新たに開催する『吾妻鏡』講読会と貫達人「『吾妻鏡』の曲筆」の紹介

No.18681

  『吾妻鏡』は鎌倉幕府政治史、というより鎌倉時代史を語る上で基本となる史料である。 しかし、これは編纂史料であって、全面的に依拠して論を立てるのは危うい。とくに源氏将軍期の記述など、歴史学の研究者は『平家物語』のような軍記文学と同レベルに対すべきものである。
 逆に、軍記研究者にとって『吾妻鏡』は『平家物語』と同じような研究対象として然るべきなのである。そして、すでにそのような認識を前提にした研究が漸く進められ始めている。
 最近、藪本勝治氏が鎌倉幕府成立史研究を揺るがすような素晴らしい論文を発表されたが、このような日本文学(国文学)研究者の『吾妻鏡』への取り組みに大いに期待するものである。とりあえずは『平家物語』の諸本論のような方法でのアプローチが可能なのではないだろうか。

 うれしいことに、当ゼミの『吾妻鏡』講読会に参加する方たちにも、国文専攻者が増加してきました。しかし、さまざまな大学から参加されていることもあって、日程調整が難しい。そこで、従来の木曜日に加えて、月に一二回のペースで土曜日午後に実施することを検討しています。
 調整は岩田師範代にお任せしていますので、何か御要望があれば岩田君にお伝え下さい。木曜の『吾妻鏡』講読会が主に史学専攻者の問題関心にそった記事を取り上げているのに対して、土曜日の講読会では文学的(説話的)要素の強い記事を中心に読んでいく方針です。

 ついでに『吾妻鏡』に関する、ちょっと面白い論文を御紹介します。私の恩師である貫達人先生の「『吾妻鏡』の曲筆」(『金澤文庫研究』15-7,1969年)です。
 貫先生はかまくら春秋社から『鎌倉叢書』の一冊として『吾妻鏡の世界』という単著を刊行する予定だったのですが、遂に実現されませんでした。ゼミのメンバーのどなたかが、この仕事を継承してくれればありがたいと思っています。

 【追記】☆ 山下克明先生より、先生の御高論「陰陽道の祈り」収録の水口幹記編『古代東アジアの「祈り」』(森話社)を御恵送頂きました。
 山下先生に、あつくお礼を申し上げます。
編集:2014/10/04(Sat) 14:26

木曜日と土曜日の『吾妻鏡』

No.18692

 前回の木曜日の『吾妻鏡』の時間は、予定を変更して『中世の人物』第三巻の書評(というよりも、第三巻を間に挟んだ意見交換会)をさせていただきました。

 野口先生からのご案内にもありますように、今月からは木曜日に加えて土曜日にも『吾妻鏡』を開催することにしました。曜日の垣根はありませんので、ご都合の合う方はどうぞどちらもお気軽にご参加ください。

◆木曜日のご案内◆
 次回の木曜日の『吾妻鏡』はまた頼家・実朝期の振り返り(承元三年などの記事)に戻ります。10月は9日・16日・23日・30日に開催予定です。

 日時:2014年10月9日(木)15:00~(予定)…14:00すぎからぼちぼち集まっております。

 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:『吾妻鏡』頼家・実朝期の振り返り(承元三年などの記事)

 ※『吾妻鏡』のほうももう少し“実朝将軍期初期の振り返り”を続けていきますが、それが終わった後の範囲は以下の通りです。
  “振り返り”にもようやく終わりが見えてきましたよ。

     承元四年(1210)正月一日、二月五日・十日・二十一日、三月十四日・二十二日、四月九日・十九日、五月六日・十一日・十四日・二十一日・二十五日、六月三日・十二日・十三日・二十日、七月八日・二十日、八月九日・十二日・十六日、九月十一日・十四日・三十日、十月十二日・十三日・十五日、十一月二十二日・二十三日・二十四日、十二月五日・二十一日の各条
     承元五年(建暦元年、1211)正月十日、閏正月九日、二月二十二日、三月十九日、四月二日・十三日・二十九日、五月四日・十日・十九日、六月七日・二十一日・二十六日、七月四日・十一日、九月十二日・十五日・二十二日、十月十三日・十九日・二十日・二十二日、十一月二日・三日・四日・二十日、十二月一日・十日・十七日・二十日・二十七日の各条

◆土曜日のご案内◆
 今月から新たに土曜日にも『吾妻鏡』を開催することにしました。こちらはだいたい月に一回か二回程度で開催する予定です(開催日は参加者で随時ご相談しようと思います)。初回は10月25日(土)です。

 日時:2014年10月25日(土) ※時間は調整中です
 場所:京都女子大学L校舎 3階 共同研究室
 範囲:『吾妻鏡』の記事からこれはと思うものを適宜読んでいきたいと思います

 『吾妻鏡』講読会は、木曜日も土曜日も基礎的な史料読解のニーズにも対応しております。
 天高く馬肥ゆる季節に何か新しいことをはじめてみようという方は、まずは見学からでも、どうぞお気軽にご参加ください。京都女子大の方限定ではありませんよ。