書庫に籠もって、遥か昔の都の西北を想う。

No.5220

 原稿に追われる中、書棚で当面の課題と無関係な論文に引き込まれてしまうことがあります。
 最近の例では『歴史教育』第11巻第6号(1963年)の【特集1】鎌倉政権の成立に収められた論文。
 水戸部正男「鎌倉時代政治の基調」、曾根地久「鎌倉幕府成立期における社寺」、田中稔「鎌倉初期の政治過程」、八幡義信「鎌倉幕政における北条時政の史的評価」、飯田久雄「鎌倉時代における朝幕関係」、上原栄子「鎌倉時代摂関家の経済的基礎」
いずれも今読んでも示唆的な内容です。
 もう一本は、わが恩師の論文。
 貫達人「鎌倉幕府と御家人」(『郷土神奈川』第10号、1980年)。鎌倉幕府の創立時期を承久3年まで引き下げた上での考察。小侍所の成立や北条氏による御家人対策を簡潔に述べる。
 若いみなさんも、時に図書館の書庫に籠もって古い学術雑誌を広げてみてください。これからやろうと思っていた研究を既に片付けていた先輩に出会えることがままあります。

 このところ、私の周囲では早稲田大学の話題が豊富です。23日の関東の大学ラグビー対抗戦では慶應に勝利。24日、同志社の受講生のSさんは、2回生は早稲田大学で過ごし、早大生の大学に対する思い入れに感心したとのこと(彼女も私も自分の大学のカレッジソングはちゃんと歌えませんが、早稲田のなら歌えます)。そして、25日にNHKBSで放送された『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』は、あたかも早稲田大学(とくに国文と露文)の宣伝映画のごとき有様でした。
 久しぶりに早稲田に行ってみたくなりました。
 1969年、あの東大入試のなかった年の雪の日に、私も早大文学部を受験したのですが、発表は見に行けませんでした。
 ちなみに、『男はつらいよ』といえば、前作の「寅次郎物語」の終末部で寅さんが商売をやっていたのは、美川先生も参加されたゼミ伊勢旅行で行った二見浦。みんなで記念写真を撮っていた辺りでした。
 ゼミ旅行の行き先は、やたらに寅さんの旅先と重なりますが、とくに意図しているわけではありません(?)。

 ☆ 『平安時代史事典』のCD-ROM版、ようやく購入いたしました。

Re: 書庫に籠もって、遥か昔の都の西北を想う。

No.5221

美川です。

 私も、毎週、BSで『男はつらいよ』を見ています。終了後の山本晋也らによるトークがおもしろいので、見たことのある作品までも、再度見てしまっています。

 『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』ははじめてでした。教室で寅さんが、産業革命について質問するシーン、あれもう笑えませんよね。寅さんみたいに質問してくれればいいですが、私なんて、受講生のどれくらいが、産業革命知っているのか、疑心暗鬼です。私の発する名詞のかなりの部分がわからない、しかし質問する勇気はない、めんどくさい、板書だけしておけ、ということではあるまいか。それで、授業アンケートで、匿名で不満足にマークされたにゃ、もう教員と学生互いの不信感が増すばかりです。

 いまの大学教育なんとかしないといけません。やはり、せめて高校1年程度の基礎知識は身につけて、大学に進む制度にしないと、「高等教育」にはとうていなりません。

 とぶつぶつ愚痴をこぼしていると、拙著が再版となりました。ご協力していただいた方々に感謝いたします。担当の編集者の「ぜったい売れますよ」という言葉にそれこそ疑心暗鬼であった著者ですが、予想外のできごとでした。軽い新書が横行する中で、あれほど重たるい本の健闘は、正直、意外でした。