『ヒストリア』第189号。
No.1712
石浜さん。遅くまでお仕事ごくろうさまです。編集者というのは大変ですね。
『剣客商売』と『八丁堀の七人』は小生も楽しみにしていました。安心してみていられる時代劇でしたね。
刀のことは近藤先生にうかがうのが一番ですが、戦国時代の合戦などでは砥石を携行していたという話をきいたことがあります。よくよく考えると、命中しなかった矢を拾い集めることもしなければならなかったてしょうし、分からないことだらけですね。いずれにしても、お引っ越しをすまされた近藤先生の御登場を待つことにしたいと思います。
ところで先日、近藤先生からも書架についてご教示をいただいたのですが、専門家に現状をみてもらうのが一番だと思い、箕浦尚美先生に御紹介いただいた建築士の方に本日拙宅を御覧いただくことになりました。末松さんからも「支持」の書き込みを頂きましたので、また事後報告させていただきます。
それから、昨日届いた『ヒストリア』189には、興味深い論文が満載ですので、御紹介いたします。これだけ集まるのも珍しいことです。
まず、山本君・平田さんの先輩である樋口健太郎氏の「平安末期における摂関家の「家」と平氏」。最近活況の平家研究に摂関家との関係で新しい切り込みがなされたと思います。摂関家に関連しては、今度の平家物語研究会で高松百香氏の御報告があるようで楽しみにしています。
それから、須田牧子氏「中世後期における赤間関の機能と大内氏」。昨年末に山口・長府・下関・門司を見学してきたばかりですから、興味津々の内容でした。先般の壇ノ浦ツアーに御参加の方にも一読をお薦めします。防府出身で山口市の高校に通った山内さんや中世の対外関係を勉強しようとしている山岡さんも是非に。山内さん・山岡さんには「室町期における大内氏の対朝鮮関係の先祖観の形成」(『歴史学研究』761)という須田氏の別の論文も紹介しておきます。これも、とてもすぐれた内容です
そして、一番小生の研究テーマに関係するのが、白井克浩氏の「承久の乱再考」。これまで深く追究されていなかった院方の軍事動員の構想について、実に切れ味の良い検討がなされています。小生は数年前に某大手出版社から『承久の乱』執筆を依頼されており(例によってなかなか書かないので、もう企画からはずされているかもしれませんが?)、東国御家人、とくに三浦義村の視点からこの乱について述べてみたいと考えていたのですが、やる気が起きてきました。長村君・山本君、それに国文専攻の田中さん・門屋君にも加わっていただいて、ゼミで承久の乱の研究プロジェクトを立ち上げませんか?ちなみに、小生は秋までに慈光寺本『承久記』の史料性に関する論文をまとめる段取りです。
なお、今年の6月27日に開かれる大阪歴史学会の大会では、中世の部会報告に栗山圭子氏「中世王家の成立と院政」があるそうです。研究所公開講座の翌日ですが、拝聴に行きたいものです。
・・・というわけで、『ヒストリア』御覧おき下さい。
末筆ながら、田中さんが京都市の歴史資料館でお仕事をされることになったことを御報告いたします。もちろん門屋君同様に、「捲土重来」を期してのことですが。京都市史編纂事業の推進にとっては大変な朗報だと思います。ちゃんと、落ち着くべき人は、しかるべきところに落ち着くものです。
刀剣のメンテナンス
No.1714
呼ばれて名乗るも烏滸がましいが・・・、振られたので書き込みます。
戦場での刀剣のメンテナンスの問題は難しい問題ですね。折れてしまえば仕方ないでしょうが、血液・汗・雨などによる錆、刃こぼれ、曲がりなど、修復可能なトラブルは、戦場ではどうやって修復してたのでしょうか。
刀剣を水に浸けると使い物にならないというのは袈裟ですね。すぐに錆びるということです。ただ、水に浸けて水分を拭わずにそのまま放置しても、錆朽ちるわけではありませんし、すぐに水分を拭えば、仮に錆びても軽度ですみます。そもそも、程度にもよりますが、錆や刃こぼれは実用的にはそれほど問題にならなかったと思います。甲冑武者同士の戦闘では、切れ味の鋭さよりも、打撃の方が重要であったと私は考えます。
