運慶仏が海外へ流出?!

池谷初恵
No.6117

野口先生、ご無沙汰しております。

東国ではショッキングなニュースで揺れています。
届いたメールをそのまま掲載させていただきますが、文部科学大臣あての要望書署名もはじまりました。
無力な私たちとしては、とにかく世論を喚起させることくらいしかできません。取りいそぎ、皆さまにお伝えしたいと思います。

さる2月11日付読売新聞の一面トップに「運慶 米で競売へ」という衝撃的なニュースが掲載されました。競売は来る3月18日ニューヨークにて行われるとのことであり、海外流失が懸念されています。この仏像こそ2004年に山本勉先生(現・清泉女子大学教授)の研究によって運慶作とされた大日如来坐像であり、すでに重要文化財になっている光得寺大日如来坐像と酷似することや、それよりやや古い建久年間前半の作品と考えられることから、もともとは足利義兼が建立した足利樺崎寺の下御堂(法界寺)に安置されていた三尺皆金色の大日如来像にあたるものとすることができ、足利氏と極めて深い関わりをもつ像でもあります。
現在史跡樺崎寺跡では、国庫補助事業を受け保存整備事業が進行しており、本像が安置されていたものと考えられる下御堂(法界寺)の跡も発掘調査によってその内容が明らかになっております。このような折、発覚した運慶作大日如来坐像が競売にかけられるというニュースは、たいへん残念なことであり、もし海外へ流失するということともなれば、日本人の魂を持ち去られるにも等しく、痛恨の極みであります。
このようなことから、競売によって一部資産家や愛好家のもとに渡り死蔵されたり、外国の博物館や美術館に流出したりすることのないよう、国にて購入し恒久的な保護がなされますよう、要望します。

ニュースはこちら http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080212/acd0802121133001-n1.htm

北条氏と足利氏

No.6118

 池谷先生、お久しぶりです。
 東国における運慶仏といえば、先ず思い出されるのが北条時政発願の伊豆願成就院にある阿弥陀如来像・不動三尊像・毘沙門天像ですが、この大日如来像は義兼が時政の婿になったことに始まる北条氏と足利氏の密接な関係を伝える重要な価値も有しているのではないかと思います。伊豆の国市民にとっては特に看過しがたい事件かと存じます。

 当方、目下、12世紀段階における摂関家の地域間ネットワークに関心を持っております。南九州などでは摂関家領であった地点から、しばしば楠葉型瓦器(河内国の摂関家領内で生産)の検出が報告されているようですが、東国ではそのような事例はあるのでしょうか。

 ☆ 本日、横須賀の鈴木かほる先生より、御高著『相模三浦一族とその周辺史 その発祥から江戸期まで』(新人物往来社)を御恵送いただきました。
 鈴木先生にあつく御礼を申し上げます。