東国武士団に関する最新の研究書

No.7461

 2007・8年の2回にわたって茨城大学で開催された東国武士に関するシンポジウムの成果を踏まえて、高橋修編『実像の中世武士団  北関東のもののふたち』が高志書院から刊行されました〔A5判・上製・340頁 ISBN978-4-86215-081-3、6,500円(税別)〕。
 構成は以下のとおり、

序 -研究課題と本書の構成-……………………………………………茨城大学/高橋 修
   Ⅰ いま、北関東の中世武士団を考える
「東国武士」の実像…………………………………京都女子大学宗教・文化研究所/野口 実
東国武士論ノート……………………………………………………………筑波大学/山本隆志
関東武士研究の軌跡……………………………………………東京大学史料編纂所/伊藤瑠美
   Ⅱ 京と向き合う 
東国武士団と都鄙の文化交流………………………………茨城県立境西高等学校/内山俊身
下野藤姓足利一族と清和源氏………………………………………群馬県立文書館/須藤 聡
下野宇都宮氏と在京…………………………………………………栃木県立博物館/江田郁夫
武士の成立と関東…………………………………京都女子大学宗教・文化研究所/岩田慎平
在京を継続した東国武士………………………………日本学術振興会特別研究員/長村祥知
   Ⅲ 奥州と結ぶ
平泉藤原氏と北関東の武士団…………………………………東北芸術工科大学/入間田宣夫
金砂合戦と常陸佐竹氏………………………………………………茨城県立歴史館/宮内教男
下野那須氏…………………………………………………大田原市那須与一伝承館/阿部能久
   Ⅳ 地域社会と武士団
「常陸平氏」再考……………………………………………………………茨城大学/高橋 修
常陸一の宮・鹿島社の武士たち…………………………………水府明徳会彰考館/前川辰徳
中世武士の拠点と陸上交通……………………………………市立市川歴史博物館/湯浅治久
武士団と町場 下野小山氏…………………………………………栃木県立文書館/松本一夫
地域の町場に集う武士たち………………………………駒場東邦中学・高等学校/田中大喜
武蔵国と秩父平氏………………………………………………東海大学非常勤講師/落合義明

 京都や奥羽との関係も踏まえた、東国武士研究の現在の水準を示す優れた研究書だと思います。刊行を進められた高橋修先生の御尽力に感謝申し上げる次第です。

 上掲の如く岩田君・長村君の論文も掲載されています。岩田君の肩書きには驚きましたが、間違いではありません。
 ちなみに、拙論は、日本史研究会2007年9月例会における報告「東国武士と京都」の内容と一部重複するものです。

 まだ、ざっと眺めただけですが、世代や活動している地域などの条件によって研究者の武士認識や問題意識が、かくも異なってくるものか、ということを具体的に感じることができました。そうした実態を踏まえて、建設的な議論を展開するために、それこそ、若い研究者たちの列島規模での交流が望まれるところです。

 ところで、岩田君・長村君。同学の諸姉兄をお誘いして、昼食をはさみながらでも、論文の合評会(相互批判の会)を開きませんか?

オランダ報告・番外地(ロシア編)

No.7463

 京都女子大学宗教・文化研究所「共同研究員」の岩田です。『実像の中世武士団 北関東のもののふたち』の執筆者紹介欄にもそのように紹介されておりますよ。
 論文の合評会は賛成です。ぜひ夏休み中に実現いたしましょう。

