財前助教授の実弾

No.1679

4月1日ねたになんのレスもつかなかったので、
少々落胆ぎみです。

そこで、身近に経験した、「物語」の虚構と真実について。

話題のドラマをほとんど見られなかったので、
仕事の合間に原作を読んでいます。
例の「白い巨塔」の山崎豊子の原作です。
まだ、1冊目なのですが、個人的にえっ、と思うシーンが。

財前助教授が、なにわ大学の医学部長鵜飼にはじめて、
ある洋画を賄賂(実弾)として贈る部分があります。
その洋画家は「染井青児」となっています。
日本の洋画家で、「青児」という名前のもちぬしは、
私の祖父と、東郷青児と2人しか知りません。
一般によく知られているのは、後者なので、そうだろう、
と思って読んでいくと、
その絵は「パリのノートルダム寺院を描いたもので、やや抽象化され、褐色の絵具を厚く塗り重ねた絵であった」と書かれています。祖父の絵の特徴そのままなので(ちなみに東郷青児の絵の特徴はまったく違います)、まちがいなく、これは祖父の絵をモデルにしているのです。

いやー、これは知らなかった。

ちなみに「心斎橋画廊」での「滞欧作品展」で、
財前が購入したことになっています。
祖父の年譜をひもとくと、原作が書かれたはずの
昭和30年代、祖父の展覧会が、さかんに、
大阪の梅田画廊とか、阪神百貨店とかで、
開かれていますが、「滞欧」と名を冠した展覧会は、
昭和8年の大阪阪急百貨店での「滞欧洋画展」に遡ります。

作家がどういうものを作品のモチーフとして使うのか。
あまりに身近な例なので、いろいろと考えてしまいました。
財前がいくらで買ったかも書いてあるし。
当時の貨幣価値もわかるし。

実際に、鵜飼のモデルとされるO大学医学部長に、
祖父の絵が渡っているとは考えがたいですが、
当時の、医学部内での教授昇進の際の、
賄賂の相場などは、かなり正確なのかもしれません。

もしかしたら、この原作を当時読んだ医学部の助教授が、
こうしないとだめかと思って、
実際に、祖父の絵を医学部長におくっていたりして。

うーん。

やはり、この話がおもしろいのは、私だけかな。

えいぷりるふーる

長村祥知
No.1682

美川先生

半信半疑だったのですが、下の「4月1日ねた」は
所謂「四月馬鹿」というやつなんでしょうか??

白い巨塔ねたでなくてすいません・・・

Re: えいぷりるふーる

No.1684

長村君 こんばんは。
もちろんですとも。

続えいぷりるふーる

長村祥知
No.1691

美川先生

「4月1日」の書き込みという意味には気づかず、単純にお話を読んで、まさか?と思いました。
しかし、日本のあちこちが市町村合併のせいで妙ちきりんな名称になってしまったり、東京のほうでは学問の府たるべき場が変なことになっていたりするので、そんな話があってもおかしくないなぁなどとも思っていたのです・・・

「半信半疑」ってこんな感じなんですね

Re: えいぷりるふーる

美川圭
No.1693

長村君、まじめに勉強しているだけでは、
研究者はつとまらないよ。
史料にだまされちゃうから。

えらそうに、小言です。

Re: 財前助教授の実弾

長村祥知
No.1700

美川先生

同列に論ぜられるものでは無い事を承知で申しますと、私の美川先生に対する尊敬・信用と史料に対する猜疑心とは大きく隔たっていますが、私の性格をよく見抜いてくださっているお小言、ありがたく承っておきます。