「締切間近」に晩秋の京から新刊のご紹介

No.5223

 >美川先生  『院政』再版の由、ご同慶の至りです。一般の読者には難解な部分もあろうかと思いますが、中世前期政治史に関する今日の研究水準を反映した最高の一般向けの書物として各層に受け入れられているのだと思います。そろそろ新聞の読書欄に登場しても然るべきだと思うのですが。

 さて、私はあと二日半。卒論執筆中の4回生のみなさんは、あと三週間ほどで、いよいよの締切です。しっかりやりましょう。
 もっとも、私は締切をとっくに過ぎてしまって御迷惑をおかけしている仕事が複数有りますから(こういう時に(汗)という記号を使うのでしょうか?)、当分は明日が締切のつもりで精進しなければ大方の指弾を受けることになるでしょう。

 つぎに、先般、お誘いを頂いた苦集滅路越えについて。
 日曜日に雨の中を決行されたとのことです(天候は主催者のお名前の故かも知れません)。ちなみに、『明月記』によれば、定家がここを歩いたのも雨の日だったので、絶好の?苦集滅路日和(?)ということになるのだそうです。
 「苦しみを集めて滅する(!)ことができたかは分かりませんが、頭の中で、初めて平安京と山科が、点ではなく線でつながり、ひいては平安京から東国への道の一つがつながりました」という御感想をいただきました。とても有意義な「実習」だったのだと思います。
 ちゃんとオチもついていて、「歩いて1日を経た現在、大変な筋肉痛という「苦」だけは、滅することも減じることもなく発生したことをお伝えしておきます…」
とのことでした。

 ☆ 愛知学院大学の福島金治先生より新刊の御高著『安達泰盛と鎌倉幕府-霜月騒動とその周辺』(有隣新書)を御恵送いただきました。さすがにあらゆる文献史料に通暁された著者の手になる本だけあって、たとえば藤九郎盛長に関係する事実についても、私には新発見が満載。『吾妻鏡』講読会の参加者には座右の書とすべき本だと思います。
 福島先生にあつくお礼を申し上げます。
 なお、有隣新書にはほかにも、恩師貫達人先生監修の『実朝と波多野』をはじめ、貫達人・石井進『鎌倉の仏教』・湯山学『波多野氏と波多野庄』・安田元久『武蔵の武士団』・永井路子『相模のもののふたち』といった優れた内容で且つ面白い本がたくさんあります。

 今日の京都は空気が澄み切って四周がきれいに見渡せ、しかも寒くありません。そういえば、私の初上洛となった高校の修学旅行は、ちょうど38年前の今頃でした。あのとき、清水寺の舞台の上から、「あの辺りが鳥部山か」と眺めた辺りが今の職場。「諸行無常」であります。