査読の余得。「源為義」関係論文紹介。

No.6802

 論文査読の必要上、上横手雅敬先生の「後鳥羽上皇の政治と文学」(『権力と仏教の中世史 文化と政治状況』法蔵館、2009年、初出1994年)を拝読する機会を得ました。
 当ゼミのメンバーは史学と文学を専攻する人が多いのですが、この史学と文学との間には深くて暗い川が流れている(昔、こんな歌詞の歌がありましたが)。その間隙を埋め、相互理解をはかる上からも、この論文はとても貴重だと思った次第です。
 文学、とりわけ和歌文学を勉強されている方は、ぜひ御一読を。

 もちろん、歴史学の方からも、文学研究の成果から学ぶべき点が山のようにあります。目下、執筆中の拙文では、井上宗雄『平安後期歌人伝の研究』(笠間書院、1978年)から多くの裨益を蒙らせていただいております。

 夏休みに「源為義」について考えたいので、先行研究を教えて欲しいというリクエストがありました。そこで、この場にて。
 ・米谷豊之祐「源為義 其の家人・郎従の結集・把持」(『院政期軍事・警察史拾遺』近代文藝社、1993年、初出1974年)
 ・多賀宗隼「源為義」(『日本歴史』第396号、1981年)
 ・上横手雅敬「院政期の源氏」(御家人制研究会編『御家人制の研究』吉川弘文館、1981年)
 ・渡邉敬子「源為義について-その検非違使としての性格-」(聖心女子大学大学院機関誌『文学・史学』第4集、1982年)
 ・元木泰雄「保元の乱における河内源氏」(『大手前女子大学論集』第22集、1987年)
 ・野口実「豪族的武士団の成立」(元木泰雄編『日本の時代史7 院政の展開と内乱』吉川弘文館、2002年)
 ・同 「源為義の闘い」(『源氏と坂東武士』吉川弘文館、2007年)
など。

 ☆ 摂南大学の美川圭先生より、御高論「上皇と院政-なぜ退位した天皇が権力をもつことができたのか-」が収録されている、近藤成一ほか編『中世 日本と西欧-多極と文献の時代-』(吉川弘文館)を御恵送いただきました。
 本書には、2004年12月にボン大学で開催された国際会議「中世 多極と分権の時代-日本では? そして西欧では?」における報告(小山靖憲先生の遺稿も)が収められています。
 美川先生にあつく御礼を申し上げます。

 ☆ 浅草金龍寺の御住職である並木優記師より、『無相大師六百五十年遠諱記念 正法山妙心寺開山 関山慧玄禅師伝』(妙心寺遠諱局刊、廣田宗玄執筆、春秋社発行)を御恵送いただきました。
 私には難解な内容ですが、妙心寺の建築を専攻するメンバーに役立ててもらいたいと思っています。
 並木師にあつく御礼を申し上げます。

お盆の鎌倉

No.6808

 史料講読会のご案内が続々と出されておりますので、火曜日の『吾妻鏡』もとりあえず少し先の方までの範囲を掲出したいと思います。いつから再開するかは未定ですが…。

 範囲:宝治二年(1248年)正月三日・七日・二十五日、二月五日・十八日、三月十八日、四月七日・二十九日・三十日、五月十五日・十六日・十八日・二十日・二十八日、六月五日・九日・十日・十一日・二十一日、七月三日・七日・九日・十日、八月一日・十日、九月七日・九日・十九日・二十日・二十二日・二十六日、十月六日・二十四日・二十五日・二十七日、十一月十三日・十五日・十六日・十八日・二十三日、十二月五日・十二日・二十日、閏十二月十日・十六日・十八日・二十日・二十三日・二十五日・二十六日・二十八日
     建長二年(1250年)二月五日・二十六日、三月一日・三日・五日・十三日・十六日・二十日・二十六日、四月二日・四日・五日・十六日・二十日・二十五日・二十九日、五月十四日・二十日・二十七日・二十八日、六月三日・十日・十五日・二十四日、七月一日・五日・八日・二十二日、八月七日・十八日・二十六日、九月十日・十八日、十月七日、十一月十一日・二十八日・二十九日、十二月三日・五日・七日・九日・十一日・十五日・二十日・二十三日・二十七日・二十八日・二十九日の各条

 毎週火曜日の『吾妻鏡』講読会は、参加者のみなさんの自主的な積極性によって支えられております。基礎的な史料読解のニーズにも対応しておりますので、夏が明けたら何か新しいことを始めてみようという方は、まずは見学からでもどうぞお気軽にご参加ください。

 ところで、来週11日から大学のゼミ旅行にご一緒させていただけることになりました。鎌倉に行きます。日頃読んでいるところをじっくり歩いて見て回れる機会なので、とても楽しみです。