバスを作成していたのですが、何かの障害が生じたらしく、保存されるはずが、エラー表示が出て、せっかく書いたものが消滅。昨日PC入力の悪口を書いた為でしょうか?
 IT社会というのは、常に根底から全てを失いかねないという不安がつきまといます。

 帰省中の皆さんも、そろそろ京都に戻られることと思います。道中くれぐれもお気をつけて。
 そういえば、私が学生の頃、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』という小説が人気でした。たしか、映画にもなりましたね。

 明日は研究室にいるつもりです。
編集:2013/01/06(Sun) 22:18

新年あけまして『吾妻鏡』

No.9820

 明日は新年初回の『吾妻鏡』です。
 講読予定は以下の通りですが、新年初回ということもありますし、年末年始のことなどいろいろお話し合いしつつ、ほどよく読むようにしましょう。

 日時:2013年1月8日(火)午後3時頃~(予定)
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:元久二年(1205)十一月十五日・二十日、十二月二日・二十四日の各条
     元久三年(建永元年、1206)正月十二日・二十七日、二月四日・二十日・二十二日、三月十二日・十三日、五月六日、六月十六日・二十一日、七月一日・三日、十月二十日・二十四日、十一月十八日・二十日、十二月二十三日の各条

 2013年1月は、8日・15日・22日に開催予定です。

 火曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。
 基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、新年から何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。

 後世の歴史家(屋)

No.9821

 『吾妻鏡』の講読会。会の創立と発展の過程において、いま福井にいる山本陽一郎君が「右大将家」みたいな存在。だとすると、「右大臣家」が長村君で、岩田君は義時・泰時・時頼を一人で担っているといった感じか?そうすると、「二位殿」に擬せられるのは山本さんでしょうねぇ。
 「西八条禅尼」とか「伊賀の方」の比定が面白くなってきますね。

 今朝の京都は極寒。車のリアガラスにこびりついた氷を溶かしてから出立。私が知る限り、大学の構内で一番暖かかったのは、図書館分館。地下だからでしょうか。北向きの私の研究室は冷蔵庫の中のごとし。目下、「頭暖足寒」の状態で思考停止中です。

 『紫苑』の原稿、年末提出を執行猶予中のみなさん、明日は必ずよろしくお願い致します。