『愚昧記』の翻刻と注釈の御紹介など。

No.1953

 ここ数日の間に、金井静香先生から「中世末期における近衛家と島津氏の交流-近衛政家・尚通・稙家-」、福島金治先生から「下総東禅寺と鎌倉極楽寺・称名寺」「災害より見た中世鎌倉の町」、高橋昌明先生から「エドワードJ.シュルツ氏の報告によせて」「御白河院と平清盛-王権をめぐる葛藤-」「平重盛の小松殿と小松谷」「キツネ・油揚げ・トンビ」「異界との接点・戻橋」「『愚昧記』安元三年(治承元)春夏記の翻刻と注釈(下)」、鹿児島県歴史資料センター黎明館から『鹿児島県史料・薩摩藩法令史料集一』『同・旧記雑録拾遺伊地知季安著作史料集五』の御高論・史料集などをいただきました。ありがとうございました。追って、お礼状を差し上げたく存じますが、とりあえずお礼かたがた拝受の御報告をさせていただきます。
 ところで、高橋先生からお送りいただいた『愚昧記』安元三年春夏記の翻刻と注釈は、すでに刊行されている治承元年秋冬記、安元三年春夏記に続くものですが、今回はとくに平家軍制に関する記事の多いところで、平家研究に資するところが甚だ大きいと思いますので、とくに御紹介させていただきます。小生のように、翻刻史料にのみ頼りがちな者にとっては、たいへんありがたい次第です。なお、申し遅れましたが、これは神戸大学大学院文化学研究科『文化學年報』第二三号に掲載されています。
 高橋先生はもとより、最近、神戸大学大学院に在籍された、あるいは在籍されている、栗山圭子氏や樋口健太郎氏が平家に関する優れた研究を続々と発表されている背景には、この翻刻と注釈作成への取り組みがあったのだと思います(後輩となった山本君・平田さんも頑張ってください!)。やはり史料をきちんと読み込む勉強をしなければいけませんね。
 当ゼミでは入門編として『吾妻鏡』の講読を行っていますが、夏休みにはまた写真版を使った勉強会を企画したいと思います。昨年は「鏑矢伊勢宮方記」を読みましたから、今年は同じく源義朝関連で「天養記」など如何でしょうか。ゼミメンバーからの御意見を徴したく存じます。
 なお、夏の史料講読会にはゼミメンバー以外からも、とくに中世成立期の東国武士団についてご関心のある方の参加を歓迎したいと思います。詳細は後日掲示します。

 ☆ ついでながら、明日(月)の演習ならびに『吾妻鏡』講読会出席のみなさんへ
 ・本年度の総合教育科目(Ⅰ・Ⅱ講時)演習参加者は実に意欲的で、報告が楽しみなのですが、履修者が多いために、報告の時間が十分にとれず、また2コマ別の演習が連続しているために、質問等に応じることが出来ず残念です。相談などあれば、別の時間においで下さい。また、授業時間の有効利用のため、レジュメの配布など段取りをよろしくお願いいたします。
 ・『吾妻鏡』講読会(12:30~)は共同研究室で行います(Ⅱ講時の演習もここで行っています)。直接ご参集ください。小生はしばし自室で休憩の後、参上します。
 
 >野口君。 南禅寺展は如何でしたか?

報告:南禅寺展

野口 洋平
No.1954

皆さんこんばんわ。先日京都国立博物館特別展南禅寺に行ってきたので簡単に報告させていただきます。この展示は南禅寺を開いた亀山法皇七百年忌を記念に南禅寺の全面協力のもと、国宝、重文を含む名宝の数々を公開しています。
代表的なものをいくつかあげますと、狩野探幽筆「群虎図」円山応挙筆「雪景山水図」などの障壁画。南禅院「亀山法皇坐像」三門「十六羅漢坐像」などの仏像。そして注目したいのは「実ミ卿記」や「亀山殿御逆修願文集」など南禅寺草創や所領関係の文書が多くみられる事です。ほかにも「惟康親王願文」や以心崇伝の「武家諸法度」などもあり、興味のある方は是非足を運んでみて下さい。
南禅寺展では普段公開していないような名宝を間近で見る事ができます。例えば亀山法皇坐像は現存最古の天皇の頂相彫刻ですが、普段は南禅院の本堂奥にお祀りされており一般の人がこのように間近で見れる事はまづありません。他にも今回初公開のものやおそらく最後になるかもしれない品もいくつかでています。どうぞ御見逃し無き様ご注意下さい。
最後になりますが南禅寺展のもうひとつの魅力をお伝えします。それは博物館の拝観券で南禅寺の方丈、三門、南禅院も拝観できるという事です。単純に三つの場所を観ようとすれば共通券でも千円かかります。それを今回は拝観券を見せるだけで無料で拝観する事ができるのです。博物館である程度知識をつけた上で実際お寺を見て廻ればまた違った見方ができると思います(あるいは逆でもいいのですが)
言うまでもない事ですが京都の歴史を考える上で南禅寺は極めて重要な意味をもっています。今回の南禅寺展では禅宗やお寺にあまり関心がないという人でも必ず何かを得る事ができるはずです。またこれを機会に興味がもてるかもしれません。
会期ももうあとわずかになってしまいましたが皆さんどうぞ一度足をお運び下さい。

追伸>南禅院は以前ガイドのバイトをしていたのでもし希望があれば案内しますよ