軍事貴族ですから源氏も商業を重視しましたす

No.9391

 最近、大河ドラマの関係で平清盛や平家に関するテレビ番組が多いようです。その中で、ある方が平家は日宋貿易に見られるように商業活動を重視したのに対して、東国を基盤とした源氏は農業重視だといったような話をされていました。それが、一般的な認識なのかも知れません。
 そういう対立的な捉え方は分かりやすくてよいのかも知れませんが、しかし、源氏も平家も同じように都市や流通・生産に依存する軍事貴族ですから、所期するところは同じであるはずです。
 源氏など、頼義の時代から武器・武具の材料を求めて奥羽への進出を図ったりしています。為義は大物浜に拠点を持っていましたし、為朝の鎮西進出も、貿易の利を求めたものと捉えることが出来ます。平家は保元の乱後、島津庄を押さえるなどして、その権益を継承したに過ぎないのです。
 中世前期武士論の研究において、今は、「東西」や「源平」など、従来の対立的な図式・捉え方を相対化すべき段階だと思っています。拙著『武門源氏の血脈』で述べたとおりです。

 それから、平清盛はけっして東国を軽視していたわけではありません。その点については、旅の文化研究所発行の『まほら』の70号(特集 東海道)に「清盛の富士・鹿島参詣計画と頼朝の上洛」という小文を書きましたので御覧頂ければ幸いです。

 京都女子大学のみなさま。現在配布中の『京都女子大学通信』の103号に「研究室訪問 野口先生に聞く!歴史研究とは?~歴史からみる京都女子大学の立地の魅力~」という記事を載せていただきました。
 昨年度の現代社会学部「基礎演習Ⅰ」で、立派な報告をしてくれた高田鈴さんたちの取材によるものです。大きな写真が載っているので恥ずかしいのですが、御紹介まで。

 ☆ 大阪大学大学院の芳澤元さんから、御高論「応永期における渡唐天神説話の展開」(『史学雑誌』120-10)・「慶長期の絵画・漢詩の製作過程」(『文学』12-5)を御恵送頂きました。
 芳澤さんに、あつく御礼を申し上げます。 

古文書学会見学会の予告

元木泰雄
No.9392

 日本古文書学会の見学会のご案内
 先日、2月18日に関西学院大学にて、日本古文書学会見学会を開催することをお伝えしましたが、続いて3月13日火曜日に、京都府立総合資料館にて、上島先生の御解説による見学会を開催いたします。
 これまで、上島先生の御解説による東寺百合文書の見学会は三回にわたって行われましたが、今回は最終回になります。
 国宝の文書を間近で拝見できる得難い機会です。
 ふるってご参加ください。
 時間は13時から16時の予定です。
 詳細は改めてご案内致します。