山田先生より『平安京とその時代』頂戴。

No.7003

 同志社女子大学の山田邦和先生から、御高論「保元の乱の関白忠通」収録の朧谷壽・山中章編『平安京とその時代』(思文閣出版)を御恵送頂きました。
 この本が出版されるに至った経緯や、御高論の趣旨については、山田先生御自身のブログを御覧いただくのが一番良いと思います。↓
http://heike.cocolog-nifty.com/kanwa/2010/01/post-7399.html

  山田先生の御高論。結論の一つが「源義朝は軍事的にはドジばかりふんでいる無能力者である」とのこと。
 最近私は、義朝が坂東に構築した地域権力を高く評価した論文を書いたばかりなので、よく読ませて頂いて、反論すべきは反論したいと思っております。
 なお、同書には元木泰雄先生の「平重盛論」が掲載されています。国文学で『平家物語』を専攻されている皆様にとっても必読論文かと存じます。先般、中世戦記研究会(於、都立豊多摩高校)で発表させて頂いた私見も「野口実氏のご教示による」として紹介されております。
 山田先生に、あつく御礼を申し上げます。

 期末試験や入学試験といった慌ただしい時期を迎えております。年度内に済ませる必要のある研究出張も数件。また、2月末締切の原稿も2本。『紫苑』編集長の山本さんやゼミ旅行の幹事をかってでてくれた岩田君らとともに、春に向かって頑張りたいと思います。 

Re: 山田先生より『平安京とその時代』頂戴。

山田邦和
No.7004

>野口先生

『平安京とその時代』のご紹介、ありがとうございます。

源義朝に対する私見、厳しすぎますでしょうか?
ただ、私見はあくまで、義朝の「都での戦」に限定しての話ですので、ご理解賜りますよう、よろしくお願いいたします。彼はおそらく、東国における戦には長けていたのでしょうし、そこでの権力形成の手腕があったことは野口先生のおっしゃる通りなのだと思います。
一方、保元・平治の乱はいうまでもなく、京都の貴族社会を舞台とし、都でおこなわれた戦であります。それは、単なる武力のぶつかりあいなのではなく、貴族社会の政治闘争そのものなのでしょう。その中では、戦は、単に相手を武力で圧倒すればよいのではなく、自分の行動が政治的にどういう結果を生み出すか、それが大事になってくる。義朝の場合、たとえは平治の乱での振る舞いに典型的にみられるように、敵を軍事的に打倒することだけで、貴族社会の大多数からは見放されてしまう結果を生んでいる。このあたりが政治的駆け引きに長けた清盛との違いであり、義朝の「無能力」のゆえんではないかと考えました(あと、義仲なんかもそれに該当するでしょうね)。

いずれにせよ、私にとっては新しい研究テーマとなりました。御指導御鞭撻をよろしくお願いいたします。