 さて、今回はオランダ報告の番外地としまして、途中で立ち寄ったロシアのことに少し触れたいと思います。

 ※ロシアの航空会社(Аэрофлот)
 オランダに行くのに成田発着モスクワ経由のアエロフロート・ロシア航空を利用しました。いろいろな評判のあるアエロフロートですが、私はそもそも海外路線の利用自体が初めてでしたので、何が起きても、何を出されても、ただ「ほほぅ」と納得するだけでした。フライト自体は長時間でしたが、概ね快適でした。
 機内放送は、日本発着の場合ロシア語・英語・(たどたどしい)日本語で、アムステルダム発着はロシア語と英語でした。
 機内食は、日本発の場合日本から食材を積み込むようですから、巻き寿司(お新香巻)やグリコの抹茶アイスなどが出されました。また、「肉ですか魚ですか」の質問に「魚」と答えると、発着地に関わりなくほぼ鮭が出てきました。ロシアの方は鮭が大好きなんでしょうか。鮭は切り身ではなく、ハンバーグのように丸く固められていました。味付けは全体的に薄味で、アエロフロートロゴ入りの塩とコショウが付いてきました。なお、おしぼりもロゴ入りで、こちらはローズマリーか何かのとても良い香りがしました。
 飛行機はロシア製(旧ソ連製)かと思いきや、普通のエアバスが飛んでいました。かつては世界初の超音速旅客機ツポレフTu-144(コンコルドっぽい飛行機)なども飛んでいたそうなんですけどね。空港などと同様に、ロシアは「かつて共産主義の中心」だったというようなこだわりは一切(?)無いようで、良いと思うものは西側(という言い方も近頃はしませんが)のものでもなんでも柔軟に取り入れてしまうようです。空港にはコカコーラやスプライトもたくさん置いてましたし、「USドルなら使えるよ」という免税店も多かったです。これがグローバル化ということなんでしょうか。なお、離着陸はたいへんスムースでした。

 ※モスクワの空港(シェレメチエヴォ国際空港)
 『空港の設備、職員の対応、市内へのアクセスなどあらゆる面で評価が低いことで知られる(ウィキペディアより)』そうですが、確かにいくつものターミナルビルが乱立する構造はわかりにくかったです。ご存じのようにそれで飛行機一本乗り過ごしてしまいましたので…(構造のせいだけではないですが)。
 職員さんも決して「きめ細かい」わけではなく、むしろ皆さん「鷹揚」なので、それが見ようによっては「ちゃんとしてない」と思われるかもしれませんね。しかし、その職員さんたちを頼らないことには乗り継ぎ一つできないわけで、それはまぁ慣れるしかないのかもしれませんね。いろいろと接点を持てば、ロシアの方はみなさんそれなりに親切だというのが私の感想です。スターウォーズに出てきた惑星カミーノの人たちみたいな感じですね(※外見ではありません)。
 成田発着はターミナルD(2009年11月15日に運用開始)、アムステルダム発着はターミナルFを利用しました。
 ターミナルDはこざっぱりとしたきれいな建物で、「どこかで見たことあるようなカフェ」や各種免税店も充実していました。カフェの内装には、アポロ宇宙船の宇宙服の置物が置いてあり、「ソユーズはどうした!」といった突っ込みどころ満載ではありましたが。なお、このターミナルで偶然に、ロシア・プレミアリーグのアムカル・ペルムに移籍が決まった巻誠一郎選手に出会いました。巻選手はちゃんと乗り継ぎできたんでしょうか。新天地での巻選手のご活躍をお祈り致します。
 ターミナルFはモスクワオリンピック開催に向けて建設された建物だそうで、なるほどやや古めかしい印象でした。『すでに陳腐化・老朽化が進んでおり、天井が低く照明が暗いことで有名である。各種手続きも滞りがちで、入国審査に一時間かかることもある。レストラン・バー・免税店などは辛うじて揃っているものの、椅子はほとんど無い(ウィキペディアより)』とのことで、だいたいそのとおりですが、椅子はそれなりにありました(その椅子に寝転んでいる人は私も含めてけっこういました)。日本にもよくある昭和五〇年代風の建物ですね。喫煙ブースも数カ所ありましたが、空港の職員さんは掃除係の人も含めてタバコを吸わない人が多いようです。また、ロシア人家族が飛行機を待つ間にお弁当を広げるなど、なかなかほのぼのとした光景も見られました。

 資源はたっぷりある、人口も多い、科学技術もソ連科学アカデミー以来の伝統がありますし、国土も広い。堂々たる世界の超大国ロシアは、「社会を元気にしましょう」とか「がんばろう!」などと気勢を上げずとも、淡々と我が道を行くかの如くです。では一体どこを(何を)目指しているのか。周辺の小国の人たちにはそれがわかりにくい…という不気味さは拭えませんが。