また、錆びれば研げば良いのです。その点で、野口先生の書き込みにもあるように、戦場には砥石を携帯したようです。それは、すでに軍防令にみえる兵士が自備すべき物品の中にもみえますし、遡れば、鉄製の武具が北部九州地方に普及する前一世紀後半からみられることのようです。鉄を始めとする金属製の武具のメンテナンスには砥石は必携のようです。
現在の研ぎは、鑑賞のための美術研ぎ(化粧研ぎ)ですから、専門の研ぎ師が必要ですが、錆び落としだけに限らない、実用のための研ぎ(鏃の研ぎも含む)は、むろん身分にもよるでしょうが、戦闘参加者自身が行ったようです。なお、古代の武具と砥石の関係については、上田正昭先生の「古代日本の武器」(大林太良編『戦』社会思想社 1984年)という論文があります。また、刀工(鍛冶)集団が戦場に伴われることもあります。
曲がりについては、軍記物語に「押し直し、押し直し」という太刀による戦闘での慣用句のようにでてきますが、これも特に古い刀剣ではあながち文飾ではありません。古い刀剣はそれだけ鉄が柔らかく折れないということです。
なお、折れた刀身も、鋒からある程度の程度の長さが残っていれば、磨上の応用として、折れた部分を茎に仕立てて短刀などとして再利用することも可能です。
いずれにしろ、実用時代の刀剣の扱いと、現在の美術刀剣としての扱いには、色々な面で相違があったと考えます。
追伸
No.1715
野口先生、私も箕浦さんからメールをいただきました。先生のご紹介があったようですね。ありがとうございます。ただし、新居は新築ではありません。
刀・書架、そして入学式。
No.1716
近藤先生。勝手な呼び出しにお応え下さり、ありがとうございました。「軍防令」に兵士の砥石携行が記されているとは、また上田正昭先生が武器に関する論文をお書きであったとは、ともに存じませんでした。石浜さんの振り出された課題のおかげで大いに勉強をさせていただきました。ロジスティックという言葉の意味もしっかり把握できましたし。
書架の件は、本日、箕浦先生ご推薦のキノシタ建築研究所代表の一級建築士・木下洋氏が拙宅にお出で下さり、書斎の書架の形態ならびに配置について検討していただき、開発された書架そのものも気に入りましたので、ちょっと奮発して大改造に踏み切ることに致しました。GWには新しい書架が設置され、書斎の模様替えを済ませる予定です。箕浦先生からメールをいただいてから、話はトントン拍子に進みました。あつく御礼申しあげます。
ところで、昨日は神戸大学、本日は京都大学の入学式がありました。山本君、平田さん、長村君。もう正式にそれぞれの院生ですが、気分は如何ですか?「初心忘るべからず!」で、おおいに才能を開花させてください。
Re: 濡れた刀と時代劇とロジスティック
長村祥知
No.1720
石浜さん・近藤先生こんばんは
とても勉強になりました。ありがとうございます。
野口先生
夕食御馳走様でした。酒無しとは言え、野口パパ主催の「男子コンパ」(?)もなかなか素敵な企画でしたよ。
入学式の後は、昨日・今日と時間割を考えたり他研究科の時間割を確認したりと、新入生気分を楽しんでます。
承久の乱は卒論で言及した事もあり、思想史上極めて大きな意義を有すると考えるので、研究プロジェクトには大変興味深いものがあります。ただ、現時点では先の予定が全く分からないので、お返事はもう少し後にさせてください。
新設書架拝見!
No.1723
野口先生、近藤先生、いろいろとご教授いただき、ありがとうございます。
近藤先生、メール差し上げた件、今、ご著書の該当部分を拝読しておりますので、また、後ほどご連絡差し上げます。今しばらくお待ちいただければと存じます。
野口先生、『紫苑』やフォトアルバムなどお送りいただき、誠にありがとうございます。お礼が遅くなり、申し訳ございません。しかし、こんなものまで造れるとは、野口ゼミは人材が揃っていますね。うらやましい限りです。で、恥ずかしながら、例の私の写っている写真がジャケットに使われておりますが、これを見て家内が、京女で何しているのかと疑いの眼で見られてしまいました。
また、書架を新設されるとのこと、是非拝見させていただければと存じます。