兵藤裕己著『演じられた近代』の御紹介。

No.3208

 小生が常々、同じ学年で同じ小学校・中学校で過ごしたのだと吹聴しているために、きっと御迷惑をおかけしているに相違ない兵藤裕己先生がタイトルの本を出されました。副題は「<国民>の身体とパフォーマンス」(岩波書店刊、本体3000円)。
 タイトルからすると、NHKブックスで「やまなし文学賞」をおとりになった『<声>の国民国家』が想起されます。内容の紹介は、直弟子の門屋君にお任せするとして、興味深かったのは「あとがき」に書かれた兵藤先生の兄上のこと。私も子どもの頃、まったく気づかずにお見かけしたことがあったのかも知れませんが、前衛演劇の世界に進まれていたとのこと。中沢新一氏の『ぼくの伯父さん』もしかりですが、やはり生まれ育った家族環境というのが、すぐれた研究者を育てる上できわめて大きな要素となるようです。
 そういえば、奇しくも兵藤先生と同じ自治体に居住されるもうお一人の『平家物語』研究の泰斗も御家族の環境が似ておられるようです。ほんとうに不思議です。
 兵藤先生、御著書の御恵送、ありがとうございました。

 ☆ なお、ゼミメンバーの皆さん、MLでお願いした件、よろしくお願い致します。
 ☆☆ 門屋君に続いて、今日で田中さんも院試が終わったのだと思います。お疲れさまでした。

Re: 兵藤裕己著『演じられた近代』の御紹介。

No.3209

 呼ばれてしまいました。(笑)既に入手して読みはじめてはいるのですが、少し時間がかかりそうな予感がすでにしています。さらに、近代に関してはなかなか私の手には負えませんので、内容は岩波書店のHP
http://www.iwanami.co.jp/shinkan/index.html
をごらんいただければと思います。演劇・身体・ナショナリズムなどに興味のある方は読んでみてください。また、以前NHKの「その時歴史が動いた」で貞奴と川上音二郎を扱った回のビデオが手元にありますので興味のある方はお貸ししますので読まれる前に参考程度にごらんになってください

追伸)私も今日院試を受けていましたが、この本が威力を発揮しました。(笑)今日の院試の近代の問題では小宮豊隆が書いた、大正二年十月に再演された自由劇場の「夜の宿」(ゴーリキー作「どん底」のこと)に対する批評(『新小説』に掲載)が出題されました。この公演の役者への完膚なきまでの攻撃と、小山内薫(自由劇場「舞台監督」)への期待が書かれていました。小宮は役者(二世市川左團次の一門)が欧化・近代化していないことを鋭く指摘しておりました。今でこそ歌舞伎役者も様々な領域で活躍していますが、この評ではサンドバック状態です。スカッとしたい時にどうぞ。(笑)アクセル全開の批評で読んでて爽快です。

 兵藤先生の本の後半で触れられている内容できっちりと読めていなかったのが悔やまれるのですが、少しでも予備知識があったのでよかったです。小山内薫に関してはこの本の大部分を割いて論じられています。また、この大正二年の公演に関しては第8章の(注36)で細かく触れられています。

自由劇場に関しては「白樺の小径」というHP
http://www.silverbirch.jp/index.html
の第4回 白樺派の休日〈演劇編〉にも情報があります。

Re: 兵藤裕己著『演じられた近代』の御紹介。

No.3212

>野口先生
 ありがとうございます。これで、先生の「心配の種」から卒業できればいいのですが・・・(^^; しばらく掲示板からも潜伏していましたので、また元気に登場したいと思います。

追記:ちなみに上記の試験、私は資料館で読んだ演劇史の本が役に立ちました。
   本当に何が役に立つかわからないものです。時間がある間に読書をしようと
   決意した瞬間でした。