書評会「資料?」の御案内。

No.5553

 明日、11日(日)付『神戸新聞』の「ひょうご選書」という兵庫県に関係する書籍を紹介する欄に、4月7日(土)に開催される書評会関連「資料?」が掲載される予定です。新聞を入手可能な方は、ぜひ御覧おき下さい。

 昨日の『吾妻鏡』講読会は、出席者(山本君も久しぶりに顔を出されました)の持ち寄られた各地からのたくさんのお土産で、さながらお菓子の品評会の有様。とても食べ尽くせず、多くは私の研究室に保管中です。賞味期限がせまっているお菓子も多いので、大学にお出での節は研究室にお立ちより下さい(不在の節は悪しからず)。

 『吾妻鏡』講読会の途中、お見えになった印刷屋さんに、ほとんどの執筆者立ち会いのもと『紫苑』第5号の二校をお渡ししました。ところがここでアクシデントが出来。活動記録のゼミ旅行記にカラー写真を掲載するつもりでいたのですが、最初の見積もり段階でそのことが踏まえられておらず、カラーにする場合の増額分を支払えないとのこと。年度当初に確保した予算内に収まっていたのですが、きちんと連絡・確認をとっていなかったのは失敗でした。楽しみにされていた皆さんに、この場を借りてお詫び申し上げます。
 しかし、論文・研究ノートなど、力作揃いで、そちらの方は期待以上のものをお届けできると思います。御期待下さい。

 ☆ 京都大学大学院生の山田徹さんから御高論「南北朝期の守護在京」(『日本史研究』534)を御恵送いただきました。最近、中世前期の地方武士の在京活動が注目されていますが、その延長線上の問題として、とても興味深く拝読させていただきました。
 山田さんにあつく御礼を申し上げます。また、今後の御活躍に期待するところです。

Re: 書評会「資料?」の御案内。

元木泰雄
No.5555

  野口先生、ご多用の折に拙著を御紹介頂き、有難うございました。

 まさに過分のご褒詞に、面映い思いでございます。
 ここまで深く御理解いただいたことに、心より御礼を申し上げる次第でございます。
 本書を書いたことは決して無駄ではなかった、本当に書いてよかったと熱い思いがこみ上げてまいりました。

 当該期の研究は史料が限定され、しかも信憑性に問題があるだけに、どのような方法を取るのかが、大きな問題になろうかと存じます。その意味で、拙著の史料操作は、歴史学、国文学双方から色々な議論の対象になるものと思います。
 総じて、中世前期野歴史学は、歴史観、方法論が厳しく問われる時代になりました。
 当方、これまで『複合権門』、公武一体の歴史観で、平氏政権論まで論じて来たのですが、これで果たして鎌倉幕府の成立が論じられるのか、という思いを抱き続けておりました。本書は、幕府を論する試金石になろうかと思います。
 その面でも、ご批判、ご教示をお願い申し上げます。
 
 7日の書評会では、野口先生はじめ、参加者各位に是非忌憚ないご意見を賜りますように、お願い申し上げます。
 

吾妻鏡の御案内。

No.5558

 次回の『吾妻鏡』ですが、以下の通り予定しております。
 日時:3月26日(月)13:00~
 場所:京都女子大学L校舎 3階 宗教・文化研究所共同研究室
 範囲:『吾妻鏡』承久三年閏十月十日条の残り~

 おそらく次回で承久三年は終了となります。そのまま承久四年(貞応元年)に入ってもよいですが、今まで読んだ部分を簡単に振り返るのもいいかなとも思います。
 

書評会「資料?」の御紹介。

No.5562

3月11日付『神戸新聞』読書欄より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ひょうご選書  元木泰雄『源義経』
  鎌倉幕府の成立史を見直し 歴史学の真骨頂示す

  神戸をこよなく愛する研究者による、最高水準の研究成果に基づく義経論である。しかも、単なる義経の伝記ではなく、鎌倉幕府成立史の見直しを目指したもので、一般向けに平易に書かれているが、その内容は学説史上画期的な価値を有する。歴史学の真骨頂を示した「ほんまもの」の歴史ファンにはたまらない本である。
 義経が頼朝の「御曹司」と呼ばれたことや当時の政治システムに関する豊富な知識を前提に、政治状況の変動にともなう頼朝と義経の確執の背景を鋭く解明していく。とりわけ注目されるのは、後世、鎌倉幕府によって編纂された『吾妻鏡』における義経関係記事の虚構を暴き、同書に収められている「腰越状」の実在も明確に否定されたことである。説得力は十分であり、研究者間の長年の論争もこれで決着がつくことだろう。
 著者が史料として信頼するのは同時代に都の貴族の手によって書かれた日記類である。神戸市域が戦場になった「一ノ谷合戦」については、九条兼実の日記『玉葉』の、山の手から多田行綱が平家の陣に攻め込んだという記事に注目する。行綱は摂津源氏の一員であるが、義経は彼のような西国の武士を編成して木曾義仲や平家の軍を破ったことを明らかにする。素朴で精強な東国武士が、貴族化して軟弱な西国武士を蹴散らしたとイメージされがちなステレオタイプの源平合戦像に再考を迫るものである。
 結果論に堕することなく、同時代の人間の息吹を再現しようと努力する著者の研究姿勢は、あの阪神・淡路大震災の被災体験が大きく影響しているようだ。義経は日本人にとって最もポピュラーな英雄である。地元の生んだ傑出した歴史学者による義経論を通して、目から鱗の落ちるような歴史的事実解明の面白さ、そして源平内乱期に生きた人々の息づかいに触れていただきたいと思う。(吉川弘文館・一七八五円)

Re: 書評会「資料?」の御案内。

元木泰雄
No.5565

 野口先生、深く読み込んでいただき有難うございました。
 心より感謝申し上げるばかりでございます。
 
 ご紹介のお蔭で、Amazonのランキングも上ってまいりました。
 それにしても、義経論の横に同じ出版社が、「義経だけが英雄ではない」という本をならべるのはどんなもんでしょうかね(笑)